
健康診断の再検査は受けよう(条件付き確率の話)
確率は単純なものは単純でいいですよね
例えば
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全体Uの中から無作為に1個選んだときそれがCである確率は?
CというのはAとBの共通部分なので $${\mathrm{A\cap B}}$$ と表します
ものを1つ選ぶのは差がない(同様に確からしい)ので $${\mathrm{A\cap B}}$$ である確率$${\mathrm{P(A\cap B)}}$$は
$${\displaystyle \mathrm{P(A\cap B)}=\frac{n(\mathrm{A\cap B})}{n(\mathrm{U})}=\frac{4}{50}=\frac{2}{25}}$$
$${{}^※\mathrm{P(A\cap B)\cdots A\cap B が起こる確率 n(A\cap B)\cdots A\cap B の要素の個数}}$$
ところで、1回目引いてAだと確認してから元に戻し、2回目を引いたときそれがCである確率は?

1回目Aを引いたという条件の元で、2回目Cになるということは、2回目Bを引くという条件付き確率になります
1回目Aを引いたときの2回目Bをひく条件付き確率といい、これを$${\mathbf{P_A(B)}}$$と表します
Aの中でのCの割合(CのエリアしかBがない)ということなので、
$${\displaystyle \mathrm{P_A(B)}=\frac{n(\mathrm{C})}{n(\mathrm{A})}=\frac{n(\mathrm{A\cap B})}{n(\mathrm{A})}=\frac{4}{20}=\frac{1}{5}}$$
★よくある不良品の出所の問題
問題1 ある製品を製造する工場が工場A、工場Bがあって、
生産のペースは$${3:1}$$です
また、不良品が出る確率は工場Aでは0.1%、Bでは0.2%です
この商品の中からランダムに1個選んだとき、それが不良品であるという
事象をEとします
事象Eが起こった製品が工場Aのものである確率を求めなさい
(解答を折りたためないので5行ほど空白を空けています)
解答 今までのことから推測すると「不良品Eの中での工場Aの割合」ですね
つまり、$${\mathrm{P_E(A)}}$$ を求めるわけですが、これには重要
な公式があります(今まで使ってきた内容をまとめたものです)
$${\large\displaystyle \mathbf{P_E(A)=\frac{P(E\cap A)}{P(E)}}}$$
あるいは分母をはらって
$${\large\mathbf{P(E\cap A)=P(E)P_E(A)}}$$
さて、$${\mathrm{P(E)}}$$ を求める訳ですが、不良品には工場Aと工場Bの2つから
出てますから
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$${\mathrm{P(E) = P(A \cap E)+P(B \cap E)}}$$
$${\therefore \mathrm{P(E)= P(A)P_A(E)+P(B)P_B(E) }}$$
で、$${\mathrm{ P(A)}}$$……製品を1つ選んだときそれが工場Aのものである確率
$${\mathrm{P_A(E)}}$$……選んだ製品が工場Aのときそれが不良品である確率
ですから
$${\displaystyle \mathrm{P(E)=\frac{3}{4}\times \frac{1}{1000}+\frac{1}{4}\times \frac{2}{1000}=\frac{1}{800}}}$$
よって
$${\displaystyle \mathrm{P_E(A)=\frac{P(E\cap A)}{P(E)}={\frac{\displaystyle\frac{3}{4000}}{\displaystyle\frac{1}{800}}}=\frac{3}{5}}}$$
工場Aが工場Bの3倍つくっていると、不良品率が半分でも製品全体の
不良品から見るとその内訳は6割にも上がってしまうんですね!?
