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幻。

あの夏
ボクとキミ

儚く
脆い
泡のよう

消えてしまう
霞んでく

記憶さえ
もう
定かではない

あの日も
今日みたいに
朝から
雨が降って

湿度が高くて
午後から
太陽が照りつけ

河原で水遊び

近所の駄菓子屋
かき氷

たしか
男子たちが
後から来るって
話してた

「来る前に帰ろ」

急いでたべて
笑ってた

ホントは
心の中
まだ来ないな?

それでも
2人

急いで帰った
自転車

ビーチサンダル
ペダル
うまく踏めなくて

肩に担いだ
浮き輪
風に揺れた

町内の車道へ出たら
消防車と出くわした

胸騒ぎ

「大変だよぉ!」

金物屋のおばちゃんが
叫んで走ってる

ボクらは
自転車の向き変えて

もと来た道を
戻り始めた

河原に
男子が2人
寝かされて
たくさんの人に
囲まれてた

もう1人は
泣きながら
大人達と話してた

1人が動いた
どよめく人々

救急車も駆けつけて
横になったままの
男子を担架で連れ去った

消防車
パトカー

救急車
消防団
たくさんたくさん

近所のおばちゃんたち

親たちも
たくさん集まった

キミの母さんは
泣き叫びながら
近づいた

「よかった~」

何が良かったんだろう

しばらく
立ち尽くした

ボクには身内の
ばあちゃんが迎えに来た

目がほとんど見えない
ばあちゃんが

白杖握りしめ
裸足で部屋着のまま
河原にきて

足の裏が切れたのか
血が滲んでた

「ばあちゃん!」

「そこにいるの?」

「ばあちゃん!靴は?」

「忘れてきちゃったよ」

何故だか
ばあちゃん抱きしめて
号泣した

曖昧な感情
強引な現実


あの夏
全てが変わってしまった


読了ありがとうございます 世界の片隅にいるキミに届くよう ボクの想いが次から次へと伝播していくこと願う 昨年のサポートは書籍と寄付に使用しています 心から感謝いたします たくさんのサポートありがとうございました