子連れでスペイベに行ってみた話
「イコラブを見てみたい」
5歳になる息子がそう言ったのは、2023年の後半だったと記憶している。
イコラブというものを単なる曲ではなく人として認識し始めたことの証だろう。
我々大人のいう「見てみたい」=「会いたい」というニュアンスと彼のそれが同義なのかどうかは甚だ疑問ではあった(相互的な見方ではなく水族館のようなやや一方的なコミュニケーションを想定している可能性もある)が、会いたいというのであれば会わせてやらねばなるまい。その結果、別に・・・というリアクションだったとしても、それはそれで仕方ないじゃないか。
折しも、15枚目シングル「ラストノートしか知らない」がリリースされたばかりで、うまい具合に大阪で開催されるスペイベへの応募も受付されている期間である。
確認したところ、未就学児の名義で当選した場合は、保護者1名が必ず付き添う決まりとなっており、座席は1つしか用意されないものの膝上で一緒に観ることが可能なのだそう。ちなみに、意図的に連番にすることは企画の構造上不可能。
申し込んだ結果、無事に参加権利を獲得することができ、スペイべの行われる2月26日を待つばかりとなった。ところが開催日直前のタイミングで私がコロナに罹患してしまう。コロナと分かっていながら出社してきた考えの足らない上司がいたためだと考えられる。やりきれない気持ちを抱きながら、泣く泣く参加を断念。
息子は正確にスペイベの日程を把握していたわけではないが、「2月か3月ごろ」と伝えた当初の情報はしっかりと記憶しており、3月中頃になって
「なあ・・・イコラブ、まだ見に行かへんの?」
と風呂で体を洗ってやってるタイミングで言われ、心が痛んだ。
「ごめんな、この間のはあかんかった。次の『呪って呪って』のスペイベに行こう」
そう伝え、改めていそいそとシリアルを入力し、無事に当選。今度は5月26日。もうコロナにはなるまいと、しっかりと息子と約束を交わした。
ちなみにこのことはTwitterでも何度か書いたためか、しょこちゃん自身からも
「○○(息子の名前)、スペイベのこと覚えてるんでしょ?次はコロナにならないようにね!笑」
といじられる始末。これ以上の失態は父親の沽券に係わるため是が非でも避けねばならない笑
しかし、息子の思わぬ熱心さに負ける形でスペイベに連れて行く流れになってしまったが、日が近づくにつれ
「これ・・・連れてって大丈夫なのか?」
という不安も大きくなってきた。
まず、息子は怖がりである。特に大きな音が苦手で、ドライヤーで髪を乾かすときは常に耳を塞いでいるし、トイレのハンドドライヤーを見かけると一目散に逃げていく。スペイベは言うまでもなくライブなので爆音である。メンバーが見てる前で耳を両手で塞ぐようなことがあってはどうしようという危惧があった。
また、約1時間とはいえおとなしく最後まで見ていられるのかと言う問題もある。DVDであればテレビの電源を切って終わりだが、当然ながらスペイベだとそうはいかない。外に出ることも困難である(何よりも私が出たくない。いや出る訳にはいかない)
本人は「ぜったい大丈夫」と言っているが果たして・・・。
とにかく、周りはスペイベという機会を楽しみに生きてきてこの日を迎えた屈指のオタクたちなのである。そんな大切な日に泥を塗るようなことだけはないよう、最大限の配慮をせねばならない。言わずもがな、メンバーに失礼があってもいけない。
「子供だから仕方がない」のは仕方がないわけでは全然なく、全て親の責任なのである。
そんなことを考えていると、若干胃が痛み始めつつ、とうとう当日になった。
前もって収集していた情報から当日のセトリを想定し、車のオーディオで繰り返し再生しながら復習して会場へ向かう。
会場に着くと、ちょうど入場開始(開演1時間前)のタイミングであった。同じ公演が当たったFFの方に挨拶をする。息子は恥ずかしさでふにゃふにゃしている。その後しばらく行動を共にしつつ、いよいよ会場内へ。
そこで関東から来られたFFの方に会い、お土産を頂戴する。次々に現れる知り合いを前に、相変わらずふにゃふにゃした態度で締まりのない息子。挨拶の声も小さい。内弁慶ぶりが発揮されたが、ある意味オタクらしいとも言える。特に女性を前にすると顕著である。
14時30分、開演。影ナレから開始までの数分間、
「もう待ちきれない!」
と落ち着かない様子。なんとかなだめている間に、お休みだった佐々木舞香ちゃんを除く9名のメンバーが登場し、「呪って呪って」のイントロが流れ出した。
「呪って呪ってや!!!」とはしゃぎながら、ペンライトを出鱈目に振る息子。これはこれでいい。ちなみにペンライトは2本しか保有していないので、私と息子で1本ずつ(両方黄色)である。
3曲目が終わってMC。メンバーの受け答えを笑いながら聴いている。ここまでいい調子、完璧だ。
4曲目がWant you! Want you! この辺りから次第にペンライトを振る力が弱まってくる。飽きてきたのか・・・?
