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ついに来たで!はじめての大阪(前編)
「推しと同じ世界を見てみたい」
私も、数年前からそう思ってた。
そこに行けば、眼の中に同じ景色が映る。同じ空気が吸える。
私の中に推しの「一部」が取り込まれるような。
そのチャンスが2023年の夏にやってきた。
もう、これは土日で行くしかない!と欲望が私を突き動かした。
行く日を決めると、さっそく新幹線と宿泊先を予約した。
大阪はUSJ(ユニバーサルスタジオ・ジャパン®︎、関西版通称「ユニバ」)ができてから「いつか行くな〜」と想像してたけど、20年以上も行く勇気が出なかった。
それはなぜかって?
私の大阪のイメージはテレビで見るまんまだったから。
通天閣。
ヒョウ柄。
道頓堀の小汚さ。
笑いにうるさい。
商売上手。
中之島・堂島ロールケーキ。
551の豚まん。
…と、思いつくイメージは尽きない。
でも、そんなイメージも覆してくれるほど「推し」に近づきたいのかもしれない。
今回の旅に「刺さった」本が宇佐見りん著『推し、燃ゆ』。
これも、2021年「第164回芥川龍之介賞」を受賞してずっと気になってた。
新幹線の中で読もうと図書館で予約して鞄に詰めた。
5時起床。仕事の時より早い。
東京駅から博多行きの新幹線に乗ったら、ずっと「宇佐見りんワールド」に入り浸った。
大阪来たら一度は食べてみて!
大阪名物の一つ、肉吸い。
これを知ったのも「推し」のおかげだ。
この店に行ったことがあるかどうかは分からないけど、大阪にいた時よく食べてたらしい。その番組が放送されて以来、私の「大阪行ったら食べたいものリスト」に入った。
高級な食材や雰囲気のあるレストランではなく、庶民的で人情ある食堂というのがまたいい。
11時過ぎにお店に着いた。店の前はすでに10人以上が並んでた。
さすが土曜日。行く前から覚悟をしてたが、行列を目の前にすると萎えそうだった。でも、これを食べるために大阪に来たのだから並ばない理由はないと家族連れの後ろに並んだ。
暑かった。
一人だから、コンビニに涼みに行ったりトイレに行ったり途中で離脱することは許されない。これは一人旅の宿命と呼ぶべきであろう。お店の中に呼ばれるまで、ひたすら耐えなければならない。数人先にいる、メガネをかけた、30代と思われる男性一人も。
私の前の家族連れ5人がお店に入ったところで、5〜10分待った。
そして、高齢の女性店員に呼ばれ中に入った。
引き扉を閉めると、私は券売機の前でどれにしようか戸惑いつつ、始めから頭の中で考えていた「肉吸い」と「小ライス」のボタンを押した。すでに4人席にお茶の入ったコップが1つ置かれ、丸い腰掛け椅子に座った。
半券を手渡して2〜3分後に、私の後ろに並んでいた30代の夫婦が目の前に座った。いわゆる相席だ。混んでいる時間帯に一人で行動する人はありがちなパターンだ。外で並んでいた時から、後ろの夫婦の会話を丸聞こえだったから、気まずい。私は、お茶を飲んだり、割り箸を用意したり、先に来た漬物を摘んだり、必死に目の前にいる夫婦の会話を聞いていない素振りをした。
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気を紛らしているうちに、肉吸いと白米が運ばれてきた。
夫婦の視線が気になりつつ、写真を一枚パシャリ。あとは肉吸いを全集中で食べた。出汁の味を楽しみながら、この場から早く逃れたいと汁をすすっていた。
「ごちそうさまでしたー」と先に席を立ったのは目の前にいる夫婦だった。食べ終わるや否や、大きなボストンバッグと一緒にお店を去った。私の気持ちは少し解放された。視線や会話を気にすることなく食事ができる。ちゃんと旨みを噛み締めたのはこの時からだった。
肉吸いの汁とお茶を飲み干すと、私は並んでいる人に申し訳ないと思いお店をさっと出た。「ごちそうさま」の掛け声と居座らないマナーはスマートなビジネスマンの作法だと食堂で実践している。
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お腹もTo-Doリストも満たされた状態で本日の宿へ向かった。
オモロ心地良い!新しい宿泊体験
JR大和線の難波駅から乗って新今宮駅で降りた。
路面電車の踏切を渡って、道なりに進んだ。
行けども行けども、案内看板も矢印も見えてこない。
左手側にあるから左に曲がれば着くだろうと、見当もなく、路地に入った。
ひと気もない道だから人に道も聞けずに歩いていると、長い塀が見えてきた。
おお、これかも。勘が当たった。だけど駐車場から入っていいものだろうか?
