弱者の戦略~フィットネスジム運営編①~
弱者の戦略、わりとよく聞く言葉です。
私も経営の現場でよく用いる考え方です。ただ、自分たちは弱者だからこの考え方を用いればよいかと言えば、そう単純でもありません。
なぜなら、私たち持続未来グループは、比較する相手によって弱者でもあり、強者でもあるからです。
その辺りは単純ではないので、競合を評価し、自社を評価したうえで具体的な打ち手を考えなければなりません。
今日は、このあたりについて、私たちが運営するフィットネスジム事業を例に考えてみます。
■ なぜフィットネスジム事業を考えたのか
フィットネスジム運営をはじめた話は以前にも書きました。
開店8ヶ月弱の現在、会員数は順調に伸び、単月黒字を達成しています。この調子なら、近い将来に会員数を制限する必要も生じるかもしれません。
要は、現在までのところ成功したと言っていいでしょう。
では、なぜフィットネスジム運営を考えたか、3つの理由があります。
①既存のジムに不満があったこと
②chocoZAPを見て「こんな型破りな戦略もあるのか!」と感じ「自分も思考を縛る枠を取り払って事業構築したい。っていうかできるんじゃないか?」と直感的に考えたこと
③体を動かすのが好きだから
3つ目はどうかと思われるかもしれませんが、バカにできません。人は好きなことをやるほうがいい仕事をしますから。
■ 競合分析
ではまず、各プレーヤーの分析です。
①ルネサンス、セントラルのような総合大手ハコ型
かつて一般的だったタイプです。
トレーニングマシン、フリーウェイトはもちろん、プール、スタジオ、果ては入浴施設、サウナまでついていたりします。
【ストロングポイント】
・資本力が大きい
・何でも揃っている
【ウィークポイント】
・わかりにくい価格設定(平日昼間のみ、夜のみ、土日限定などなどプランが多すぎる&価格設定が今となっては高く感じる)
・スタッフ確保が困難
・高額な維持費
・開店時間が限定的
②chocoZAP
月額2,980円(消費税別)という低価格と圧倒的な広告宣伝量で、言わずと知れたコンビニジム。無人運営です。
これまでにジムに通ったことのない初心者層をターゲットにしており、業界内で新しく市場を開拓しているのはここだけと言っていいでしょう。
【ストロングポイント】
・わかりやすく、これまでにない低価格
・圧倒的な広告宣伝による知名度
・資本力が大きい
・不動産物件が見つけやすい(駐車場なし、狭めの床面積でもOK)
・スピーディーな店舗拡大(恐ろしいことに全店がフランチャイズではなく直営です)
・24時間営業
・手続きはネット完結
【ウィークポイント】
・中級者以上には物足りないマシン構成と台数
・風呂はおろかシャワーもない
・清潔さに対する悪評
③エニタイムフィットネスなどの中価格帯
月額7,000円台、マシン構成・台数、フリーウェイトも充実しています。①のようなタイプが主流だった頃に市場へ殴り込んだ感じですね。かつての価格破壊者です。
【ストロングポイント】
・充実したマシン&フリーウェイトで中級者以上も満足
・①よりも低価格
・24時間営業
【ウィークポイント】
・ネットで手続きを完結できない(退会は実店舗に行かないとできない)
・有人ではあるものの、事務仕事や店内整備をしたりしていることが多く、特にトレーニングアドバイスをしたりしないことが多い。(このあたりは店によって違います)
・スタッフ確保が困難
・FCのため、資本力はフランチャイジーによる
この他に、パーソナルジムや空間貸出型(ハコジムなど)もあります。
が、しかし、これらについては、あまりに属人的であり法人運営に向いていなかったり、商売として懐疑的だったりするので比較対象とはしませんでした。
■ で、ウチの戦略は?
ウチの戦略は明確です。
その戦略を説明する前に、既存の競合を叩き台にしてみましょう。
・①のような、現在では大手でもさほど儲かっておらず、なおかつ大きな資本力が必須な業態へ飛び込む意味はありません。投資額は億単位ですから、ウチの場合、空振りすれば屋台骨が危うくなります。
→選択することはありえない。
・②のchocoZAPは、戦略としては理解できるし、今後の伸びしろも十分見込めます。無人運営、24時間営業、手続きネット完結は良いのですが、同じ商売を同じようにやるのでは資本力で負けます。
→参考にはなりますが、同じではダメ。
・③は、ターゲット層は明確でなおかつchocoZAPと異なっています。chocoZAPが開拓した初心者層が、ランクアップしてchocoZAPでは物足りなくなったらターゲットになりそうです。
ただし、客として価値を感じない有人運営、手続きをネット完結できないシステムは頂けません。
→参考にはなりますが、同じではダメ。
ということで整理すると、基本的にchocoZAPをトレースしつつ、何かをずらすことでchocoZAPとの正面対決を避けるのが取るべき戦略です。
ということで、ウチの目指すべきジムは次のようになります。
まずは、chocoZAPとの違いです。
・ターゲット層は中級者以上(chocoZAPは初心者層)
・充実したマシン構成・台数、フリーウェイト(chocoZAPはマシンが少なく、フリーウェイトは無い)
これらによってchocoZAPとはターゲットをずらし、差異化します。
そして、chocoZAPをトレースする部分。
・手続きはネット完結
・無人運営
・24時間営業
・シャワーなどは一切設けない
シャワーなどがないので、敬遠する層もいるとは思いますが、この部分を削ることでエニタイムフィットネス等に対抗する強烈な武器を用意します。
それがこれです。
・月額会費2,980円(消費税別)
価格はchocoZAPと同額とし、エニタイムフィットネス等の月額7,000円台を圧倒します。
ただし、やみくもに低価格にしようというのではありません。
シャワーなどの水回りは、設置に費用がかさみ、故障が起こりやすく、清掃などの手間がかかり、ちょっとでも汚れたらクレームの嵐です。
要は金食い虫なのですね。
だったら、その金食い虫をウチは飼わない、その代わりに安くするわけです。
「これが気に食わなかったら他に行ってね」という割り切りですね。
chocoZAPをリスペクトしトレースしつつもターゲットをずらし、資本力勝負の正面対決を避ける。
まあ、弱者の戦略と言って良いのではないでしょうか。
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