#01メーカーにこそ知ってほしいインストアマーチャンダイジングの話
みなさんこんにちは!
パルディア情報局です!
セールスプロモーションに関連する情報をみなさんにお届けする株式会社パルディア公式noteですが、初回は「インストアマーチャンダイジング(In-Store Merchandising / ISM)」について解説しようと思います。
ISMという言葉自体が小売業や流通業に携わる人々以外にとって馴染みの薄い言葉かもしれませんが、実はISMという概念は小売業や流通業のみならずメーカーにとっても重要な役割を持つ概念です。
理解が難しい用語のひとつだとは思いますが、この機会に是非ISMとは何かをしっかりと把握しておきましょう!
マーチャンダイジングとインストアマーチャンダイジング
ISMを理解するためにはISMを含むより大きな概念である「マーチャンダイジング(Merchandising / MD)」を理解することが必要です。ISMの本格的な解説をする前に、まずはMDとは何なのかをさらっと説明させてください!
MDという言葉は明確な定義が存在せず抽象的で捉えづらい言葉ですが、日本では「商品化計画」や「商品政策」と訳されることが多い言葉です。とはいえあまり難しく考えず、小売(店舗)の視点から設計する"売れる仕組みづくり"と認識しておけばいいでしょう。またMDでは売れる仕組みづくりを実現するために必要な「5つの適正」を下記のとおり定義しています。
適正な商品:消費者や市場のニーズを満たす品揃え
適正な時期:季節やイベントを考慮した商品の仕入れや販売
適正な場所:消費者視点での売り場づくり
適正な数量:品切れや過剰在庫が発生しない商品管理
適正な価格:消費者のニーズにマッチした価格の設定
マーケティングに携わる方の中にはピンときた方もいるかもしれませんが、4P戦略を小売業界・流通業界向けに特化させた概念がMDだと理解してもいいでしょう。
さて、MDの概要を捉えた上で今回のメインテーマであるISMに話を戻します。
ISMとは売れる仕組みをつくる活動であるMDを店舗内で実現するための手段です。またISMは次の2つの要素から構成されています。
インストアプロモーション:店頭で行う販売促進活動
スペースマネジメント:店頭のスペース単位の売上を最大化する活動
さらにインストアプロモーションは「価格主導型」と「非価格主導型」に分類することができ、スペースマネジメントは「スペースアロケーション」と「プラノグラム」に分類することができます。
価格主導型のインストアプロモーション:価格操作によるプロモーション
非価格主導型のインストアプロモーション:価格操作によらないプロモーション
スペースアロケーション:店内レイアウトや来店者動線の最適化
プラノグラム:棚割りの最適化
つまりISMとは、上記4種類の活動を通して店頭を起点とした"売れる仕組みづくり"を構築する活動と言うことができるでしょう。
インストアマーチャンダイジングが重要視される背景
ISMが生まれた背景のひとつに消費者の店頭における購買行動のある特徴を挙げることができます。それは消費者の店頭における購買行動のほとんどが"非計画購買"であるという特徴です。消費者の店頭における購買行動を
その商品の購入を予定していたかどうか?
その商品を実際に購入したかどうか?