いや、違う。明らかに違いを感じたのは5曲目の24/7あたり。明らかに体温が高く、頭がやや汗ばんでいる。
これは・・・寝るやつだ!!
5歳児とはいえそれなりに大きくなってきた息子が膝の上でだらりと全体重をかけてくると相当しんどい。おい起きろ!こんな時だけ赤ちゃんになるな!!
がんばって彼の腕をもってペンライトを振るも、7曲目 君の第3ボタンまでは意識朦朧としていて、2度ほどペンライトを落とした。
その間、息子を支えつつも必死でライブを見ていたが、何人かのメンバーと目が合った。隅っこではあったもののE列だったのでステージまでの距離はそれなりに近いこともあり判別しやすかったのだ。
こちらは、事もあろうにスペイベ中に寝た子を抱えて申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらペンライトを振る有様であったが、特に髙松瞳ちゃんはめちゃくちゃ笑顔でこっちを何度も見てくれて(多分!)本当に心が救われる思いだった。他にも大谷映美里ちゃん、山本杏奈ちゃんも・・・。みんな優しい。このタイミングで寝ていた彼には一生後悔してもらいたい笑
8曲目、君と私の歌でようやくお目覚め。その次の探せダイヤモンドリリーは彼の大好きな曲の一つなので完全に復活して大喜び。最後は=LOVEで大満足の仕上がり。
最後の曲が終わって捌ける時、黄色いペンライトを振るこちらに向けて瀧脇笙古ちゃんが長めレスをくれたのが印象的。お父さんは大喜び。息子はポカンとしていた。もっと喜べよ。
ライブが終わって外に出ると、再びFFさんと落ち合って日本ダービー(競馬)を見ながら、お茶をしてくつろぐ。(お茶奢ってもらって本当にすみません。。。)
第二部のために来られた他のFFさんたちと合流し、色々と雑談している間も息子は恥ずかしいのか退屈なのかずっとふにゃふにゃしていていたたまれない気持ちになった。
しかしながらそんな中でも仲間たちが暖かく声をかけてくれたり、話しかけてくれたりして多くの仲間の優しさや、それに支えられていることを強く意識するスペイベとなった。
いちオタクとしてフラットな見方をした時、息子を連れて行っていいことなどほとんどないのである。一緒に趣味を楽しめる嬉しさはあるものの、自分自身が楽しめる余裕は6〜7割程度になるし、周りへの迷惑や子どもの体調も気にかけねばならない。
とはいえ、こうやって父親の趣味に付き合ってくれる時間なんてそれほど長くないのかもしれないと考えると、決して悪い時間ではないのだなと感じた。
そう…
「次、いつイコラブ行こうか?」
と帰り道に息子の口から聞くまでは……。
「ドライブデートも、青サブもなかったやん。ヒロインズも。いつ聞けるん?」
…………まあ、またそのうち連れてくるかもしれません。
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