Novelber 22nd—凍てつく歌

 生きとし生けるものみな眠りに就くこの長き夜。
 透けるかと見紛うほどの白馬が凍土に蒼き跡を残す。
 手綱を引く冬将軍。その姿は苛烈に麗しく。
 白銀の髪は靡き、追って鋭く霜は煌めく。
 真白の大地を見晴らし災厄を討つは彼女が業。
 清き芽吹きを、実りの土を、春姫君へ継がん為。

 戸を閉めよ、窓を鎖せ。 
 彷徨える「眠り損ない」は声を騙りて人を呼ばう。
 戸を閉めよ、窓を鎖せ。
 白き腕が氷柱もて「眠り損ない」を貫くまで。
 雪が全ての音を消すまで。

Novelber 22 お題「冬将軍」

※お題は綺想編纂館(朧)さま主催の「Novelber」によります。

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