の2軸で分類した際、
計画購買:事前に購買の計画あり×実際に購入した
購買中止:事前に購買の計画あり×購入に至らなかった
非計画購買:事前に購買の計画なし×実際に購入した
非購買:事前に購買の計画なし×購入に至らなかった
という4種類に分類することができるんですが、計画購買と比べて非計画購買の割合が圧倒的に多いことが各種調査によりすでに証明されています。つまり消費者の大半は来店してから購買する商品を決めているということです。ここから"店頭"を起点としたISMの概念が誕生し、成長していきました。
ではISMの"店頭を起点とした売れる仕組みづくり"の構成要素についてさらに細かく見ていきましょう。店頭を起点とした売れる仕組みづくりの構成要素、つまり小売店全体の売上の構成要素は、
売上=来店客数×客単価
という等式で表すことができます。これは売上高を上げるには「来店する消費者の数を増やす」か「消費者1人当たりの買上金額を増やす」必要があることを表しています。ここで前者の来店する消費者の数を増やす施策は店舗外の販売力(≒広告力)により左右されるものでありISMの担当領域ではありません。よってISMでは客単価の向上がその主たる目的となるのです。
また、客単価に関してさらにその構成要素を因数分解していくと、
客単価=導線長×立寄率×視認率×買上率×買上個数×商品単価
※客単価=動線の長さ×立寄率×視認率×買上率×買上個数×商品単価
※動線長:消費者が店舗内を歩く距離
※立寄率:各種の売場に立ち寄る割合
※視認率:商品を発見し認識する割合
※買上率:商品を実際に購入する割合
※買上個数:実際に購入した商品数
※商品単価:1商品当たりの商品価格
となります。ISMとは客単価を向上させるために上記それぞれの要素を最適化する行いと言うこともできるでしょう。
インストアプロモーションの具体例
さて、ここからは紹介したISMの4手法の中の価格主導型インストアプロモーションと非価格主導型インストアプロモーションについて解説します。実はこれら2種類のプロモーションは実務において同時に実施される場合がほとんどなんですが、その手法の本質は大きく異なります。
消費者が商品に対して感じる"価値"と消費者が商品を購入することで得られる"効用"、また消費者が商品を得る為に支払う"価格"を等式で表すと、
価値=効用÷価格
となります。ここで価格主導型のインストアプロモーションは"価格"を抑制することで"価値"を上げる手法であり、非価格主導型のインストアプロモーションは"効用"を促進することで"価値"を上げる手法と言うことができます。価格主導型も非価格主導型も消費者が感じる"価値"を向上させる手段ではありますが、そのためのアプローチ方法は真逆と言ってもいいでしょう。
さて、ここまで説明した上で価格主導型と非価格主導型のインストアプロモーションの具体的な手法を見ていきましょう!
・価格主導型のインストアプロモーション
店舗内で消費者に対して行うプロモーションの内、価格を操作することにより商品をプロモーションする手法です。一時的な売上増加効果を短期間で得られる一方、内的参照価格の低下など長期的なデメリットも内包します。
【値引&特売(Hi-Lo戦略 / EDLP戦略 / ロスリーダー戦略)】
期間内において定番価格から価格を下げることで消費者に割安感を与える手法をHi-Lo(High-Low Price)戦略と言い、小売業が抜本的な経営改革を行い徹底した低価格を維持する手法をEDLP(Every Day Low Price)戦略と言います。また、収益を度外視した低価格商品をフックに来店を促進しその他商品の購買を誘発する手法がロスリーダー戦略です。
【バンドル販売】
商品をまとめて購入した場合に通常より売価を引き下げて販売する手法がバンドル販売です。複数購入を促すことができる一方で単純なバンドル販売は需要の先食いを引き起こす要因となります。
【増量パック】
売価をそのままに用量を増やし販売する手法が増量パックです。容量1単位当たりの単価を下げる手法であるため価格主導型に分類されます。基本的にメーカー主導で行う施策です。
・非価格主導型のインストアプロモーション
店舗内で消費者に対して行うプロモーションの内、商品の効用を高めることに重点を置いたプロモーション手法です。価格を操作しないため成功すれば利益率が高くなる点やブランドイメージ向上も狙える点が大きなメリットです。
【特別陳列】
対象商品を定番棚以外に陳列することで購買を促進する手法が特別陳列です。エンド陳列やアイランド陳列など複数の種類があります。実施の際は演出の要素が重要となり、テーマやコンセプトの設定、POPなどの販促ツールの活用が施策の成否を左右します。
【プレゼントキャンペーン】
応募者に対して抽選の上で景品を提供する手法がプレゼントキャンペーンです。景品の魅力度によっては大きな購買促進効果を期待できます。店頭で実施されるプレゼントキャンペーンは対象商品の購入をキャンペーンへの参加条件にしたクローズドキャンペーンが一般的です。
【デモンストレーション販売】
店頭において実際に商品を使って見せることで商品の魅力を実体験してもらう手法がデモンストレーション販売です。その魅力がパッケージ越しでは伝えにくい商品の機能・性能・使い心地などを消費者に対して直接訴えかけることができます。
以上が価格主導型と非価格主導型のインストアプロモーションの具体例です。もちろんその他にも様々な手法が存在しますが、本日のメインテーマはISMなので割愛させていただきます。※いずれインストアプロモーションを題材にした記事もアップしますのでご興味ある方はもうしばらくお待ちください…!
