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2023年11月 - 今月のスナップとエッセイ


時候の挨拶

 ふわふわする。酔っぱらってしまったようだ。飲みすぎた気もするし、あまり飲んでいない気もする。
 夜風が頬を撫でる。熱った身体に染み渡る。それにしても、今年は暖かい。11月末なのに、薄手のカーディガンで、ちょうどいい。

 空を見上げると、星が広がっていた。冬は空気が澄んでいる。そのおかげか、街明かりにも負けず、星たちはキラキラと輝いていた。
「あ、オリオン座だ」
 わたしは、天文学には全く詳しくない。唯一知っている星座が、オリオン座なほどである。空を眺めていると、幼き頃の記憶が蘇った。

 冬空に光るオリオン座。それを、実家のベランダから眺めていた。
 小学生のわたしは、布団の中で読書するのが好きだった。そのせいで急速に近視が進み、親にはひどく怒られた。母は「星でも眺めて、目を休めなさい」と言った。
 嫌々ながら、ベランダに出る。風が冷たい。冬の星空は、ぼんやりとしていた。「あれがオリオン座だよ」と母に言われるが、よく見えない。わたしは適当に頷いた。それより早く、部屋に戻りたかった。

 それからすぐ、わたしは眼鏡をかけることとなった。眼鏡を通して見た夜空には、星がくっきりと輝いていた。空には、こんなにたくさんの星があるのだと知った。
 オリオン座もしっかりと見えた。ああ、これが遠くがよく見えるということか。子どもながらに、感心したのを覚えている。
 その夜は、いつもより長く星を眺めていた。結局、オリオン座しかわからなかったけれど、初めてしっかり見た夜の空に、心を奪われた。
 何気ない日常の中にも、美しいものが隠れていると初めて感じた日だったのかもしれない。

 そんな思い出のオリオン座。あれから何度目の冬を迎えたのだろうか。酔った頭で考え、すぐにどうでもよくなった。そんなことより、今夜は星が綺麗だ。

繋がりを広げて

 就職とともに、この街へ引っ越してきた。はじめは、何もかもが真っ白だった。
 あれから数年。白紙だった人間関係に、多くの色がついた。誘い下手なわたしに声を掛けてくださる方がいる。本当に嬉しい。
 社会人で、新しく交友関係を築こうと思うとなかなか難しい。その中で得られたご縁は、今後も大切にしたい。

 今年の初夏、静岡の写真コミュニティ“Shizuoka ShutterBugs”の設立に携わった。今も運営として活動している。今月は、そのイベントに参加してきた。初めて会う方、顔馴染みの方。共通点はカメラ好き。皆、年齢も違い、様々な仕事をしている。話はいつも新鮮で面白い。

 同じ仕事をして、同じ空間に居続けると、思考は凝り固まって視野は狭くなっていきがちである。それは、致し方ない。しかし、このように外に目を向けると、世界は広いと気付かされる。

 初めて会った人と、写真を撮った。写真の話も、そうでない話もしながら、わいわいと盛り上がると、どこか学生時代に戻ったような気分になる。「自分ひとりで撮るより、誰か撮ってみたいと思っていたら、このコミュニティを見つけた」とメンバーの方が仰ってくださった。ありがたいお言葉だ。
 そのような場をこれからも作れるよう精進してまいりたい。

推しにあふれる幸せ

 夫が推しているものが、わたしの推しになった。それはTEAM NACS。森崎博之・安田顕・戸次重幸・大泉洋・音尾琢真の5人による、北海道発祥の日本の演劇ユニットである。
 長い間、夫が彼らを好きなのは知っていた。その影響で、わたしも彼らが出演する作品を見てきた。つまり、ひとりひとり俳優としての認識はあった。

 そしてこの度、ドハマリした。沼にハマった。
 そのきっかけが、この5人の冠番組『ハナタレナックス(北海道テレビ)』である。このバラエティ番組のDVDを、夫が大人買いしたのだ。
 これを見始めたら、面白すぎて止まらない。もうね、面白い。とにかくめちゃくちゃ笑う。笑いすぎて、息止まる。
 さらに、彼らの舞台作品もDVDで見た。更に面白い。舞台というものに、馴染みのないわたしだったが、一気に興味がわいた。そういうわけで、夕飯を食べながらTEAM NACSを見る日々を送っている。

 今月は、気を引き締めないといけない仕事がいくつかあった。少し気を抜いてしまうと、鬱の波が押し寄せてきて、この世への居心地が悪くなる。
 これを乗り越えられたのは、紛れもない“推し”の力であった。ヘロヘロで家に帰ってきても、爆笑できるものがある。笑うって大事だなあ、としみじみ感じた。

 さらに推しがもうひとつ。ミニカバの赤ちゃんに会いに行ってきた。場所は、大阪の万博公園内にあるミュージアム・ニフレル。赤ちゃんの名前は、ネムネム。
 先々月、わたしがSNSでミニカバの赤ちゃん情報を入手した。その話をすると、夫の目の色が変わった。彼は、カバが好きなのだ。

 ネムネムが赤ちゃんのうちに、会いたいよね?
 だったら行こうじゃないか!

 スケジュール調整を重ね、そして念願のニフレルへ。連休はとれそうになかったため、日帰りだ。朝9時には大阪に到着し、日が暮れるまでネムネムを見ていた。ミニカバは、カバの10分の1の大きさである。その赤ちゃん、現在30kg。つぶらな瞳、可愛い。無邪気に遊ぶ姿、可愛い。草を食べたくても上手に食べられない姿、可愛い。

 結論、可愛い。

 推しにあふれた楽しい1ヶ月であった。

PHOTOGRAPHY_202311

 腕の調子が少しずつ良くなっている。先日、ナナニッパを持って撮影できた。これには感動した。普段通り字も書けるし、箸も持てる。状態としては、常になんとなく痺れていて、なんとなく指先が動かない。しかし、このくらいならまあいいかと思える。カメラが使えるだけで、QOLは爆上がりなのだから。

 久しぶりに、雨の夜をスナップした。濡れた路面に光る街明かり。雨夜には趣がある。数年前は、雨の日を好んでよく撮っていた。
 今では仕事が忙しいとか何かと理由をつけて、あまり撮らなくなってしまった。それでも久しぶりに撮ると、わくわくする。

 自分の心が踊る撮影を覚えておきたい。それは風景だったり、ポートレートだったり、物撮りだったり、人それぞれだろう。わたしはそれがスナップなのだ。

 気がつけば、年末。
 気を抜かず、今年も走り切ろう。

 それでは、良い写真生活を。

過去の今月のスナップとエッセイ


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