シビレ

あの娘にナイショのバンドのVo.

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Rose

大好きな大好きな大好きな彼氏と喧嘩する夢を見た。夢の中でも私は意地っ張りで本心を隠し続けた。 もう会えないかもしれないと思うと苦しくて、いても立ってもいられず、…

シビレ
1か月前
3

眠れぬ夜には、ピーマンを

逝きたくて、生きたくなくて 生きたくて、逝きたくなくて 壊れた夜 土砂降りの中 傘もささずに 駆けつけた君は 頬を濡らす雫を拭い 困ったような笑顔を浮かべ 「お前は…

シビレ
5か月前
3

花筏

それは、恐ろしいくらい優雅な花筏を、冷たい風が攫って行った夜のことだった。 長髪に纏わりついた花弁をひとつふたつ、みっつ、押花にして、栞にしたら母にあげよう。あ…

シビレ
6か月前
3

人を呪わば穴二つ

その昔、たった一度だけ、私は人を呪ったことがある。 悍ましい現実に耐えられず、骨の髄まで染みついたキリスト教の教えに苦しめられ、自我を保つために、愚かにも人を呪…

シビレ
1年前
3

100年に1度の恋でさえ、何も救いやしない

「どんなにこちらがお慕いしたって、どうにもならない事だし」って一節がやけにチクチクしちゃって。 柴犬の散歩してるわけじゃないんだからって、また笑ってよ。子供みた…

シビレ
2年前
10

フェアトレード

私のような職種には、8時間勤務という概念が存在しない故、開店前に家を出て、閉店後に帰宅するというのが日々のルーティンなわけで。そういえば、大好きな珈琲すら淹れな…

シビレ
2年前
12

拝啓、敬愛なるお姉さま、お兄様方へ

強く明るく生きろと、お前はそういう生き物だろと願いを込めて同意を求める貴方達が嫌いです。 死んでも死にきれぬほど憎いです。 私をそうしてしまった貴方達が憎いです…

シビレ
3年前
13

もしも願いが叶うなら

息を吐くように、或いは、お腹が空いたと感じる時のように、極々自然に、いとも簡単に「死にたい」という4文字が、「死にたい」という想いが、浮かんでは消え、浮かんでは…

シビレ
3年前
12

世界はいつも希望で満ちていた

三大欲求を満たすということが、自傷行為を、否、自殺行為を重ね失敗した時と同じくらい苦しくて恐ろしく後悔とも狂気とも畏れとも違う、とにかく、顔をグチャグチャにされ…

シビレ
3年前
15

アダムとイブ

「明日、一緒に死なないか」 自力じゃ真っ直ぐ歩くことも出来ないだらしの無い男が急に立ち止まり、真面目な顔をして呟いた。 「どうやって?」 「真っ白い服を着て、海…

シビレ
3年前
14

だから私はライブをやらない

「飲みに行こうよ」 「今は無理かな」 「コロナ、真に受けちゃってる感じ?」 「真に受けるって何?」 切っ掛けは些細な一言だった。 これが、音楽を生業として、人前に立…

シビレ
3年前
20

生きてるって感じたい

あれもこれもそれも全部、私ではない誰かに向けたものという事実が虚しさを倍増させる。 太陽は眩しすぎて気が滅入るし、どこまでも続く空はとても窮屈だ。 鳥達の囀りは…

シビレ
3年前
14

悲しい結末

「友達でしょ」 「友達だよ」 それが私たちの合言葉だった。 病める時も健やかなる時も、私たちを縛る魔法の言葉は「友達」だった。 眠れない夜はいつも隣に君がいた。 …

シビレ
3年前
15

グルナディンソーダ

全国に1万2200人程しかいない苗字を持つ友人を私は1人持っていて、さらに、その稀な苗字をもつ1人が都内に生息する事を偶然にも知ってしまった1日があった。 その漢字を見…

シビレ
3年前
12

それでも

「いつもありがとうねぇ」 酸素を送るチューブを鼻につけた、おばあちゃんが優しく笑う。 「いつもありがとうねぇ。 今日はすこし具合がねぇ。 ご飯もあまり食べられなく…

シビレ
3年前
13

優しい振りした悪魔

「ねぇ、怖くて眠れない。変な人がピンポンしてきたの。今、23時半だよ。18時にも来てた。こんなことある?」 「今バイト。終電で行く。」 人はこの奇妙な関係性のことを…