スペースアロケーションとプラノグラムの具体例
次にISMの残り2つの手法であるスペースアロケーションとプラノグラムについて解説していきます。
インストアプロモーションが特定商品の売上を向上させるために効用と価格の両軸からアプローチする手法でしたが、スペースアロケーションとプラノグラムは商品単体ではなくスペース単位の売上を最大化する手法と言うことができます。この際に店舗全体のフロアレイアウトをどう構成するか?という視点がスペースアロケーションであり、ゴンドラシェルフ内の棚割りをどう構成するか?という視点をプラノグラムと言います。
早速詳細を確認していきましょう!
・スペースアロケーション
前述した通りスペースアロケーションとは店舗全体のフロアレイアウトの設計であり、言い換えれば店舗で取り扱う各種商品の陳列場所を決める作業と言うこともできます。スペースアロケーションを行う際には消費者の動線長や立寄率を意識することがポイントです。これはISMの最終目標である客単価の向上に影響する要素のひとつが導線長および立寄率であり、これらはスペースアロケーションを通しての改善が見込める指標だからです。
【導線長を意識したスペースアロケーション】
導線長の大きさは消費者の店舗内における情報接触の量に比例します。そのため消費者が店内をなるたけ回遊したくなる売場レイアウトが重要です。例えば売れ筋商品を店舗の奥に陳列することで消費者を店奥に誘導したり、エンドを陳列を活用し消費者をサブ通路に誘導するなどの対策が有効です。
【立寄率を意識したスペースアロケーション】
消費者にできるだけたくさんの売場と接触してもらう(≒立寄率を向上させる)こともスペースアロケーションの重要な要素です。計画購買品に関してはいかにして商品の発見を容易にするか、非計画購買品に関してはいかに売場に立ち止まってもらうかを意識してフロアレイアウトを設計します。
・プラノグラム
プラノグラムは"Plan on Diagram"の略称で最適な棚割り計画を指します。具体的には商品の陳列位置やフェイス数を決定する作業です。スペースアロケーションでは消費者の動線長や立寄率を意識することがポイントと言いましたが、プラノグラムを行う際には消費者の視認率や買上率を意識することがポイントになります。
【商品の陳列位置の決定】
商品の陳列位置を決定する際には消費者が見やすく手に取りやすい陳列を意識することが重要です。有効陳列範囲(一般的には60cm~210cm程度)内への商品配置は大前提とし、ゴールデンゾーン(一般的には80cm~140cm程度)に売れ筋商品を配置するなどの工夫が必要です。しかし、例えばある商品のメインターゲットが子どもの場合を想定すると、一般的なゴールデンゾーンより低い位置に商品を陳列した方が視認率や買上率が高まる可能性があります。このように商品のターゲット層も意識しながら陳列位置を決定していくことが必要です。また商品の陳列方向にも注意を払う必要があります。消費者が買い物をする際、まずは横方向に売場を歩き、欲しいカテゴリーの商品があると立ち止まってカテゴリー内の商品群を比較します。つまり同カテゴリーの商品群は基本的にバーチカル(縦割り)に陳列し、商品群同士の関連性を考慮しつつも別カテゴリーの商品群はホリゾンタル(横割り)に陳列していくことが基本になります。
【商品のフェイス数の決定】
フェイスというのは商品の顔という意味です。基本的にフェイス数が多いほど消費者の目に触れる機会が増えるため売上が向上していきます。フェイス数を決定する際には実際の売上実績に基づいて決定していくことが重要ですが、同じ商品でも時期により売れ行きが変わることも多く、常に仮説検証を繰り返しながらフェイス数の見直しを行うことが大切になります。
以上がスペースアロケーションとプラノグラの概要になります。どちらも突き詰めていくとかなり奥が深いテーマですが、本日はISM全体の話となりますのでここまでにしておきます。 ※こちらに関してもより深い部分まで解説した記事を追ってアップしようと思うのでご興味ある方はもうしばらくお待ちください…!
まとめ
以上、セールスプロモーションに関連する情報をみなさんにお届けする株式会社パルディア公式note、初回「インストアマーチャンダイジング(In-Store Merchandising / ISM)」についての解説でした!
今後もみなさんのお役に立てる有意義な情報をご提供できたらと思いますので、引き続きよろしくお願いします!!
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