Novelber 23rd—冬闇の供
底冷えの夜には訳もなく、土にぐずりつく早すぎる霙のような情けない涙を軋む心身が求める。
仰向いて沈んでいく胸元に組み合わせた手には甘く熱いアルコオル。
ある時は蜂蜜の融ける黄金のホットウヰスキー。
ある時は気紛れに直視しないままの調合によるグリューワイン。
ある時はホットミルクとマシュマロを加えた賢しらな顔のモーツァルト。
夜は更けていよいよ自分の淀みに酔い痴れても掌には熱が保たれなお強い酒精は嗚咽とともに脳を灼く。
揮発するαἰθήρ(アイテエル)が熱気球のように眼球を押し呼気と化して天へ昇る。
白い寝所に横臥わり綿布団を剥き出しの沈鬱に纏う。
体温が世界を巡るにつれて手足は滲み浮遊する。
現の外(ほか)の世界から身中へ熱を持ち帰れ。
Novelber 23 お題「温かい飲みもの」
※お題は綺想編纂館(朧)さま主催の「Novelber」によります。
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