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「希ガス」化合物 有用性は?

かつて「希ガス」と習った周期表の最も右に位置する第18族元素(ヘリウム、ネオン等)は現在、国際的な正式名にならって貴ガス(noble gas)と呼ばれるようになった。安定な電子配置をとるので、価電子の関与する化学結合をつくりにくく、通常の意味での化合物を生成するのは困難だった。


それはネオンより重い希ガスでは、外側に持つs殻とp殻がすでに電子で満たされているためだ。他の元素と化合物を作るためにはその状態から電子の与奪が必要になる。貴ガス元素へ高いイオン化エネルギーを加えるか、ゼロに近い電子親和力を働かせる必要があり、反応性は予期されていなかった。

しかし1962年、強い酸化剤である六フッ化白金(PtF6)が酸素分子 O2 をジオキシゲニル(O2+、両方の酸素原子の酸化数が+1/2)に酸化することを発見。O2のイオン化エネルギーはキセノンXeを陽イオン(Xe+)へ酸化エネルギーに近い。そこでXeとPtF6の反応を試みたところ、結晶状の生成物が得られた。これが世界初の貴ガス化合物「ヘキサフルオロ白金酸キセノン Xe+[PtF6]-」である。

貴ガス化合物の利用法は酸化剤が多い。たとえばキセノン酸(H2XeO4)は反応後にキセノンが気体として遊離するのみで、不純物が混入することのない有用な酸化剤だ。過キセノン酸(XeO2(OH)4)はさらに強力な酸化剤であり、フッ化キセノン類は優れたフッ素化剤としてつかわれる。

キセノンの短寿命のエキシマー Xe2* や貴ガスのハロゲン化物(XeCl2 など)はエキシマレーザー(Excimer Laser)で利用される。「エキシマレーザー」とは貴ガスやハロゲンなどの混合ガスを用いてレーザー光を発生させる装置で、レーシックなどの視力矯正手術においても使われる。

代表的なエキシマレーザーの発振波長
ArF - 193 nm
KrF - 248 nm
XeCl - 308 nm
XeF - 351 nm

工業用の用途としては機械加工や半導体製造におけるフォトリソグラフィ(感光性の物質を塗布した物質の表面をパターン状に露光)がある。また薄膜作製方法のひとつであるPLD法(Pulsed Laser Deposition、物理気相蒸着法)にも一般的に用いられている。 レーザーを1秒間に数回ターゲットに打ち付けて物質を蒸発させて基板まで飛ばし、堆積させる薄膜成型法だ。

いずれもこうした先端技術に使われており、日本の技術力でもある。視力矯正手術(屈折矯正手術)でエキシマレーザー光が使われるのは、波長が短いため角膜の一部分を必要なだけ正確に除去することが可能だからだ。レーザーといっても熱を発するものではなく、衝撃波がないため熱に弱い角膜組織に悪影響を与えることがない。視力回復も早いという特徴がある。


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