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いきもの日記①



先月くらいの話だけれど、近所のスーパーで縁日が行われるという事で、その日は保育園へいつもより早めの時間(といっても17時過ぎくらい)に子どもをお迎えに行った。
ポケットの中には前日に崩した100円玉をギッシリ詰めて2人して軽い足取りでスーパーに向かったのだが、出店は殆ど撤退した後だった。
いつも会話するスーパーの店員さんに聞くと、15時には殆どの出店が片付け始めていたらしい。
コミケ並みの撤収力だな。なんて笑えもしない冗談が一瞬頭を過ぎるが、隣で泣きそうになってる子どもを見て我に返った。まずいぞ。お願いだから何かひとつくらい残っててくれ。なんて祈る気持ちで歩いていると、視界の端に水色の物体を捉えた。遠目ではあるが、平たい水槽のようなものと赤いのぼり旗─間違いない、あれはまさしく、
「金魚すくいだ!」
「え!」
私の言葉に子どもの顔がパッと明るくなった。そして水槽を見つけるや否や、私の手を引っ張る勢いで走り出した。間違いなく、その日一番のテンションだったと思う。

水槽の前に着くと、真っ黒に日焼けしたおじさんが小さな折り畳みチェアに腰掛けて金魚を眺めていた。その横には空の小瓶が並んでいる。小瓶…?と、私が首を傾げていると、おじさんと目が合った。
「無料であげるよ」
そう言うなり次々と網で金魚を掬いあげると、小瓶につめて渡してきた。どうやら水槽の前を通りかかる人に金魚の入った瓶を無料で配っているらしい。おじさんの顔にはうっすらと疲労の色が見えた。

結局、1円も払わずに縁日が終わった。
子どもは8匹ほどの金魚が入った小瓶を両手でしっかりと握ったままスーパーを後にした。
その横顔は、なんだか少し寂しそうだった。


そして最近、その金魚が立て続けに3匹亡くなった。
クーラーを冷房ではなく誤って送風に切り替えて仕事に出てしまった為、室内温度が上がって弱らせてしまったようだ。水面にぷかーっと浮かび上がった金魚の姿を見てかなり凹んだ。
以降、絶えず冷房をかけ続けている。
おそらく電気代が跳ね上がりそうだが、生き物を飼う以上は仕方がない。
それよりも、1日でも長く生きてくれる事を祈る。



カブトムシの成虫も、金魚とほぼ同じタイミングで亡くなった。
アパートの下の階に住む小学生のお兄ちゃんから「増えすぎたから貰ってほしい」と頼まれてオスメスを1匹ずつ貰ったのだ。

最初は同じケースに入れていたが、夜中になると喧嘩し始める事に気が付いた。どうやらオスがメスをいじめているらしい。ご飯を食べさせないとか、威嚇して追い回したりだとか。なので急遽ケースを分けた。
それでもメスは日に日に弱っていって、ある日土の中から半分顔を出したまま亡くなってしまった。
それから数週間経った先日、オスも同じように息を引き取った。

近所の公園にカブトムシだけ埋葬して、マットとケースはそのままにしていたら、なんと中からカブトムシの幼虫が出てきた。
まさか幼虫が産まれてるとは思わなかったので、急いでマットを幼虫用に作り替える。入れ替えながら幼虫をマジマジと観察したが、白くてブヨブヨしていて見た目は完全にデカい白子のようである。
あと、土の中に穴を掘って眠る幼虫の姿とエコーに写る赤ん坊の姿は少し似てる気がする。
こちらも元気に育ってほしいものである。

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