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ある日、突然コーヒーが飲めるようになり世界が変わった
自分には関係ないと思っていたものが、急に自分にとって意味を持ち始めた時、世界の見え方がガラっと変わってしまう。
初めてメルカリに出品したことで、近所のダイソーの一番目立つ場所に配送用の梱包資材が置かれていることに気付いたし、気まぐれで入った理容室で大谷の特大ホームランのような角度に眉を剃られ絶望するも、呂布カルマだっているしと気持ちを持ち直したこともある。
そして、ずっとコーヒーが飲めなかった人間がコーヒーを飲めるようになると、コーヒーが飲める人間の顔をしながらカフェに入ることができるし、コーヒーが飲める人間の顔をしながらスーパーのドリップコーヒー売り場に行ける。一度飲めるようになると止まらなくなり、もう立派なカフェイン中毒である。
なぜ、急にコーヒーが飲めるようになったのか。理由の説明には、30秒のショートバージョンと5分のロングバージョンがある。
ショートバージョンは、「偶然、コーヒーを飲んでしまった」「空腹だったからおいしく感じた」という、「そこに山があるから登ってしまった」レベルのたわいもない理由である。注文の手違いで飲むことになったコーヒーは苦かったが、その時めちゃくちゃ空腹だったので半分くらい飲めた。その経験があったので、ロングバージョンの理由につながっていく。
ロングバージョンの最終的な理由は「ヒコロヒーの表現力」となるが、それまで何段階か説明が必要なので、まずはもう一度呂布カルマに登場してもらう。
ある日、理容室で激眉アーチにされてしまい呆然とする中で、気付いたらナチュラル激眉アーチの呂布カルマをYouTubeで検索していた。この眉毛になっているのは世界で自分だけじゃないと確信を得たかったのかもしれない。
そこでできてたのが「片っ端から喫茶店」というテレビ大阪の番組だ。いろんな芸能人が大阪を中心に喫茶店を巡り、コーヒーを飲んだりオムライスを食べたりする番組で、名古屋在住の呂布カルマは名古屋の喫茶店を巡る。落ち着いたトーンで食事をしながら店員と世間話をする、のんびりした番組だ。
空気感が好きだなと思いつつ、その時はまだコーヒーは苦いものという認識だったので自分でコーヒーを飲んでみたいまではいかなかった。その意識が、ヒコロヒーの回を見て変わっていった。大阪や東京のさまざまな喫茶店を訪れるのだが、まず食レポを放棄している。でも、おいしそうに見えるというとても不思議な感覚だった。
食レポを放棄しているというのは、仕事をしていないというわけではない。食べ物や飲み物が出てきた時は、「おいしそう」「かわいらしい」「美しい」。食べたり飲んだりしたときは「うまっ」「やばっ」。ほぼこれで乗り切る。そして、卵が焼かれていると喜ぶし、灰皿があるともっと喜ぶ。
セリフのバリエーションこそ少ないものの、表情豊かに表現するのでとてもおいしそうに見えてしまう。シンプルなセリフでコーヒー嫌いにコーヒーを飲んでみたいと思わせるのは中々すごい。で、前回の空腹時の成功体験もあったので再度コーヒーを飲んでみたら意外と飲めたというわけだ。
今は喫茶店でコーヒーを飲む、という体験が一つのリラックスタイムになっている。家で飲むコーヒーも安らぎを感じる。眉毛のアイデンティティを失ったことで、新たなアイデンティティを手に入れた。失うと、入ってくる。それっぽいまとめ方をしたが、どう考えても眉毛はあったほうがいいと思った。