時よ戻れ、黄身が口惜しい

卵を割るのをミスった。
寝ぼけ眼で冷蔵庫から卵を出して、シンクの角でヒビを入れる。そこまでは良かった。

何を思ったか、卵の中身を、お椀ではなくて、三角コーナーにインしてしまったのだ。
嘘でしょ。最後の一個だったのに。卵、高いのに。

マジかぁ、アホすぎるにもほどがある。
残念だけど、今日のお弁当は、卵焼きなしだ。
あーあ、マジで時間戻ってくんねーかな。
まあ、仕方ない。早く弁当作らないと、間に合わない。もう、7時のチャイムが鳴っている。

ほうれん草でも茹でようかと、冷蔵庫をあける。
あれ、卵あるじゃん。さっき、最後の一個使ったはずなんだけど。

寝ぼけて見落としたのかな、と思っていると、7時のチャイムの音が聞こえた。

わあ、なんかすげーイヤな予感がする。
もしかして、今年の分のタイムリープ、使っちゃったかんじ？まだ二月なんだけど。

確かに、時間戻んねーかなって思ったけど、違うじゃん。貴重なタイムリープ、もっと大事な時に使いたいじゃん。絶対今じゃないでしょ。

あー、まあしょうがねえな。
早く弁当作らないと遅刻しちゃうし。
今度は、卵、失敗しないようにしないとな。
二度目はないからね。

久しぶりのショートショートでした。
お題「世界一ショボいタイムスリップ」

このお話はフィクションですが、卵を三角コーナーにインしたことだけは実話です。
むしろ、全部ウソであってほしかったです。