★嘘つきさんから正しさを推測するという確率
問題2 A、B、Cの3人がいてそれぞれ正しいことをいう確率が $${\displaystyle \frac{6}{7},\ \frac{2}{5},\ \frac{5}{6}}$$ です
それ以外は嘘をつかねばなりません
正しいことをいうかどうかはくじを引いて決めます
このとき次の各問いに答えなさい
(1) 振られた1個のサイコロについて「1の目が出たこと」を尋ねたとこ
ろ、Aは「はい」、Bは「いいえ」と答えました
実際に1の目が出た確率を求めなさい
(2) 振られた1個のサイコロについて「1の目が出たこと」を尋ねたとこ
ろ、AとBは「はい」、Cは「いいえ」と答えました
実際に1の目が出た確率を求めなさい
(解答を折りたためないので5行ほど空白を空けています)
解答 (1) Aが「はい」、Bが「いいえ」と答えるのは次の2通りがあります
[1] サイコロの目が1でAが「はい」、Bが「いいえ」と答える
その確率は $${\displaystyle\frac{1}{6}\times \frac{6}{7}\times \left( 1- \frac{2}{5}\right)}$$
[2] サイコロの目が1以外でAが「はい」、Bが「いいえ」と答える
その確率は $${\displaystyle \frac{5}{6}\times \left( 1-\frac{6}{7} \right)\times\frac{2}{5}}$$
これらは同時には起こりません(排反といいます)
これら全体が起こることをS、[1]が起こることをTとすると
求める確率は $${\mathrm{P_S(T)}}$$ で
$${\begin{matrix} \mathrm{P_S(T)} &=& \displaystyle \mathrm{\frac{P(S \cap T)}{P(S)}}\\ {}{}{}\\ {}&=& {\displaystyle \frac{\displaystyle\frac{1}{6}\times \frac{6}{7}\times \left( 1- \frac{2}{5}\right)}{\displaystyle\frac{1}{6}\times \frac{6}{7}\times \left( 1-\frac{2}{5} \right)+\frac{5}{6}\times \left( 1-\frac{6}{7} \right)\times\frac{2}{5}}} \\ {}{}{}\\ {}&=& {\displaystyle \frac{9}{14}} \\ \end{matrix}}$$
(2) (1)と同じように考えます
A、Bが「はい」、Cが「いいえ」と答えるのは次の2通りがあります
[1] サイコロの目が1でA、Bが「はい」、Cが「いいえ」と答える
[2] サイコロの目が1以外でA、Bが「はい」、Cが「いいえ」と
答える
これらは排反です
これら全体が起こることをU、[1]が起こることをVとすると
求める確率は $${\mathrm{P_U(V)}}$$ で
$${\begin{matrix} \mathrm{P_U(V)} &=& \displaystyle \mathrm{\frac{P(U \cap V)}{P(U)}}\\ {}{}{}\\ {}&=& {\displaystyle \frac{\displaystyle\frac{1}{6}\times \frac{6}{7}\times \frac{2}{5} \times\left( 1- \frac{5}{6}\right)}{\displaystyle\frac{1}{6}\times \frac{6}{7}\times \frac{2}{5}\times\left( 1-\frac{5}{6} \right)+\frac{5}{6}\times \left( 1-\frac{6}{7} \right)\times\left(1- \frac{2}{5} \right)\times\frac{5}{6}}} \\ {}{}{}\\ {}&=& {\displaystyle \frac{4}{9}} \\ \end{matrix}}$$
★病気の検査の話(再検査の重要性について)
問題3 ある病気には15%の確率でかかってしまいます
そして、その検査では90%の確率で正しく判断をします
(つまり10%は間違ってしまいます)
(1) Aさんがこの検査を受けたとき、陽性とでました
このときAさんがこの病気にかかっている確率をもとめなさい
(2) Aさんが別日の再検査会場で再検査を受けたときやはり陽性と
でました
このときAさんがこの病気にかかっている確率を求めなさい
(解答を折りたためないので5行ほど空白を空けています)
解答 (1) Aさんは病気か健康か、検査は陽性か陰性かとします
このとき求めたい確率は $${\mathrm{P_陽(病)}}$$ です
$${\begin{matrix} \mathrm{P_陽(病)} &=& \displaystyle \mathrm{\frac{P(陽 \cap 病)}{P(陽)}}\\ {}{}{}\\ {}&=& \displaystyle \mathrm{\frac{P(陽 \cap 病)}{P(病 \cap 陽) + P(健 \cap 陽)}}\\ {}{}{}\\ {}&=& \displaystyle \mathrm{\frac{P(病)P_病(陽)}{P(病)P_病(陽) +P(健)P_健(陽)}}\\ {}{}{}\\ {}&=& {\displaystyle \frac{0.15\times 0.9}{0.15\times 0.9 + 0.85 \times 0.1}} \\ {}{}{}\\ {}&=& {\displaystyle \frac{27}{44}} \\ {}{}{}\\{}&\fallingdotseq& 0.6136 \cdots \end{matrix}}$$
(2) (1)と同じようにして、ただし$${\displaystyle \mathrm{P(病)=\frac{27}{44}}}$$ を適用すると
$${\begin{matrix} \mathrm{P_陽(病)} &=& {\displaystyle \frac{\displaystyle\frac{27}{44}\times 0.9}{\displaystyle\frac{27}{44}\times 0.9 + \frac{17}{44} \times 0.1}} \\ {}{}{}\\ {}&=& {\displaystyle \frac{243}{260}}\\{}{}{}\\{}&\fallingdotseq& 0.9346 \cdots \\ \end{matrix}}$$
ということで1回目検査を受けて陽性だからといっても本当に病気である確率は6割程度……健康であるのが4割近くあったりします
つまり「まあ病気かも?」くらいの感覚なんですね
再検査をきちんと受けることということは精度が上がるということです(病気であるという事実は辛いですが……)
また、再検査で陰性が出るのは
$${\displaystyle \frac{17}{260}\fallingdotseq 0.0653 \cdots}$$
なので、1回目で「再検査」といわれても、2回目で陰性が出ると数値的にも安心ですね
ということで、「再検査」がでたら可能な限り受診した方が良いようですね