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非常識で優雅なガールズ


友人とのんびりと過ごして、夜にさしかかった頃に電車に乗った。

私はかなりの田舎に住んでいて、都内に出たあとは電車と車を使い、片道2時間近くかけて家に帰る。

下りのローカル線。


この線の電車には新幹線の椅子をくるっと回したような、向かい合った席がある。

乗車する人の少なさからかこういう構造がまだ残されているが、正直言って知らない人と向かい合わせで乗るのは気が引けるし、4人でこの電車に乗ってどこかに出かけるという機会もほぼないので、ただやたらと場所を取る席という位置付けになっている。


その日も乗車率はかなり低く、いくつかあるその4人席は、最初に座っていた一人に周囲が気を遣い誰も近寄らない広々とした席になっていたり、小さい子どもを連れた3人組の家族に理想のように使われていたりした。


私は普通の席、横並びになったたくさんの席に座ってぼーっとしていた。次の駅につくと、リクルートスーツを着た2人組の女の子たちがカツカツとパンプスを鳴らしながら乗ってくる。

4月だしそういう時期かあと思いながら、きっとどこかの会社の新入社員であろう女の子たちを眺めていた。


女の子たちは、特にコソコソと喋るでもなく、堂々と連れ立って無言で4人席を探していているようだった。

そして、誰も座っていない4人席を見つけると、堂々と二人で斜向かいに座り、きっと疲れていたであろう足を、前の席に放り出した。二人ともパンプスを脱ぎ、しかもキチンと揃えて。


パンプスをキチンと揃えている


そして自分の家であるかのように寛いで、それでいてかなり優雅な感じで、スマホを眺めているのである。

新入社員のぴっちりした身なりに不似合いな状況に、なんだか見てはいけないようなものをみた気持ちになってしまった。でもどちらかというと、普通だったら見れない、ギャップの部分を覗き見したような、得したような、そんな気持ちに近かった。


例えば、普段は鬼のように厳しい上司が家に帰ったら奥さんの言いなりとか、いつも仕事を完璧にこなすスラッとした友達が、家に帰ったら全部放り出してゲームしているみたいな。

他人には見せない、この子達の家での姿を見せてもらったような…。


まぁ、この子達は他人に堂々と見せているのだが。自分達の、(言い方を考えなければ、)だらしない姿を。


でもこの子達があまりにも堂々としていたからなのか、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。申し訳ないがまじまじと見てしまい、そして今でも記憶に張り付いてしまっている。

パンプスってほんと、足痛くなるよね。

一日頑張ったら、靴脱いで、のんびりしたいよね。

自分の会社の上司に見つからないようにね。


他人の視線を気にしないところを羨ましく思ったのかもしれない。非常識で、優雅な、2人組の女の子たち。きっとこの子達は自由で、まあまあハートの強い子達なんだと思う。

今年の春の風物詩は、なんだか記憶に残る形で見れたのだった。新年度がんばろうね。


今日のうた

今日の笑顔が明日の波を起こすんだ
かかと踏ん張ってね ピンヒールサーファー

ピンヒールサーファー/SCANDAL


あとがき
春はなんかSCANDAL聴きたくなります。


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