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マルコフのディオファントス方程式の興味深さ

『マルコフのディオファントス方程式』という不定方程式
 $${x^2+y^2+z^2=3xyz}$$
というものがあります

ディオファントス方程式とは

ディオファントス方程式とは整数の係数で多変数の方程式のうち解が整数(または自然数)になるものをいいます
高校1年で習う1次不定方程式「$${23x+73y=1}$$ の整数解を求めよ」はユークリッドの互除法で解きますね
また、 $${x^2-61y^2=1}$$ のような形の方程式は『ペル方程式』と呼ばれていて、最小の自然数解は $${x=1766319049,\ y=226153980}$$ というとても大きな数です
さらには『アルキメデスの牛の問題』というものがあって、
牛の最小頭数は20万桁の数(20万頭ではない)なんて問題もあります

『マルコフのディオファントス方程式』の解法

さて、$${x^2+y^2+z^2=3xyz}$$ の自然数解ですが、パッとみて
$${(x,\ y,\ z)=(1,\ 1,\ 1)}$$ が分かります
ここから他の解が順に求まる手順が面白いのです

仮に $${1^2+1^2+z^2=3\cdot 1\cdot 1\cdot z}$$ とすると
 $${z^2-3z+2=0}$$
 $${z=1,\ 2}$$
$${z=1}$$ はすでに求まっているから、新しい解は $${z=2}$$
よって $${(1,\ 1,\ 1)-(1,\ 1,\ 2)}$$

次に $${1^2+y^2+2^2=3\cdot 1 \cdot y \cdot 2}$$ とすると
 $${y^2-6y+5=0}$$
 $${y=1,\ 5}$$
$${y=1}$$ はすでに求まっているから、新しい解は$${y=5}$$
よって $${(1,\ 1,\ 1)-(1,\ 1,\ 2)-(1,\ 5,\ 2)}$$

この次は、
 $${x^2+5^2+2^2=3\cdot x \cdot 5\cdot 2}$$……①
 $${1^2+5^2+z^2=3\cdot 1 \cdot 5\cdot z}$$……②
の2つの方程式が考えられます
①からは $${x=1,\ 29}$$、②からは $${z=2,\ 13}$$ が求まりますから
 $${(1,\ 1,\ 1)-(1,\ 1,\ 2)-(1,\ 5,\ 2)-(29,\ 5,\ 2)}$$
                $${\ {}-(1,\ 5,\ 13)}$$
これ以上の解はみなさんにお任せするとして、3つのうち1つを文字にして2次方程式を解くと新しい解が得られます
このように連鎖的に求めていくという変わった方程式なのです
また、続きの解を求めてみると全て正の整数解になっています

『マルコフのディオファントス方程式』の解の性質

さらに、別の性質として、$${F_m}$$をフィボナッチ数とすると $${(\ 1,\ F_{2n-1},\ F_{2n+1}\ )}$$ となっています
ここでいう、フィボナッチ数とは$${1,\ 1,\ 2,\ 3,\ 5,\ 8,\ 13,\ \cdots}$$ という数列で表される数のことです
実際解との関係は $${(1,\ ①,\ ②)-(1,\ ⑤,\ ②)-(1,\ ⑤,\ ⑬)-{}}$$ となっています
フィボナッチ数の作り方は、ある項はその前の項ともう1つ前の項の和でできている数列です
つまり $${F_m=F_{m-1}+F_{m-2}}$$ です
こんなところにフィボナッチ数が現れるのも興味深いところです
($${(\ 1,\ F_{2n-1},\ F_{2n+1}\ )}$$ の証明は一番下にあります)

また解決できていないものとして $${a < b < c}$$ として $${(a,\ b,\ c)}$$ を解としたとき $${c}$$ が決まるとそれに対する解が一意に決まるという予想があります
また、解 $${(a,\ b,\ c)}$$ は一カ所からしか出現しないという予想もあります



ディオファントス方程式には解けるタイプもあれば解けないタイプもあってなかなか奥が深い分野です
みなさんも挑戦してみては如何でしょう

例えば、楕円曲線 $${y^2 = f(x)}$$ (ただし $${f(x)}$$ は重根をもたない、3次または4次の多項式)というものがあります
これは、整数解は有限個しか存在せず、原理的には全ての整数解を求めることが可能なことが分かっています
$${y^2=x^3+ax+b}$$ という楕円曲線は暗号理論に応用されています


【証明】
 $${x^2+y^2+z^2=3xyz}$$ において $${x=1,\ y=F_{2n-1}}$$ とすると
  $${1+{F_{2n-1}}^2+z^2=3F_{2n-1}\cdot z}$$
  $${{F_{2n-1}}^2+z^2-3F_{2n-1}\cdot z=-1}$$……③

 $${F_{m-1}F_{m+1}-{F_m}^2=(-1)^m}$$ の関係式より(※証明は数学的帰納法による)
  $${F_{2n-1}F_{2n+1}-{F_{2n}}^2=1}$$
  $${{F_{2n}}^2=F_{2n-1}F_{2n+1}-1}$$……④

 $${F_{2n+1}=F_{2n}+F_{2n-1}}$$ より
  $${F_{2n+1}-F_{2n-1}=F_{2n}}$$
  $${\left(F_{2n+1}-F_{2n-1}\right)^2={F_{2n}}^2}$$
  $${{F_{2n+1}}^2-2F_{2n+1}F_{2n-1}+{F_{2n-1}}^2={F_{2n}}^2}$$
 ④を代入して
  $${{F_{2n+1}}^2-3F_{2n+1}F_{2n-1}+{F_{2n-1}}^2=-1}$$……⑤
 ③-⑤ より
  $${z^2-{F_{2n+1}}^2-3F_{2n-1}(z-F_{2n+1})=0}$$
  $${(z-F_{2n+1})(z+F_{2n+1}-3F_{2n-1})=0}$$
 $${\therefore z=F_{2n+1},\ 3F_{2n-1}-F_{2n+1}}$$
 $${\therefore (1,\ F_{2n-1},\ F_{2n+1})}$$ は解である

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