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#45 知識と思考の違い~自分のアタマで考えよう感想~

自分のアタマで考えよう(ちきりん著、2011年初版、ダイヤモンド社)のオーディオブック(2020年配信、audible)を聴きました。

知識と思考の違いについて考える、良い機会になりました。
ここでは3つ、印象に残った内容を紹介します。はじめに内容のポイント説明、次に振り返りをします。

目次
1.まずは思考することから
2.データをみたら、条件反射で「なぜ?」「なんなの?」を考える
3.考えることは、対象を分解・比較すること


1.まずは思考することから

(1)ポイント
 ・考える力をつけるために、1日の中でどれだけ考える時間を取れているのか考えてみる
 ・知識とは過去の事実の積み重ねであり、未来に通用する論理の通達点
 ・情報と結論をつなぐのが思考
 
(2)振り返り
 考える時間を確保出来ているかを日々自覚することは、本当に大切だと思います。会社員の仕事の中には、デスクワークであっても、気をつけないと作業ばかりしていることになりがちです。
 自分の仕事を、作業、情報収集(インプット)、思考(アウトプット)に分けて考えましょう。情報収集(インプット)は思考(アウトプット)のために非常に重要ですが、その情報から何を導き出すのか、は自分の頭で考える必要があります。知識をインプットしただけで、そこから自分なりの解釈が導き出せないのであれば、それは思考していることになりません。
 ちきりんさんは、意識的に思考の時間をとるために、PCは閉じて、紙ベースの資料から思考することを勧めていました。ネットで何でも疑問解決できるからこそ、あえてすぐに答えを拾いに行かずに、まずは自分で考え、疑問点を整理し、自分なりの解釈を出す。この作業は圧倒的に手間がかかりますが、思考力をつけるために必要なことです。


2.データをみたら、条件反射で「なぜ?」「なんなの?」を考える
(1)ポイント
①まずは先入観(知識・経験)なしに、データを見る。
②生じた疑問に対して、理由を考える。
③そのデータから、何が言えるのか、将来にどうつながるのかを考える。

例1)出生数が減ることの意味
①出生数と合計特殊出生率の年次推移を見る
②出生数の時々落ち込むところ、出生数、合計特殊出生率の減少傾向の理由を考える
③出生数の減少が、将来にどう影響するかを考える
 出生数の減少→人口が減る (問題なし)
       →人口バランスが崩れる (問題)


例2)官公庁組織名から、その目的を分類
①官公庁組織図を見る
②各省の名前の付き方の理由を考える
 消費者庁だけ、人を対象にしていることに気づく
③各省庁の目的はどうであるべきか考える
 <現在>
 A産業界と一体になって国づくりをする省庁
  総務省、法務省、財務省、外務省、文部科学省、厚生労働省
  農林水産省、経済産業省、国土交通省、防衛省、環境省
 B産業界の監視をする省庁
  内閣府、公正取引委員会、国家公安委員会、金融庁、消費者庁

 <理想>
 A産業界と一体になって国づくりをする省庁
  経済産業省
 B国益を追求する省庁
  内閣府、外務省、防衛省
 C消費者の利益を追求する省庁
  総務省、法務省、財務省、文部科学省
  厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省

(2)振り返り
 ここでは、ちきりんさんの思考の練習例を2つ紹介しましたが、このように、一つのデータからだけでも、実に沢山のことが掘り出せることがわかります。
 私達は日々、膨大なデータと向き合って暮らしていますが、果たしてその中のどれだけ、ちゃんと自分の手元に引き寄せて、自分の頭で思考できているのか。ちきりんさんの考える姿勢からは、単なるデータ集めよりも、個々のデータを解釈していくことの方がよっぽど重要なのだということに気付かされます。
 この考える姿勢は、与えられた情報を鵜呑みにしない、自己判断力をもつということでもあります。
 例えば例1では、「出生数の減少は問題だ」という世間一般の考え方に対して、多くの人は、その理由を深く考えず、当たり前に感じるのではないでしょうか。なぜ問題なのか、理由を聞かれたら、「それは人口が減るからに決まってる」という人もいるでしょう。では、本当に人口が減ることは問題なのか?ちきりんさんは、欧米で人口減少している国でも、日本よりは人口問題が深刻でないことを指摘します。そして、問題の根幹は、人口減少ではなく、人口構成の歪みにあると、1つ議論を先に進めています。
 このように思考することで、他人の意見に流されず、しっかり検証する力がつきます。自分の頭で思考することは労力がかかるので、メディアや世間の論調をなんとなく受け入れていたほうが断然楽です。しかしそれでは、マスメディアによる大衆扇動を自ら受け入れていることになります。受動的に知り得た情報を素直に受け入れるだけでなく、情報に対して検証的な姿勢で臨み、自分の知り得たい情報を能動的に掴みにいく姿勢が、求められていると感じました。


3.考えることは、対象を分解・比較すること
(1)ポイント
・考えるために、表を書いてみる。
・思考の棚(=表の枠組み)を持っておき、当てはまる情報を能動的にキャッチ・棚に格納する。


(2)振り返り
 この本でちきりんさんの普段行っている主な思考法は、①物事を要因分解してそれぞれの項目を表やグラフに出力し、②そこから項目・数値を比較し、読み取れることを考える、ということです。
 これを理系の試験研究に当てはめると、①は、試験設計と非常に近いところがあります。試験設計をするときも、要因別に処理区を分けていきます。②は、結果図表を読み解くことと同じです。
 社会問題でも何でも、この方法で要因分解していけば、複雑に見えていた事象も、個々に検証できるようになるということです。
 また、社会問題であれば、要因には時間軸や国(地域)軸などを取り入れることで、歴史的・世界的比較ができるようになります。
 社会問題について、自分の頭で考えているかいないかの違いは、この①②の作業を行っているか、それとも単純にメディアの情報を受け入れているかにあります。
 考える力をつけるために、世間を騒がせているニュースや、自分が注力している対象について、要因分解して表にしてみるということを習慣化していきたいと思いました。


以上、「自分のアタマで考えよう、ちきりん著」の読書(聴書)感想でした。

ここまで読んでくださって、どうもありがとうございました。


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