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福祉 vs 悪のワンストップサービス

木下斉さんと認定NPO法人育て上げネット代表 工藤 啓さんの対談でも語られていたことに、「福祉の敗北」があります。

福祉の敗北…
この場合の福祉とは何か?
社会的なサポートが必要な若者に対して提供される色々なメニューです。提供するのは、行政、民間と様々です。

では、敗北とは何に負けてしまうのか?
「悪のワンストップサービス」とも言うべき相手に負けてしまうのです。

社会的なサポートが必要な若者が居るとします。
幸い、こうした若者の存在が認知されます。
そして、福祉の側の登場者に情報が共有されます。
しかし、若者は福祉のサポートを受けず、悪のワンストップサービスを受けることになるのです。

悪と言っても様々な悪がいます。
犯罪集団の場合もあれば、カルト宗教の場合もあります。

しかし、負ける理由は単純明快です。
悪のワンストップサービスの方が使い勝手が良いからです。

私たち持続未来グループは、障害者雇用を推進しています。若い障害者にも多く働いてもらっています。
また、若年受刑者に対する職業指導にもグループとして取り組み始めています。

今日は、こうした中での経験から記します。

◼️ 縦割り


前置きになってしまいますが、私たちは自分たちのことを福祉とは認識していません。
しかし、形式上は障害福祉サービス事業所がグループ内にありますし、ケースによっては関わることがあります。
自分たちが福祉かどうかは別にして、福祉の側と手を組まないと取り組みを進めることができません。

ですから私たちも福祉の側に居るのですが、私たちから見ても福祉は縦割りです。

まず、担当する部分が各登場者によって分かれています。
障害者就業・生活支援センターの担当部分、就労先企業の担当部分、相談支援員の担当部分、社会福祉協議会の担当部分…
触法案件によっては、保護観察所、保護司も絡んできます。

「その部分はウチじゃ見れないですね」ということだらけです。
さらには「どの登場者も見れない部分」もあります。
友だちの紹介なんてほぼ無理ですし、居場所の紹介も今ひとつ。住まいの紹介だってなかなかハードルが高い。

要は穴があるうえに、ツギハギだらけです。

登場者同士の所属組織が違うとリレーションを取りにくいのはもちろん、同じ組織でも部署が違うと全くスムーズではないこともしばしばです。

これに対して悪のワンストップサービスはスムーズです。
「オレに任せとけよ!何とかするよ!」
そりゃ負けますわ。

◼️ 連絡手段


連絡手段も前時代的で、SlackやLINEのようなチャットツールはおろかメールでのやり取りもできず、電話のみということが多いのです。しかも携帯連絡はできず、代表電話に連絡してもいつも不在とか。
(メール連絡は可能だけど、組織にメールアドレスが1つしかないなんてこともあります)

当然、私たち登場者同士が連絡を取り合うのも不便なのですが、最も不便なのは本人です。
今時の若者に、チャットツールでなく、いきなり電話しろと言うのは…

対して悪のワンストップサービスはLINEが当たり前です。勝てませんって。

◼️ 当事者意識


そして、悪のワンストップサービスが最も強いと感じるのは、相手の身になって親身に接するのです(もちろん悪の側に取り込むためのフリにすぎないのですが)。

これに対して福祉の側は、仕方ないとはいえあくまでもお仕事です。
中には、「オレ、ジョブローテでここに居るだけだから、仕事は1ミリもやりたくないっす」感全開の人も頻繁に登場します。
あるいは「面倒なことにはしたくないから、杓子定規にしかやりません」主義の人も。

悪いとは言えません。責めることもできません。でも勝てるわけないっすよね。

■ で、どうなるか


犯罪集団の場合には、良いように使われて終わることがほとんどです。
なりすまし詐欺の受け子にされたり、薬物を使うようにさせられたりです。
もちろん犯罪は犯罪です。
なりすまし詐欺の受け子でも賠償責任があります。被害者から訴えられる可能性があります。

カルト宗教のカモになった場合は、金品をむしられます。
特定の名称を挙げたいところですが、実名なのでやめておきます。

でも、今のような人口減少の局面では、若い人は若いというだけで価値があります。
だから一昔前と違ってやり直しに協力しようとする人は増えていくはずです。
私たちも、少しの力になれたらいい。そう思います。

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