シビレ
3年前
13
Rose

Rose

大好きな大好きな大好きな彼氏と喧嘩する夢を見た。夢の中でも私は意地っ張りで本心を隠し続けた。

もう会えないかもしれないと思うと苦しくて、いても立ってもいられず、友人と過ごす時間は完全に上の空だった。

彼のために作ったRoseという曲も忘れて日々私は何をしていたんだろうか。彼を見送ったときHave a nice dayときちんとハグをしただろうか。

あの温もりに触れることは、もうないかもしれな

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眠れぬ夜には、ピーマンを

眠れぬ夜には、ピーマンを

逝きたくて、生きたくなくて
生きたくて、逝きたくなくて
壊れた夜

土砂降りの中
傘もささずに
駆けつけた君は

頬を濡らす雫を拭い
困ったような笑顔を浮かべ

「お前は何も悪くない、間違ってないよ。」

そう言って、頭を撫でた。

悔しくて、もどかしくて、
悲しくて、哀しくて

絞り出した声は
雨の音に溶けて消えた

「ちゃんと泣きな」

視線を合わせた君は、やっぱり困った顔をしていて
悔しかっ

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花筏

花筏

それは、恐ろしいくらい優雅な花筏を、冷たい風が攫って行った夜のことだった。

長髪に纏わりついた花弁をひとつふたつ、みっつ、押花にして、栞にしたら母にあげよう。あの人の好きな花はトルコ桔梗だけれど、「理知」というぴったりの花言葉を持った八重桜に感謝の意を込めて「Nem’oubliez pas(私を忘れないで)」と下手くそな文字でレタリングまで完成させた夜だった。

生まれ月に相応しいくらい美しいピ

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人を呪わば穴二つ

人を呪わば穴二つ

その昔、たった一度だけ、私は人を呪ったことがある。

悍ましい現実に耐えられず、骨の髄まで染みついたキリスト教の教えに苦しめられ、自我を保つために、愚かにも人を呪ったのだ。

呪詛。言霊。
それは、たまたまだったかもしれない。
自然の摂理であって、その人の運命だったのかもしれない。

それは誰にもわからないことだけれど、私は確かにそいつを呪った。

「あんなやつ、一生苦しみながら生きればいい。私の

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100年に1度の恋でさえ、何も救いやしない

100年に1度の恋でさえ、何も救いやしない

「どんなにこちらがお慕いしたって、どうにもならない事だし」って一節がやけにチクチクしちゃって。

柴犬の散歩してるわけじゃないんだからって、また笑ってよ。子供みたいなことするなって、怒ったふりが下手すぎて伝わらない優しい声で叱ってよ。

そしたら、きっとまた、無邪気なふりして馬鹿なことだってなんだってできるのに。

君のためならこの命を捧げることさえも厭わないのに。

そしたら、きっと今度は、優し

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フェアトレード

フェアトレード

私のような職種には、8時間勤務という概念が存在しない故、開店前に家を出て、閉店後に帰宅するというのが日々のルーティンなわけで。そういえば、大好きな珈琲すら淹れなくなった生活を送っていたなと我に返り、奇跡的に早上がりだったその日、本当に久しぶりにカルディへと足を運んだ。

1年以上同じマンションに住み続ける事ができないという特殊な病を患って以来、度重なる引っ越しを繰り返しているわけなのだが、最寄駅に

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拝啓、敬愛なるお姉さま、お兄様方へ

拝啓、敬愛なるお姉さま、お兄様方へ

強く明るく生きろと、お前はそういう生き物だろと願いを込めて同意を求める貴方達が嫌いです。

死んでも死にきれぬほど憎いです。
私をそうしてしまった貴方達が憎いです。

私を空っぽの器にして、売り飛ばしたくせに。
この口は、人生を囁くためだけに
心は、ハッピーエンドを送るためだけに
1人の生物である前に、私は器なのだと
そうやって育てたくせに。

女としての幸せとか、1人で生きる術だとか
急にわけわ

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もしも願いが叶うなら

もしも願いが叶うなら

息を吐くように、或いは、お腹が空いたと感じる時のように、極々自然に、いとも簡単に「死にたい」という4文字が、「死にたい」という想いが、浮かんでは消え、浮かんでは消え、波の花のようにフワフワと飛ばされていく。

死が身近にありすぎるせいなのか、特段病んでいるわけでもなく、何が辛いとか、何が嫌だとか、何があったとか、特別なキッカケや原因があるわけでもなく、本当に極々自然にそういった感情が浮かんでは消え