とにかく、車の出入りに気をつけて足を踏み入れた。
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壁に「OMO7」のロゴを見つけたが、ひと気が少なくほんとに入っていいものなのか確信が持てなかった。エスカレーターで上がり、スーツケースを引っ張った女性2〜3人が出てきた方向に歩いた。黒と白の模様が描かれたトンネルを抜けるとホテルのロビーだった。
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チェックインの15時まで30分以上もあった。
床から天井まである窓ガラスからフロア全体に明るい光が差してている。周りを見渡して一人掛けソファに座った。何もしないでいると勿体無いので本の続きを読んだ。
レセプション前に置かれた6台のタブレットはホテルスタッフの合図と操作がなければ、ロックされているのだと、手続きをして気づいた。うまくできている。
館内着の浴衣と歯ブラシなど必要なアメニティを取って部屋に上がった。
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事前にホームページで部屋の間取りを確認するが、それでもドアを開けるまでそわそわする。
今日の部屋はどんな景色が見れるのだろうと廊下を進んだ。
レシートに書かれた部屋番号の前でカードキーをかざして入った。
カラフルでかわいい。
ホームページで見たまんまだった。
おっと。危うく土足のまま上がりそうだった。
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そう、ここは「星野リゾート」だってことを忘れちゃいけない。2週間前にテレビで「リゾナーレ八ヶ岳」を観たおかげだ。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのトワイライトチケットの入園時間も過ぎたが、設備をあちこちチェックせずにはいられなかった。
まずお風呂とトイレ。
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続いて、洗面台のスペースへ。
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そしてお部屋のメイン、ベッド&ソファ。
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最上階の部屋下の眺めはこんな感じ。マンションやビルが立ち並ぶ。
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ひと通り見て気が済むと部屋を出た。エスカレーターを下り、ついさっきまで迷っていた車寄せの入り口まで戻ると、向かいが駅のホームで私は左手側の改札から出たのだと気づいた。なんだ、線路沿いの道を辿ればすぐじゃないか。
駅のホームから白く四角い建物がどーんと目立っていた、その建物こそが今夜の宿「OMO7大阪by星野リゾート」だった。こんな駅近だったら夜も心配ない。新今宮駅を出発し、西九条駅でお土産袋を手に持った乗客らと入れ違った。JRゆめ咲線ユニバーシティ駅は、ゆとりあるさっきの車内と違ってUSJに向かう人たちで埋まった。実はこんなに乗っていたのかと想像を覆した。
エスカレーターの後ろから0円で遊び尽くそうと20代前半の女の子2人組が話している。改札を通る前に追い越されてしまったが、焦る必要はないと自分に言い聞かせた。
USJ|MY 1ST VISIT
音楽がだんだんと大きくなってくると胸が高鳴った。この感じ、すごく久しぶり。自然と頬が緩んだ。
事前に印刷した二次元コードの用紙を読み取り機にかざして入園した。
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スマホの時刻は16時を過ぎていた。ミニオンの登場で人集りができても、わき目も振らず私は期間限定でドラえもんのアトラクションがあるエリアに向かった。
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「ドラえもんXRライドのび太と空の理想郷(ユートピア)」に絶対乗りたい!ソーニャの声を聞きたい。USJ(ユニバ)にきた理由はそれだけだった。でも、実際その状況になると自分の身体が退く。
怖いんだったら無理して乗らなくてもいいじゃないか。
ううん。やっぱり乗る。私はそのためにここに来たのだから。身長122センチ以上あるし、事故を起こした話もない。それなら大丈夫だ。私はロッカーに手荷物をすべて預け覚悟を決めた。
待ち時間の掲示板には「120分待ち」とあったが、シングルライダーだからなのか、心の準備もないほど列の進みが速かった。列に並んでいる時から映画に出てくる宇宙船に乗っている気分だった。これから「パラダピア」に向かうのか。ソーニャと一緒に
ライドに乗りこむと、安全点検を入念にし映像が見えるゴーグルを着けて出発した。えっ、やっぱり落ちたり揺れたり動きが激しいのだろうか。心臓がバクバクした。当たり前だが、もう引き返せなかった。
ドラえもんやのび太の声がしてちょっと安心した。そして画面にソーニャが現れ、映画と同じ光景が目の前(?)に広がった。
ソーニャの「危ない!」の声と同時にライドがぐいんと左下に大きく外れた。というより、ジェットコースターによくある高いところまで昇ったら急角度で落ちるアレだった。ゴーグルが歪み、身体が振られないよう両手で安全バーをしっかり握った。闘いのシーンなのか、目をつぶってしまえばわからなかった。音声でストーリーが展開した。
