こわれた星
ある日、地面がまっぷたつに割れた。
あまりに突然の出来事だった。
のぞくと、空が見えた。
星がまっぷたつに割れた。
人々は騒然、途方にくれて。
研究者達は日夜頭を抱えた。
ぼくの頭に浮かんだのは
向こう側にいる、かけがえのない人。
もう会えない?
そんなことないよと、何度言い聞かせても。
きっともう会えない。
ぼくの頭はかなしみでうもれた。
ある日、若者が飛行機にのりこんだ。
恐れ悲しむ人々の懸け橋になろうと、飛び立った。
後少しでたどり着くとこだった。確かに見えた。
手を振った。声をあげた。涙を流した。
なのに。
飛行機は突然消えたんだ。
なんの前触れもなく無になった。
なんで。なんでなんで。あの若者は。
ぼくのかけがえのない人。
ああかなしい。かなしい。
もう何もない。
人々は口々にぼくを励ました。
あなたの勇気ある行動を賞賛した。
とても立派な人間だと。
それがなんだ。関係ないよ。
もう会えないんだ。もういない。いないんだ。
声を聞くことも叶わなくなった。
会いたい。
声が聞きたい。手を繋ぎたい。抱きしめたい。
いつだって、大事なことは何ひとつ。
何ひとつ残さず伝えてくれた。
でもね。足りないんだ。
まだまだ足りない。一生かけても足りない。
毎日大好きだって伝えたよ。
でもね。でもね。
それでも悔いが残らないわけない。
悲しくないわけないんだ。
ああ。涙もカラカラになって。ああいやだ。もういやだ。
これは夢だよって誰か言って。
もう直ぐ覚めるよって誰か言って。
ぼくがいるよってあなたが言って。
いっしょにいるよってあなたが言って。
笑っていてって、待っていてって、
死んでなんかいないって、あなたが言って。
あなたの声で聞かせて。
お願いだよ。
星といっしょにこわれそうだ。
ある日、地球がひとつになった。
あまりに突然の出来事だった。
人々は喜び、抱きしめあった。
ぼくはひとりこわれたまま。
かけがえのない人は英雄になった。人々があなたを知っていた。
かけがえのない人は伝説になった。人々はあなたを知っていた。
けれどもうただの空想のよう。物語の中の人物のよう。
それがなんだ。関係ないよ。
あなたは今もぼくの愛する人。確かにいたんだ。
その笑顔もぬくもりも、忘れやしない。
いつか会える?いつか会える?
誰ももうそんなことで悲しんではない。
今すぐ会いたい。今すぐ会いたい。
ぼくのカラカラのほほに、また涙が伝う。