オーバーオールテスト

分析的手続のなかでも、実証手続としてやるもの(分析的実証手続)で、さらに概算値からの乖離が異常じゃないかを確認するテストを「オーバーオール」というらしい(合理性テスト、とも)

公認会計士が財務諸表監査をする際に使う分析テクニックの一つです。減価償却費の計算や固定資産の計上が正しく行なわれたかどうか見極める時に、貸借対照表の固定資産簿価と平均減価償却率を使って概算(英語でオーバーオールといいます)でざっくりと減価償却費を計算し、これと損益計算書上にある減価償却費を比べてみて、さらに新規購入や除却などの期中増減も考慮した上で正常な誤差範囲内だったら適正であると判断します。あまりに誤差が大きいと簿外資産の存在を疑ったりします。

会計士監査を行なうほどの大企業は固定資産の数も多く、いちいち全部減価償却計算していたら日が暮れてしまいます。そこでこのオーバーオールテストを行ないます。そして疑わしい結果が出た場合にあらためて精査します。固定資産の中からいくつかサンプルを抜き出して減価償却計算して検証するサンプリング試査と併用する場合もあります。

このほか利息についてもオーバーオールテストが行なわれます。貸借対照表の借入金残高(期首と期末の加重平均がよく使われます)に平均市場金利を掛けて概算の利息を出し、これと損益計算書の支払利息と比べてみます。誤差が大きい場合は簿外負債(借入)があることが考えられます。

補足について:説明不足で申し訳ありませんでした。私もそれほど詳しく知っているわけではないので推理が入りますが、平均減価償却率については
1、固定資産の耐用年数の平均を求め、それに対応する償却率を省令耐用年数表からひろう。
2、業界ごとに過去の実績データの統計をとって求めた平均値。
が考えられます。1は企業の固定資産台帳から簡単に計算できます。2は総務省の経済統計や財務省・国税庁の財務調査データ等を利用します(もちろん公表しているものに限ります)。とりわけ企業の個別の事情が反映された1が使われるのではないかと思います。固定資産を残存年数を基にグループ分けして、それぞれのグループごとに平均償却率を求めるともっと計算精度が高くなり誤差も少なくなります。

「分析的手続」とは、財務データ相互間又は財務データと非財務データとの間に存在すると推定さ れる関係を分析・検討することによって、財務情報を評価することをいいます。
分析的手続には、 他の関連情報と矛盾する、又は監査人の推定値と大きく乖離する変動や関係の必要な調査も含まれる(監査基準委員会報告書520 (3))。
分析的手続は、監査計画の策定時や、実際の実証手続の際に、異常な点を把握する際に有用で、財務諸表を俯瞰しながら、異常があればだんだんと詳細な分析を繰り返しながら異常をもたらすも原因に迫っていくようなイメージの手続になります。

よく使われる例としては、減価償却費、利息の妥当性、売掛金、棚卸資産、買掛金などの回転期間分析などで、「オーバーオール・テスト」ともいわることがあります。

監査基準委員会報告書によると「分析的手続」とは、財務データ相互間又は財務データと非財務データとの間に存在すると推定される関係を分析・検討することによって、財務情報を評価することをいう、とされています。この分析的手続は、監査の様々な段階で様々な目的のために実施されます。

①リスク評価手続   リスクの高い領域を把握する目的
②実証手続としての分析的手続  重要な虚偽表示の有無を確かめるため
③監査の最終段階   全般的な結論を形成するため

②の実証手続としての分析的手続は、実際の監査の場でよく行われています。例えば、会社の計上している支払利息や減価償却費についてその適正性を検証するためにオーバーオールテストを行います。借入金の平均残高と平均利率から支払利息の推定額を算出します。その推定額と会社計上額との差が許容範囲内であれば適正との判断を行います。その差が許容範囲を超える場合はさらに詳細に検証していきます。借入金の平均残高をより細かく算出すること等の方法によりその差が許容範囲内に収まっていくのが通常ですが、それでも大きく許容範囲を超えるような場合は、例えば簿外の負債の存在がないか等々その原因を探ることになります。また減価償却費もオーバーオールテストに適しています。期首の帳簿価格に対して定額法又は定率法の率を乗じることで監査人の推定値を算出し、会社計上額と検証していきます。期中に取得した資産に対しても月割計算することで検証していきます。


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