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函館少年刑務所スタディツアー②

認定NPO法人育て上げネットさん主催の函館少年刑務所スタディツアーのレポート、第2回です。
第1回はこちら。

函館少年刑務所の刑務官さんたちが、現場で熱意を持って受刑者と向き合っておられると書きました。
これはとても素晴らしいことです。

が、しかし、現場の熱意だけでは解決できない問題もあるように見えました。
もちろん私のような部外者の所感ですから、現状把握に誤りや不十分さはあるとは思います。「素人の考える最強の解決策」みたいな机上の空論もあるとも思います。
しかしながら、現時点での自分の気付きとして記しておきます。

■ その技術は今の社会でニーズが有るのか?


具体的な作業内容は記述しませんが、ある職業指導の内容を見ました。
刑務官は一生懸命訓練・指導し、受刑者もまた一生懸命取り組んでいるように見えます。

しかし、私は強く感じました。
「今あなたたちが一生懸命やっている作業、もう今となっては必要とされてないよ…」
そう、技術習得しようとしている職種自体は今も人手不足で、人材へのニーズはあるのです。
しかし、教えている技術、作業は、もう現場で用いられないものなのです。古すぎるのです。

つまり、一生懸命取り組んでもその技術、作業では稼げない。
残酷ですが事実です。

この日、実際に見て気がついたのはこの作業だけでしたが、質疑応答を通じて「どうやら他にもありそう」と感じました。

■ 刑務所での職業指導だけの問題ではない


これは、刑務所に限らず職業指導に携わる自分自身も自戒を込めないといけません。
なぜなら、職業指導において程度の差はありますが「現場ではあまり必要とされない技術」を教えることは割とあることなのです。

理由は様々です。
・安全上そう教えないといけないから(でも現場の多くではそのように行っていない)
・現在では新しい技法があるが、諸条件により同じ技法を教えることができないから(資機材がないなど)
・資格取得を目標とさせているが、資格試験でその技術が試験問題となっているから(資格試験の内容がアップグレードされていない)

こうしたとき、苦し紛れに「現場ではこのように行わないかもしれませんが、知識として押さえておいてください」などと言って教えるわけです。
うーん、我ながら情けない。

■ 出口ありきでもっと民間と連携できないか


今、そしてこれからも人手不足は続きます。
民間企業は常に人手不足ですから、刑務所内の職業訓練ももっと連携できないでしょうか。
例えば、「毎年2人くらい雇用したい」という会社が職業訓練を行う形なら、前述のような技術、作業のミスマッチは起こりにくいと思います。

こうした取り組みには企業側の意識変革も必要ですが、もう人手不足はかなりのレベルです。「面倒な人は雇いたくない」などと言っている余裕はなくなってきました。「出所者の雇用も考えてみようかな」と考える企業は掘り起こせる、経営者である私はそう感じます。

■ 基礎的な学習指導の必要性


刑務官の皆さんとのやり取りから、受刑者の中には義務教育で学ぶ基礎的な学力が不足している人が少なからずいるようです。
そして、こうした人に対する学習指導が不足しているようでした。

これはスタディツアー参加者と話したことですが、こういった学習指導にはリクルートさんのスタディサプリみたいなサービスが持って来いなんじゃないでしょうか。
でも所内はインターネット厳禁だからダメなんですよね…

うーん、限定的にでもネット接続できないものか…

■ 仮出所だと長期航海はダメ


前回も書きましたが、函館少年刑務所は、少年北海丸という訓練船を有して航海や漁の実習を行っています。

現在、船の乗組員も非常に人手不足です。実習内容のブラッシュアップは必要でしょうが、即戦力として企業からのニーズは高そうです。

ただ、残念ながらある程度の期間(2週間くらい)以上の航海に出るような船に就職することは非常に難しいのです。
なぜなら、仮出所者は保護司の面接を月2回受けなければならないからです。

そう、訓練船での実習を受けられる受刑者は模範的なので、満期出所ではなく満期前に仮出所してしまうのです。
うーん、これもどうにかならないのか…

■ これは現場の問題ではない


ここまで問題点をいくつか挙げましたが、はっきり言ってこれらは現場の刑務官の皆さんが解決できるものではありません。
もっと上の階層、制度のデザインや運用方法を決定できるクラスの問題です。
そうしたクラスがこの問題に取り組み、解決へ前進すれば、現場の刑務官の皆さんの熱量はもっと生かされると感じました。

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