ちぐはぐな会話#23
伝える人
「なあ、”伝える”って難しいよな」
「え!?」
「なにか、と、なにかの間に立って、そのなにかだけだったら一生、知り得なかったのに、伝える人がいて初めて”知る”ことになる。重要な役目だ。」
「まあ、そうだね」
「なにか、が、宇宙だったり、数式だったり、人や人生、経験だったりして、それに応じて、伝える人の呼び方も変わって、物理学者、数学者、ジャーナリスト、アーティスト、語り部、映画監督、、となる。」
「そういうことになるね」
「例えば、ドキュメンタリー映画だった場合、全部を撮るわけにはいかないし、もう、過去になってしまったものは、今さら取り直しできないし。結局、監督や製作者が”こう見せたい”と切り取ったものになってしまい、本来の元の姿とは異なるものが伝わってしまうおそれがある。かなり難しいよね。ドキュメンタリーでなくとも、実話に基づくストーリーを俳優・演者が演じると違ったものに仕上がるかもしれないし。かといって、ただ、ぼーと漫然と撮って映画にしたってなにも伝わらない、本末転倒にもなるし。そう考えるとだな、今、オレたちがこうしてみている世界も自分の視点で切り取ってしまった世界をみているのであって、本来の世界をみていないのかもしれない。目にみえないものすら感じとって、本来の姿を受容できたらいいのにな。」
伝える人2
「料理もよく考えると難しいよな」
「え!?どういうこと」
「食材が本来もっているよさをぶち壊す感じで料理にしても、うまいのかもしれないけど、じゃあなんでその素材を使ったんだ、みたいになって。もったいないというか、食材に対して失礼というか、生産者の人がみたら泣くみたいな。」
「そういう意味では、料理人も”伝える人”なんだね」
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