【まとめ】増減分析



増減分析の極意

増減分析が最強の監査手続である理由

①虚偽表示を発見しやすいから
・違和感を深掘りしていく作業なので、違和感が正しければ虚偽表示に辿り着ける

②手軽だから
・サンプリングが不要
・データだけあれば実施可能
・どの勘定科目でも同様の手続を適用できる

増減分析の留意点

・切り口を揃える:例えば売掛金なら、得意先別/事業別/製品群別/販売地域別、など
・全体の増減の少なくとも8割は説明する(説明できるように切り口を選ぶ)

コメントは納得感のある記載にする

「なぜ」を少なくとも2回は繰り返す

「入金遅延」
↓なぜ?(1回目)
A:得意先の資金繰りが悪化している?
B:販売した製品に不備があり検収してもらえてない?
C:自社内で入金処理を忘れていた?
↓なぜ?(2回目)
A:もし得意先の資金繰りが悪化しているなら、その得意先に対しては、売掛金だけでなく未収金の回収も滞っているはず

監査証拠を入手して裏取り(事実確認)する

・質問は監査証拠としての証明力が弱い(回答者は勘違いする)ため、必ず他の監査証拠と組み合わせる
・証憑突合、残高確認、実査を行う場合

分析的実証手続(SAP)のデメリット

増減分析とSAPの違い


SAPを実施することによるリスク


それでもSAPをやるなら気をつけること


科目別増減分析のコツ

現金及び預金

・目的:BSと整合しているか?
・簡易CF計算書を作る(何の活動でキャッシュが増減したかを示す)

売上債権

・目的:滞留債権がないか?
・得意先別の増減分析
・得意先別の回転期間分析:四半期単位で回転期間を算出し、前期と前年同期と比較する

棚卸資産

・目的:滞留在庫がないか?滞留在庫は適切に評価減されているか? 
・滞留がなければ、残高の増減は気にしなくてOK(販売が好調で増加している場合もあるし、減少している場合もあるため)

④その他流動資産

・主要な内訳項目の増減を示す

⑤有形無形固定資産

・目的:会社の投資計画と整合しているか?仮勘定が残ってないか?
・附属明細書を見て、取得/除売却/減価償却/減損がどれだけ発生したのかを示す

⑥投資その他(投資系/税効果)

・投資系:投資有価証券、貸付金、差入保証金(敷金などの担保金)
→キャッシュとの整合性を確認する

・税効果:内訳ベースで何が増減しているか?
→税率差異分析

⑦仕入債務

・目的:売上債権や棚卸資産の動きと整合しているか?
・売上債権と同様:回転期間分析

⑧その他流動負債

・その他流動資産と同様
・引当金は見積項目であるため、増減していい理由/増減しなくていい理由を示す

⑨固定負債

・長期性債務:長期借入金など
 →キャッシュとの整合性を確認する

・退職給付にかかる負債
 →ペンションマトリクスで分析する

・税効果
 →内訳ベースで増減分析、評価差額系の増減と整合しているか?留保利益にかかる税効果に異常な動きがないか?

⑩純資産

・SSを作る

⑪売上

・セグメントの増減を参照する
・会社法にはセグメントという概念がないため、事業/製品群/得意先などで区切るのが一般的

⑫売上原価

・開示ベースの増減では、原価率分析くらいしかできない
 →原価率の増加は、仕入価格の高騰によるものか?
 →原価率の減少は、セールスミックス改善によるものか?

⑬販管費

・内訳項目ごとに増減分析する

⑭営業外損益・特別損益

・内訳項目ごとに増減分析する

⑮法人税等

・税率差異分析がメイン


売上高の実証手続


Excelによる分析的手続(試算表の増減分析)

試算表をコピペしたら完成する調書

調書の構成
①増減分析シート
②前期試算表
③当期試算表

XLOOKUPは該当値が見つからないとエラーになるが、SUMIFSを使うと0になる


Excelによるデータ突合



証憑突合でやりがちなミス

厳格監査人?

実務上、どこまで厳密に突合すべきかはクライアント次第

①金額しか突合してない

・金額
・勘定科目
・日付
・消費税率

②突合に使う証憑が不適切

・経費仕訳なら、領収証で突合できる
・売上仕訳は、定型的な外部証憑がないため、要注意
 ・もし出荷基準が適用できる場合
  ・出荷指示書や出荷報告書は内部証憑なので証拠力が弱い
  ・配送業者伝票は外部証憑だが保管されていないケースあり
 ・検修基準の場合
  ・検収書(外部証憑)?
 ・入金記録は、売上以外による記録を除外できたとしても、計上日付の正確性が検証できない

③特定項目抽出法で残母集団を無視してしまう

特定項目抽出法を適用する場合、残母集団内に対して、「PM以上のエラーが残母集団に存在しない」旨の記載が必要あり
※PM(Performance Materiality、手続実施上の重要性)

④統計的サンプリングで金額を純額で算出してしまう

例えば売上高の場合、
・黒残:売上の発生など
・赤残:値引など
の合計金額を母集団金額とし使うのではなく、別個の金額を母集団金額として使う(取引の性質が異なるため)

⑤サンプリングリスクを無視してしまう

残高確認時の差異調整

マイナーパスについての誤解

センスのない監査調書

事実→解釈→判断の3ステップを区別する

①事実:ある取引について、売上計上仕訳の日付と出荷証憑の出荷日が一致した
②解釈:この取引には出荷基準が適用できると考えられる
③判断:問題なし(出荷日に売上計上してOK)


差額を検出した時の対処法

①違和感を言語化する
・仮説を持って数値を見ることによって初めて、仮説との差異を違和感として憶えられる

②事実を確認する
・違和感の9割は合理的に説明がつくことが多い
・残り1割を判別するために証拠を集める

③上司に報告する
・追加検証を行う

④クライアントへの提案方法をまとめる
・エラーであると認定できた場合、
 ・僅少である場合:修正不要
 ・僅少でない場合
  ・経営者確認書に記載すればOK
  ・修正する必要あり

⑤クライアントに提案する

⑥クライアントと合意形成する
・合意の範囲を拡げていく

仕訳テスト

仕訳テストとは

・内部統制の無効化リスクに対応するための監査手続
・目的:登録された仕訳の適切性を検証すること
・方法:不正リスクシナリオを作成し、シナリオ(抽出基準)に基づき仕訳を抽出して、仕訳にかかる根拠資料を収集する(ヒアリング含む)

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