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16作品目 単独ライブ「30000」(ダウ90000)


どうも。自家焙煎珈琲パイデイアです。
あ、そうだ。前回から「淹れながら思い出したエンタメ」というタイトルを付けたんでした。
16作品目になる今回の書き留めは本多劇場で開催されたダウ90000の単独ライブ「30000」です。

昨年末、スズナリで行われた前回の単独ライブ「20000」についてはこちらに書き留めてあります。よろしければ、お読みください。

ここ4、5年ダウ90000、それを率いる蓮見翔さんを追いかけて、見ていますが、ずっと思うことは、毎回ちゃんと前作を更新してくる、ということです。これはどの公演も必ず、前回公演の満足度をしっかり超えてきます。
もちろん、今回の単独もしっかり前回の満足度を超えてきています。

私が考える蓮見さんの面白さというと(もっとも、ここで私が挙げなくても多くの『プロ』の方が方々で仰っていることでもありますが)、「状況設定の説得力」「固有名詞の巧みさ」「生活の中で見つけた毒を爽やかにまぶすクセ」などがあると思っています。

終演後に公開されたコントタイトル

今回の単独ライブでいうと、「ランチ後」はランチピークを終えたアイドルタイム中の定食屋とコミュニティFMの二つをうまく重ね合わせた状況設定はかなり秀逸でした。
蓮見さんが毎週やっているラジオとはテイストの違うトークが絶妙で、今まで書いてきた会話とも一味違い、こんなんも書けるんかよ、とため息すら出てきます。
そんな中にも「ド根性大根」を食べてしまう親戚、みたいなちょっと懐かしい「世間お騒がせニュース」が散らされていて、名古屋市長が金メダルを噛んだニュースやグルーポンの「スカスおせち事件」が大好物な蓮見さんらしかったです。

このコントで特筆することはやっぱり忽那さんのキャラクターだと思います。
ちょうど良い緊張感の緩み方、間違いを指摘された時の、ちょっと考えたから発する「あっそっか」など、もうこの人でしか纏えない空気がお店中に広がっているのが客席から分かります。そういう空気を醸し出すからこそ、あのテイストのトークも耳心地いいコントになるのだと思います。

相変わらずの固有名詞の巧みさは各コントで散見されます。一定の同世代に激しい共感を呼んで笑いにするような使い方から、ある時からそのワードに共感しない世代にも刺さるような使い方にブラッシュアップされました。
例えば、今回で言うと、先に書き留めた「ランチ後」に出てくるワード、映画「ミュウツーの逆襲」はそれを知らないと笑えないわけではありません。例え、それを知らなくても、その後の「反抗期の息子に『ミュウツーかよ』」とツッコむ、という状況だけでも可笑しさがあります。

ラジオでご本人は「毒を減らした」と言う趣旨の話をされていましたが、やっぱり各所に毒が爽やかにまぶされていました。
結婚式でよくもらう引き出物のカタログやYouTubeの黎明期に投稿を始めた人なんかに結構、毒ずいていました。

特に性格が悪かったのが、「磯丸水産」です。
ラジオにゲスト出演した麻布競馬場さんの「令和元年の人生ゲーム」に感化されたと思われる「広告代理店」業界に対する毒の砲火はかなりの勢いでした。
蓮見さんの毒は、何がタチが悪いかって、ちゃんと的を射ているところです。
毒というのは、詰まるところ、世間とは違う視点で見ているところから発生するわけです。この「世間から違う」というのは「主観的にものを見る」ということと紙一重です。なんなら、同意語だと言えます。
しかし、単なる「主観的である」ということからだけでは毒は生まれません。それはただの個人の感想です。フランスから論破されるやつです。
あくまで、世間から違う視点で物事を再認識した際に、世間からも共感がある、ということが毒と個人の感想との大きな違いになります。
このコントでも「どうして、当たり前のことを、さも自分が見つけたかのように言うのか」と毒づいたセリフがありますが、これも言われればそうだ、と言う共感があるからこそ笑いになる毒だと思うのです。。
その点、蓮見さんはちゃんと的を射ているので、世間から共感を得られる「毒」を吐くのです。本当に毒づくのが上手い人です。

個人的には「リベンジ」が一番好きでした。
演劇公演「一応捨てるけどとっておく」でも繰り広げられた吉原さんvs道上さんを中心にしたコントです。
この2人の白熱ももちろん醍醐味なのですが、それ以上にこの2人のやり取りに挟まれて、火消しに回る蓮見さんと上原君と中島さんの立ち回りがすごい良かったです。
こういう時、3人の中だけに流れる特有の空気感、ハラハラしてるんだけど、ちょっと楽しんでる空気まで伝わってきます。

このコントは吉原さんが飯原君と結婚していた、という展開から2人のパワーバランスが入れ替わって、さらに面白さに拍車が掛かります。
2人がヒートアップすればするほど、形勢逆転した吉原さんの隠し球が炸裂するほど、それをビビっているようで楽しんでもいる、そんな3人が隙を観て仲裁に入ろうとする間合いがこのコントを違う角度からも可笑しくします。 
この角度が、こんなにも自然に組み込まれている辺り、やっぱり蓮見翔という人間は書く度に前回を越えて来る人だな、と感じます。

最後のコント「メタの夜」は意外でした。
蓮見さんはこういうコントだけはやらないと思っていたからです。
ずっと追いかけているファンとしてはかなり面白かったのですが、あんまり触れないようにします。

最後に、これは本当に邪推で、しょうもないことですが、前回も「繋げる」でお馴染みだった幕間Vの2人ですが、上原君が急に現れた時、誰だっけみたいな、上原君を覚えていない反応をしていました。その前の配信を買っていた映像で、上原君を選ぶことが出来ていなかったので、きっとこの2人が買っていたんだろうな、と「繋げない」というVTRは繋げるんだ、と勝手な邪推しました。

28日まで配信があります。これは本当に面白いです。

<information>
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