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真逆の合成、共存、だって好きだし

 買ってきたプチトマトに、ひとくちモッツァレラ。エクストラバージンオリーブオイルがオススメですとあるけれど、このオリーブオイルが何かはわかっていない。誇張表現がついていないから、普通の方のオリーブオイルだろう。それに瀬戸内海の粗塩を振って、一応パセリをかける。わたし特製、カプレーゼ。
 
 丁寧な生活とは程遠いのに、何故か一部のものへのこだわりは抜けない。そんな不器用な自分のことが、いまはちょっとだけ好きだ。

 ちょっと好きなだけだから、結構嫌いでもある。わたしにとって好意と憎悪は、同じグラフで、同じ線で描かれるものでは無い。全く別のグラフで、お互いに干渉することなく独立に動いている。でも「好きだ」「嫌いだ」とつよく思う時、もうひとつのグラフを完全に無視していたりそのときにしか通用しない謎の計算式でそのふたつを合算しているのだ。

  だから、大嫌いなのにちょっと好き、は矛盾なくわたしの中では存在する。

 そして、好きにも嫌いにも、特に際限はない。だから愛に限りなく絶望して、なにもかもを捨てたいと思うと同時に、なにを捨ててでも守り抜きたい誰よりも愛しい人が存在しうる。人間なんてと絶望の詩を唄いながらもそれらと完全に離縁することはしない。愚かだなと思いつつ、そんな自分が可愛くもある。

 こだわりと無頓智を別次元で遺憾無く発揮してできたのがこのわたし。他者がわたしを評価するとき、どうせこの合算値でしかわたしを評さない。でもわたしの中では矛盾なくこのふたつは、ある種の矜恃を持ってその値を出し続けている。不器用だねというのも、君はこだわりが多いねというのも、そうだけどそれだけじゃあない。まあ、それを他者に判ってくれとは言わないし、できるわけはないから求めないけれど。そんな歪なわたしを「好き」と思えるこの瞬間くらいそれを表明しておかないと、自分でさえそれを見失いそうで怖いから、たまには自分に宛ててラブレターを書いておこうと思う。

 生きるなら貴方とではなくてはならなかったわけではないけど、結果としてそうなってしまったから。破滅の道を歩もうとするわたしを止めはしないし理解はするけど、それと同時に大事にしないとと思っている。……ラブレターにしては弱いのだろうね。普段熱烈にあんなにも言葉を尽くして愛を語るわたしが、この程度しか言えないなんて。照れ隠しということにしておこう。あとは、いつもの赤い手帳にわたしにだけ判る言葉を書いて締めておこう。

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千崎 叶野
本になって、私の血となり肉となります

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