国民vsピープル | "the people"を考えませんか | 高谷 幸
ビッグイシュー406号の特集『コロナ禍で考えた“民主主義”』に寄せられた7つの寄稿を、1日1本ずつ紹介している「勝手にビッグイシュー(と民主主義)応援シリーズ」、本日が3日目です。
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■ 勝手要約(オリジナルは1500〜2000文字程度)
コロナ禍における「一人当たり10万円」の特別定額給付金の支給対象は「国民」であった。実際には給付対象は2020年4月27日時点の住民登録により判断されたが、「国民」という言葉は「自分たちは含まれないのでは?」と在日外国人に不安を感じさせる言葉だ。
市民活動の現場では「国民の声を聞いてほしい」という言葉も日常的に使われるが、そうした声をあげる当人も、「国民」を「日本社会に住んでいる人びと」の意味で使っている場合も少なくないだろう。
国籍法は日本国民を「国籍を持っている人」と定義しているが、国民健康保険や国民年金が対象としている「国民」は、1980年代半ばに「住民登録の有る人」へと変更され、外国人の加入が認められた。
「国民」という言葉は、やはり排他的な意味合いを持っている。そして今も、国籍による差別はなくなっていない。この社会の担い手を指す「国民」にかわる新しい言葉が必要なのではないだろうか?
近代民主主義の理念を表す代表的な言葉に「人民の、人民による、人民のための政治」があるが、その原文は"government of the people, by the people, for the people"であり、民主主義社会の担い手は"the people"とされている。日本ではその意味合いにおいてピープル、市民、住民などの言葉が使われてきたが、どれも今のところ「国民」ほどには広く使われていない。
コロナ禍において、「国民」という言葉がこの社会を構成するすべての人々を指す表現としてますます適切ではなくなっている。
社会の担い手を表す「国民」に代わる言葉をあなたも考えてみませんか?
■ 感想とか
まず、<社会の担い手を表す「国民」に代わる言葉>だが、正直おれには「市民」を超える言葉が見つけられずにいる。
これは個人差が大きい話だと思うが、おれにとっては「市民」という言葉には「草の根感」が張り付いて見えるのだ。ピープルもおれにとっては悪くない(ジョン・レノンや村上春樹が頭に浮かぶ人も少なくないだろう)が、「なんでもかんでもすぐカタカナにするのは日本人の悪い癖だ」と受け入れない層がかなりのボリュームでいることも想像がつく。
社会の担い手を表す言葉が、分断を招いては本末転倒だろう。
というわけで、「市民」という言葉を改めてクローズアップし、「市民」という言葉にもう少し新しい輝きを帯びさせたい。
寄稿には、リンカーンによるアメリカ史上最も有名な演説が取り上げられているが、民主主義をもう少し遡ってみると、フランス革命後にはこんな言葉が広まったようだ。
"Ici on s'honore du titre de citoyen." -- 「ここに、我々は(我々自身を)市民という称号によって称揚する」。
残念ながらフランス語がさっぱりなおれには、この日本語訳がどれくらい「いい感じ」なのかはわからないけれど、ここで「市民」は「称号」とされている。
王族や貴族などの特権を持って生まれてきたものたちではなく、社会の担い手という誇りある役割りが自分たちのものであると宣言しているのだ。
これをベースに、改めて市民という言葉を見直し、そこに多くの意義を与えていくことで再生できたら…と思うのだが、どうだろうか?
もちろん、それは言葉だけで形作られるわけはなく、担い手であるおれたちの行動が意義を与えていくのだ。
最後に、もう一つ加えておきたいことがある。
市民という言葉に、まだここには存在していない、この地に暮らす未来の人びとも含めたい。
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