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第13回 2024年1月クールのドラマ#2

どうも自家焙煎珈琲パイデイアです。
前回(これがちょっと前になってしまうのですが)どうにも書ききらなかった今クールのドラマの続きです。

日テレですね。
「となりのナースエイド」が面白いです。脚本は「3人目のバナナマン」と称される作家のオークラさんです。
バナナマン、東京03と東京のコント師たちのブレーントして、テレビではもちろん、単独ライブ、近年では東京03の武道館でのライブ「FROLIC A HOLIC」まで、オークラさんがいなかったら、見られなかったであろうエンタメは数が知れません。
2021年、TBSドラマ「ドラゴン桜2」などからテレビドラマの脚本にも参加するようになりました。

原作があるので、プロットそのものはオリジナルではありませんが、要所要所の笑いがオークラさんらしいというか、バナナマンや東京03を彷彿とさせます。
主演の川栄さん演じる桜庭澪の同僚役で周りを固める役者さんは、水野美紀さん、矢本悠馬さん、そしてピン芸人の住吉さんと、コメディの手練達が集結しています。
特に水野美紀さんのコメディエンヌぶりはバカリズムさん脚本の「黒い十人の女」で浴びるように楽しめます。一生懸命が空回りする役をやらせたら、もう天下一品です。
そんな水野美紀さん演じる晴美に、ワンテンポ置いて引いたツッコミをするのが住吉さん演じる夏芽なんですが、このツッコミのテンポ感や温度感、引いた感じなんかは東京03の飯塚さんが角田さんにツッコむ様そのものです。
熱量でなく、技巧的なツッコミはプロダクション人力舎に伝わっているんでしょうか。

そのほか、古田新太さん、小手伸也さんなどコメディシーンの安定感たるや。意外だったのが、クセの強いキャラを演じる瀧本美織さんも周りに引けを劣らないコメディエンヌぶりを発揮していて、コメディのイメージのなかった女優さんなだけに良かったです。

さて、お次はNHKです。
書き留めておきたいのは「正直不動産2」と「お別れホスピタル」です。

まず、シーズン1か言えるのは、キャラクターの濃さとストーリーと専門的な知識が必要な難しさがバランスがすごくいい、ということです。
山下智久さん演じる嘘をつこうとすると風に煽られて本当のことを言ってしまう不動産営業マンの永瀬、福原遥さん演じるカスタマーファーストを掲げる昭和味感じる月下、板垣端生さんが演じるZ世代の権化、十影の3人を中心に、ライバル役のディーンフジオカさん演じる神木まで、なんせ各キャラクターが濃い。

しかし、キャラの濃さだけでドラマを進めず、不動産営業という、一番生活に密接しているテクノクラート化した業界を舞台に、様々な人の生活が垣間見れるドラマ性が伴っているバランスの良さ。
そして、問題の解決を専門的な知識に頼らず、登場人物の人間性が物語を進めていて、ここにもドラマ性が垣間見れます。

ここまで書いて「ドラマ性」ってなんだろう、なんてことを思い始めました。
ストーリーやプロット、物語とは違うものだと思います。
なんというか、物語が進む「説得力」的なものでしょうか。

登場人物Aが困難に直面しています。その困難を解決できるのはCしかいません。
こんな時にAが直接的にCに働きかけて、困難が解決すると、ストーリーとして安直になってしまいます。そこで、新たにBと人物を登場させ、AはBに働きかけて、Cに困難の解決を促します。
この時に、AがどうやってBに働きかけるか、という説得力にドラマ性の有無があるのだと思います。

確かにその状況ならAはBに頼るよな、そうだよな、と視聴者に思わせるかどうか、その説得力ではないでしょうか。
リアリティとも言い換えられるかもしれませんが、リアリティというと、どこか、社会的だったり、物理的な事実との比較のことをいうような気がします。
感情的リアリティのことをドラマ性と言っているのかもしれません。

閑話休題。

もう一つ、NHKからは「お別れホスピタル」です。
これはもう「岸井ゆきの協奏曲」と言った感じでしょうか。
ただ協奏曲というのはソリストだけが素晴らしいのでは、作品として完成しません。周りのオーケストラも重要です。
その点、やっぱりこちらも素晴らしいオーケストラです。
患者役には古田新太さん(今クール3作目だよ)、木野花さん、きたろうさん、など、これはもうベルリンフィルの主席奏者の集まりです。
同僚役には松山ケンイチさん、内田慈さんと患者役がベルリンフィルなら、同僚役はウィーンフィル。

そんなスペシャルオーケストラを率いるソリスト、岸井ゆきのさん。
自然体な演技で、今見ているのがドラマであることを忘れてしまうほどの没入感です。

誰にも当たり前に訪れる死を、私たちは目の前に現れるまであたかもそんなものが無いかのように生活しているのかもしれません。
し岸井さん演じる辺見は緩和ケア病棟に勤め、毎日その死と対峙することを仕事にしています。
もしかしたら、彼女が対峙しているは「死」そのものではなくて、今まで自分には無関係だと思っていた「死を突きつけられた人」との対峙なのかもしれません。

ずっと「死ぬもんか」と強気で生きている人間が「死にたくない」と漏らす本音。
これにどう答えたらいいのか。
寝たきりの娘が「目を冷ましますよね」と聞く母親。
これにどう答えたらいいのか。

そんな煩悶とする辺見を岸井さんが素晴らしく演じきっていました。

最後にテレ東。「ブラックガールズトーク」です。
私、結構、テレ東の深夜枠のドラマが好きなんです。まだ無名の役者と脚本家さんが起用されがちな枠ですが、のちにあ、あの時のこと人か、みたいな青田買いもあったりします。

まあ今回のは全青田買いじゃないんですけど。
なんせ主演は朝日奈央さん、関水渚さん、石井杏奈さんと、すでに売れっ子の3人なんですから。

この手の緩く見れる会話劇か、と思っていたのですが、演出が良かったです。
それぞれがいろんなジャンルの愚痴をエピソードトーク的に語り始めると、再現VTR的に回想ドラマが始まります。エピソードの語り手のナレーションが入るのですが、それと同時に、他の二人の、まるで同じ回想ドラマを見ているかのような相槌をナレーションが入るのです。

例えば、回想ドラマの中にマッチングアプリで知り合った男性が出てくると、聞き手の二人が「良さそうな人じゃん」と言った形で、視聴者と同じ情報を得ている条件下での相槌やコメントを入れているのです。

この演出はちょっと新鮮でした。
特に会話劇の中でも、全話を通して「20代後半女性の愚痴」というトークテーマが決まっていて、しかも、視聴者に共感されないと支持を得づらいだけに、聞き手の二人が、最大限、視聴者に寄り添う演出になっていて、しかもそれがちゃんと功を奏しているのが良かったです。

さて、また長いことドラマについてタラタラと語りました。
でもね、これね、最終回を迎えたものもある1月クールのドラマなんですよ。
ってことは4月クールがもうすぐそこです。また、近々タラタラと書くことでしょう。
その時はその時でお付き合いください。

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