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クレージーでカッコ悪くても関係ねえ!~楽天グループを写経して~

四季報を写経しはじめて87社になりました。
「まだそんなものなのか」とお思いでしょうが、毎日最低でも2社は写経するよう自分に課してきました。

最初は自分と馴染みの深い業界から、次に趣味嗜好の分野の会社、全く馴染みのない業界をランダムにという感じで進めたのですが、ここに来て誰もが知る大手、いわゆるベタな会社を写経してみました。

そこで写経したのが、4755 楽天グループです。
そう、あの楽天。トラベル、市場、ポイント、銀行、証券…提供されるサービスを全く利用したことがない人のほうが少ないのではないかと思われるあの楽天です。


■ 何となく知ってはいたけれど


携帯事業に参入して以来、楽天グループは苦しい。
それは散々聞いていました。ただ漠然と、です。

実際に写経してわかったのは、たしかに苦しい、間違いなく苦しい。でも、絶望とは違う苦しさを感じました。

ゴールのある苦しさという感じです。

■ 数値で見る苦しさ


2000億円を超える営業赤字、しかも2020年度からずっと営業赤字。自己資本比率3.7%…ひどい数字です。ここまで写経してきて、自己資本比率が最低だったのは、中古ブランド品買い取りの大黒屋ホールディングス(0.1%)くらいです。

でも、私も経営者の端くれです。
どうなったら会社は倒産するのか、どうなっても会社は倒産するわけではないのかを知っています。

そう、会社が倒産するのは、現金が尽きたときです。キャッシュが無くなったときに会社は倒産します。

いくら赤字決算をしようが、自己資本比率が最低最悪だろうが、会社は死にません。
お金がある限り会社は生きるのです。

■ で、キャッシュはあるのか


結論から言うとあります。
5兆円を超える現金同等物を有しています。

もちろん、現金同等物は他の資産と結びついていることが多く、実際には自由に使えないだろうことは承知しています。
しかし、兎にも角にも一応キャッシュはあるのです。

よく社債償還(平たく言えば借りた借金を返すこと)のために資金を作るのが大変とも言われます。

これに対しては、色々と各方面からいい顔はされませんが子会社上場だったり、利率は高くなるにしても新しい社債発行…苦労するにしても調達可能でしょう。
面白おかしく「破綻寸前」と囃されるような状況には見えません。

■ 何がゴールなのか


私は最初に、楽天グループは苦しいには違いないがゴールのある苦しさにあると書きました。

では、何がゴールなのかです。

それは携帯電話の契約件数です。
携帯電話事業は乱暴に言ってしまうと、固定費が大きく変動費が小さいため、契約者が100人でも1000万人でもコストはほぼ変わりません。
つまり、多くの契約者を捕まえることが目標になります。

ざっくり言うと、日本の携帯契約件数は1億2000万件。楽天グループによれば、そのうち800万~1000万件をぶん取れば採算が合うとのことです。
で、現時点では680万件まで捕まえている。

もう少しですね。
800万~1000万件で採算が合うようになり、2000万件でも捕まえることができれば、楽天の携帯事業は金のなる木になるでしょう。

■ なせ携帯事業に参入したのか


ここからは私の単なる推測です。

楽天市場をはじめとするインターネットサービスの利益率は、6%と必ずしも高くなく、今後も競合との関係上、下がることはあれ上がる可能性は低いという事情があるからではないでしょうか。

もちろん金融の利益率は高いのですが、それに次ぐ、そして大きな金のなる木が必要と経営は判断したのではないでしょうか。そこで生まれる資金によってこそ将来に投資できると。

ここで思い出されるのがソフトバンクグループです。
2006年にボーダフォンを買収し金のなる木を捕まえたソフトバンクグループは、2016年に半導体のアームを買収しました。

もちろん、楽天とソフトバンクとは同じではありません。
2006年というスマホ登場直前という絶好のタイミングに携帯事業に参入できたソフトバンクはファインプレーですが、楽天は正直遅すぎたと言っていいでしょう。

しかし、遅すぎようが何だろうが携帯事業が金のなる木には違いありません。金のなる木を捕まえさえすれば、次のチャンスを得られる。ソフトバンクがアームを捕まえたように。
私には楽天グループの経営がそう叫んでいるように思えます。

そうした姿勢はたしかにカッコ悪いです。まるで楽天市場の出店サイトのデザインのように。
しかも、この挑戦は、私はそれなりに成功するとは思いますが、クレージーです。
そんなクレージーでカッコ悪いことは、創業社長意外にはできません。サラリーマン社長にはできません。

おこがましいのは承知ですが、解らなくもないなあと思うんです。オーナー経営者の端くれとしては。


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