行動中の脳内
テニスのラケットでボールを打つ動作を考えてみる。
一般的には、脳がボールを打つために様々な条件を瞬時に察知・判断して、最適な運動プログラムを腕に出力して腕が動くと考える。しかしそれは正しくない。
腕には肩関節に10個・肘関節に6個・尺骨関節に4個・手首関節に6個の筋肉がひっついている。コレを脳からの命令で制御しようとすると、26もの値を設定しなければならない。
さらにそれぞれの筋肉は100以上のパーツに分かれる為、腕だけで2600の自由度があり、それだけの数を瞬時に決定しなければプログラムを出力出来ない事になる。
そうなってくると、テニスで瞬時に体の動きをプログラムしてナイスショットを打つ事は「事前に知っていない限り」困難である。
実際は毎日練習する事で飛んできたボールに対応する最適なプログラムを事前に作り、試合では「すでに出来上がったプログラムを引き出すだけ」となる。
このプログラムの精度をより高くするには反復練習・フィードバックの繰り返しを行う必要がある。
反復練習には
①技術のレベルが上がる
②無駄な体力・注意力を使わなくなる
というメリットがある。
テニスのサーブを例に挙げる。
反復練習が少ない人は自分のスイングを上手く行う事ばかりに意識が集中してしまい何処に狙うかまで注意を向ける事が出来ない。技術が低く無駄な動きが多い為すぐ疲れる。
反復練習が多い人は自分のスイングをほぼ無意識で行える為相手の状態等に注意を向ける余裕が生まれ的確な位置を狙う事が出来る。技術が高く無駄な動きが少ない為疲れ辛い。
フィードバックは
①瞬時に目の前の情報を入力する
②その情報を咀嚼して意思決定する
③決定したプログラムを実行する
④実行した結果を得る
の4段階によって構成されており、「○○をしたら上手くいった」「××をしたら上手くいかなかった」の繰り返しで精度を高めていく。
…てな感じの事が「上達の技術」に書かれていた。
この事柄は「思考は言語化出来る」「思考は言語で伝える事が出来る」「思考過程を詳細に把握すれば誰でもその思考を再現出来る」と考えていた筆者にとって大きな衝撃だった。
これが正しければあらゆるゲームは「超人しか行っていない思考がありそれを理解すれば誰でも超人になれる」訳では無く「反復練習によって大量のフィードバックを得た結果あらゆる判断を正確に・早く・省エネで出来る様になった人間が超人と呼ばれる」となる。
つまり「超人になる上で反復練習は絶対に避けられない」「そもそも行動は思考では無くフィードバックによる無意識下の選択によって行われている」…という事である。
勿論効率的な反復練習の方法…というのもあるだろうが所詮は付け焼き刃である。反復練習を行う事が前提となる為。
近頃「選択は相手の行動を読む行為ではなく情報をかき集め安定択を選び取る行為」「超人になる上で反復練習は絶対に避けられない」という2つの思考にぶん殴られてショックを受けている。少し。今まで自分が書いてきた事と全くの真逆だからである。
まあ机上論とはそーゆーもんだろう。うむ。
おわり