石女とボク。
石女と書いて
「うまずめ」と読むそうだ
ボクのおばあちゃまは
自分のことを
そう呼んでる
子供を産めない
女のひとを
そう呼ぶらしい
そして差別用語だと
今知った
おばあちゃまは
自身のことを
そう名乗るので
差別用語として
全く認識していなかった
おばあちゃまは
おばあちゃま軍団の中で
1番若いもしくは
若く見える詳細になると
ちょとわかんない
50歳代後半なのだが
独身である
おばあちゃまは
少女の頃部活動の帰り
強姦されそうになり
通りがかりの人に
助けられた
辱めにあったので
結婚は無理と
決め込んでいた
ところが大学受験の頃
知り合った男性と
大学生になるころ結婚
することになった
男性側のお家から
お嫁においでと
呼びこまれ
そのままゴールイン
学生生活の中
妊娠の兆しがあり
誰からも幸せそうに
みえた
産婦人科の先生も
驚いた
妊娠してたはず
流産したのか
検診時には
お腹の中に
赤ちゃんはいなかった
おばあちゃまは
嫁ぎ先で
相当責められた
勝手に堕胎したとまで
いわれたが
おばあちゃまは
何もしてない
身体に異変も
感じてない
そしてスグ
嫁ぎ先から
三行半
夫さんからの
フォローも無く
実家に戻った
おばあちゃまは
「かなり」「そうとう」
頭が良く
「お勉強」はできた
就職先でも
「エリート」「一流」
そして
「おつぼね」と呼ばれても
大手企業で
現役で仕事して
過去には肩書職のない時代
引きに抜きにあいながら
今では大きな肩書を
のっけて引退までの仕事を
どうするか考えている
おばあちゃまは
仕事する必要性を
「社会貢献」だけではなく
「自身の老化防止」と捉えてる
おばあちゃまの業界で
おばあちゃまを
知らない人はない
何故なら業界切っての
嫌われ者で
めちゃキツイらしい
おばあちゃま本人は
仕事できない人が
そう云うだけよと
シラッとしてる
確かに頭はいいが
押しつけが厳しい
早口で
短気
怒鳴る
暴言につぐ暴言
目つきは
非常に悪い
睨んでるとしか
思えないのに
「見つめただけ」という
モデル系の
美人なので
余計に
キツイ顔に見える
仕事は早く
業績は上がりっぱなし
「凄いですね」しか
出てこない
対話交流なんて
ムリにしか思えない
おばあちゃまは
全身ブランド
持ち物も自宅も高級
高級品がきっと
大好きなんだろうと
思える
しかし
ここ数日
おばあちゃまと
過ごすことになって
ボクは知った
「家族」のいない
淋しさ
「虚しい」日々
「絶望」を埋めるために
高級品で埋める生活
まず初日
ボクが行くと
豪華にお出迎えだ
玄関先で
良い香りに包まれ
ボクを抱きかかえるように
大事に案内された
整って
美しいおばあちゃまの
自宅はひんやりしてた
おばあちゃまは
優しく
「たまにはウチにくること
提案するわ
わたしも引退考えてるし」
などと云いながら
ライム水を出してくれた
「おばあちゃんね
石女だからね
子供いないからね
あぁパコちゃんなら
孫かなぁイヤねえ
いつでも来て
お部屋も作っていいわ
ベッドが必要かしら?」
早口のおばあちゃまは
独り言いいながら
せかせか
お仕事の電話が連続で入る
どなたかに
任せてきたようで
その方に
今日は休みよ?!
アナタに任せたでしょ?
判断しなさい!
というような感じで
怒鳴ってた
ボクは隣で
電話を切った
おばちゃまに云った
おばあちゃま
怒鳴ることは良くない
自身にも相手にも
いいことは無い
任せたなら
お願いしますと言って
放置するべきだよ
それに
おばあちゃま
せっかちさん過ぎて
ボク落ち着かないよ
おばあちゃまは
ボクをむぎゅーって
抱きしめ
まぁー生意気ね
一緒に映画観ましょう
そういって
高級外車に
ボクの車イスも
車に傷をつけながら
乗せ込み
走り出す
そして
トム・クルーズさんの主演の
映画を一緒に観た
おばあちゃまの
子供と一緒に観る
映画センスは
一番気に入った
そのうえ
吹き替えじゃなく
字幕だ
ボクは内容を知るため
必死で観た
観終えて
隣をみると
おばあちゃまは
寝てた
おばあちゃま起きて
わぁ寝ちゃったわ
どこから観てないかしら
もう一回観ていい?