やっと「パラダピア」から抜け出し、土管のある「いつもの空き地」が映った。やっと終わる…と油断したのも束の間、右側に大きく傾いた。スネ夫が遊んでいるというらしい。最後の最後までスリリングだった。
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ライドから降りても、身体がふわふわと浮いた状態が残った。あっという間だった。たった5分(待ち時間含めると30分)のアトラクションになんで半年も待ったのだろう。いっそ、もっと早く来ればよかった。
想定した時間よりずっと早かったが、そろそろレストランに入ってもいい頃だった。私は目の前にある、「スタジオ・スターズ・レストラン」に入った。ランチの時間はとっくに過ぎ早めに夕食を食べるタイミングの割には、座席が埋まりつつあった。
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お目当てのメニューを頼んで席に着いた。
ダークチョコのアイスが溶ける前に食べなければとパフェから手をつけた。大人のほろ苦さとチェリーの酸っぱさが際立った。まだお腹が空いてなかったが、平らげてしまった。
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続いてメインディッシュ。ハンバーグの上に載っているオムライスが気になった。ナイフで割るとぎっしりとケチャップライスが詰まっていた。これは食べ応えありそう。ケチャップライスを崩しつつ、ミックスビーンズも食べた。
灰色の雲が覆いいつ雨が降り出してもおかしくない状況だった。
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窓を背にして食べていたので気づくのが遅かった。振り向いたら外は土砂降り。傘も持たず帰る人やショップの庇(ひさし)で雨宿りをする人だらけだった。
こんな呑気に食べてていいものなのか。
雷も鳴り、雨が止みそうになかった。完食してしまったほどその場に居座っていた。
傘をさす人もまばらになった。雷警報が解除され、そろそろいいだろうと席を立った。
雷警報の呼びかけを耳に入れながら、ニューヨークエリア〜サンフランシスコエリアを進んだ。
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「雷警報が発令されているため建物中に入ってください」とクルーらの呼びかけに応じて時折、建物の庇で立ち止まった。雨が止み、完全に雷警報が解除されてから奥へどんどん進んだ。目指すは、スーパーニンテンドーワールドとハリー・ポッターのエリアだ。
実は、入園直後にアプリでスーパーニンテンドーワールドの入場整理券の抽選に申し込んでいた。今回、「19時30分〜20時30分」の回が運よく当選した。ちょうど、その時刻に着いた。
緑のドラム缶を抜けると、ゲームで見た「あの光景」が広がっていた。
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まず、最初に「ヨッシー・アドベンチャー」に向かった。空いているだろうと思っていたが、雷のためライドを止めていた時間もあったのか、列が延びていた。乗るまで40分ほどかかってしまった。
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次に、大人気!「マリオ・カート〜クッパからの挑戦状〜」へ。ここまで来たのだから乗らずに帰るなんて出来なかった。1時間半ほど列に並んだ。
小学校低学年の時、姉のお下がりのスーパーファミコンでマリオカートをよくやっていた。それを自分が体験できちゃうことに、なんか不思議とワクワクした。小学生の頃と変わらず運転は下手だった(隣のおじさん、ごめんなさい)。スコア125・亀の甲羅は0で終了した。
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連続でアトラクションに乗ったら疲れてしまった。
いや、疲れたなんて言ってられない。なぜなら、我が家でニンテンドーワールドに踏み入れた人間は私しかいないから。実家用のお土産を買うためショップへ入った。閉園間近せいか、人で溢れていた。全てがもの珍しいのだが、賞味期限がなるべく長いクッキー缶を見つけるとレジでお会計を済ませた。
よし、これでもう出口に向かうだけ。と思いつつなんか後ろ髪が引かれる。そうだ、「ハリーポッター」エリアの街並みだけでも見てから帰ろう。残り15分を切っていたが、暗い道を入っていった。
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石造りの門の中は幻想的だった。右側にホグワーツ魔法学校へ行く鉄道を確認すると「街の中」を進んだ。かわいいお菓子屋さんに映画で観たまんまの、「百味ビーンズ」や「蛙チョコ」が並んでいた。
そして、ついに目の前にホグワーツ城が現れた。
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雷後の空がいい具合にそれなりの雰囲気を醸していた。
とりあえず、身納めることができたのでエントランスの方面に向かって歩いた。
次、いつ実家に帰れるか分からないのでお土産は宅配することにした。宅配BOXもマリオが描かれていいプレゼントとなった。
時刻はすでに22時を過ぎてた。私はどこにも寄らなかった。
部屋に戻ると「24時間テレビ」をつけつつ、寝る準備をした。片側のベッドに入ったらすぐさま寝てしまった。