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世界はいつも希望で満ちていた

世界はいつも希望で満ちていた

三大欲求を満たすということが、自傷行為を、否、自殺行為を重ね失敗した時と同じくらい苦しくて恐ろしく後悔とも狂気とも畏れとも違う、とにかく、顔をグチャグチャにされ意思とは関係なく震え上がるほど苦痛なものだった時期がある。

毎日三度規則正しくやってくるその時間は、死なない程度に捕虜を弄ぶ敵陣の軍隊のように冷酷で、今考えると実に愚かな行いそのものだった。

食べたくないのに食べなくてはいけない、食べな

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アダムとイブ

アダムとイブ

「明日、一緒に死なないか」

自力じゃ真っ直ぐ歩くことも出来ないだらしの無い男が急に立ち止まり、真面目な顔をして呟いた。

「どうやって?」
「真っ白い服を着て、海を見ながらさ。」
「朝がいいわ。陽に包まれながら、穏やかに逝くのはどう?」
「悪くない。悪くないよ、君にしては」

泥酔した2人はどこまでもチンケな会話を繰り広げる。

燻らせた煙草の煙を追いながら、女は男の身体に巻き付いた。

「ねぇ

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だから私はライブをやらない

だから私はライブをやらない

「飲みに行こうよ」
「今は無理かな」
「コロナ、真に受けちゃってる感じ?」
「真に受けるって何?」

切っ掛けは些細な一言だった。
これが、音楽を生業として、人前に立つことで金銭を授受している一部の人間の発言だ。

ここで重要なのは、金銭を授受し、自分達の音楽を発信している人間が、「真に受ける」という発言をした。それが1人や2人じゃないということだ。

「会いたいね」
「落ち着いたらご飯食べに行こ

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生きてるって感じたい

生きてるって感じたい

あれもこれもそれも全部、私ではない誰かに向けたものという事実が虚しさを倍増させる。

太陽は眩しすぎて気が滅入るし、どこまでも続く空はとても窮屈だ。

鳥達の囀りは、何処へも飛んでいけない私を嘲笑うかのように聞こえる。

貴方には、伝わるかしら。鮮やかな世界に取り残されたモノクロームの傷痕と痛みが。

枯れたいのに枯れることを許されないプリザーブドフラワー。日向なんて好きじゃないのに、盆栽の見栄え

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悲しい結末

悲しい結末

「友達でしょ」

「友達だよ」

それが私たちの合言葉だった。
病める時も健やかなる時も、私たちを縛る魔法の言葉は「友達」だった。

眠れない夜はいつも隣に君がいた。
1日の3/4を君と共に過ごし、2食を共にし、歯磨きや排泄の音さえも共有した。

「ダメだよ、2人きりは。」
「どうして?やましい事は何もないのに」
「だからだよ、タチが悪い」
「何も起きないのに?」
「何かが起きた方が気が楽でしょう

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グルナディンソーダ

グルナディンソーダ

全国に1万2200人程しかいない苗字を持つ友人を私は1人持っていて、さらに、その稀な苗字をもつ1人が都内に生息する事を偶然にも知ってしまった1日があった。

その漢字を見た瞬間、私は甘酸っぱい思い出で胸がざわつき、いてもたってもいられなくなり、とても不快な気分に陥ったのだ。

「ねぇ、予備校帰りに遠出して、よく2人で歩いた川を覚えてる?」

「豊平川」

「昼間は汚いだけのあの川、夜になるとなんだ

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それでも

それでも

「いつもありがとうねぇ」

酸素を送るチューブを鼻につけた、おばあちゃんが優しく笑う。

「いつもありがとうねぇ。
今日はすこし具合がねぇ。
ご飯もあまり食べられなくて。
まぁでも幾分元気です。」

急に薬の量が減った。弱々しい声に心が痛む。

「本日体調崩され投薬中止、
これから入院されます」

知らない男の人の声がした。

「もうそろそろかもしれないですねえ」

他人事のように呟く上司。

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優しい振りした悪魔

優しい振りした悪魔

「ねぇ、怖くて眠れない。変な人がピンポンしてきたの。今、23時半だよ。18時にも来てた。こんなことある?」

「今バイト。終電で行く。」

人はこの奇妙な関係性のことをなんと言うのだろう。私とあなたを繋ぐ糸は、つまらない研究、ただひとつだけ。

額がひっつきそうな距離にいても、接吻どころか抱擁もない。

小さな子供をあやすように、私の話をひとつずつ噛み砕いて飲み込んで、そっと、ただそっとそばにいて

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