え?ヤダよ
おトイレ行きたいよ
えええ?!
どやっていくの?
私が連れて行くのかしら?
おばあちゃま
漏れちゃうよ
大変だわ!
おばあちゃまは
シャネルのワンピも
ひっかけながら
多目的トイレに
初めて入ったといい
車イスの乗り降りを
サポートしてくれた
夕方いつもボクが過ごす
おばあちゃまたちが
心配して訪問があった
キッチンがひっくり返ってた
おばあちゃまの
お料理の腕はお嬢ちゃまだった
他のおばあちゃまたちは
よくわかってて
一緒に食べましょうと
やってきた
「せいかつ」って大変ね
尊敬するわ
おばあちゃまは
やってきたおばあちゃまに云う
片付けも終わり
おばあちゃまたちが
帰り静まったころ
おばあちゃまは
TVをつけ
ソファーに
横になって観てた
おばあちゃま
ベットに行かないの?
んー気が向いたらね
おばあちゃまの部屋の
高級家具たちも
夜になるとさらに
ひんやりした
無機質で味気なく
淋しい感じしかなかった
ボクはゲストルームで
就寝するように
されてたがエアコンの
温度設定を変えたく
リモコンを探すが
見つからず
おばあちゃまの
元へ戻ると
おばあちゃまは
ドラマをみて
号泣してた
その後ろ姿みて
母の日記を思い出してた
亡き母もひとりで
テレビの前でよく泣いたようで
親族に数秒観ただけで
内容わかるの?
何故泣けるの?と云われたと
書いていた
たったその瞬間のことで
親族なんだなって
ボクは感じた
おばあちゃまはボクに気づき
一緒にベットに入って
ぼそぼそ話してくれた
子供産みたくても
産めないんだから
仕方ないよねって
話すおばあちゃまは
少女のようだった
子供産めても
アナタのお母さんみたいに
亡くなるひともいるんだから
世の中わからないわね
そんなことも言った
ボクに聞かせたいのか
独り言か
寝かしつけるには
大きな独り言
おばあちゃまは
香水のいい匂いがした
お泊りに来て
わかったこと
おばあちゃまは
淋しがり
ひとりじゃ
暮らしの事
何もできない
というか
やりたくなかったんだろうな
仕事ばかりして
お給料が入るだけ
しかし
欲しいものは別にない
自宅もそもそもある
支払う物事は
殆どなく
収入だけがふえるから
税金も凄い
仕事で型がついてくると
身なりを整えるから
そこでやっとお金を使用する
どんどん豪華になる
しかし
本当は親族のように
ゆっくりしたかったはず
産めないからだと知った
ショックは
おばあちゃまには
相当だったと感じる
今朝も
心配して
おじいちゃまが来訪したが
おばあちゃまの対応が
冷たすぎて
苦笑した
朝食を3人で食べた
おじいちゃまが
支度してくれた
おばあちゃまが
暮らすって大変よね
昨夜と同じ内容を話す
ボクの存在が面倒なのかな
そう思ってたずねた
「ううん違うの
パコちゃんがきたことで
子育てとか家族の良さ
わかったけど
生活スキルないから
どうしたらいいのか
あたふたしちゃうわ」
おばあちゃまは
お片付けしながら
教えてくれた
「おばあちゃんね
石女で良かったのかも
きっと子育て
挫折してたし
夫婦関係も
続けられなかったわ
そしたら
子供にも迷惑かけてた
どのみち
孤独な人生なのよ」
おばあちゃま
そんなことないよ
孤独じゃないよ
ボクらがいるから
孤独にはさせない
ボクがこれから
時々来るので
ちゃんと準備してね
おばあちゃまは
ボクが来たので
夏休み中だ
せっかくだから
つれまわそうと
考えてる
しかし今朝
おじいちゃまが
おばあちゃま連れて
健康診断に行ってくれと
頼まれた
まぁ健康診断旅と題して
愛知県下をあちこち
行こうと思う
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読了ありがとうございます 世界の片隅にいるキミに届くよう ボクの想いが次から次へと伝播していくこと願う 昨年のサポートは書籍と寄付に使用しています 心から感謝いたします たくさんのサポートありがとうございました