16時間でプロダクトに自信が持てるドリル💪 ※1.5万字
👀 これは何?
これは、今まで私が色々なところで書いてきたプロダクトマネジメント関連の記事のうち、プロダクトの抽象的な概念(CoreとWhy)に関するものをまとめたものです。
プロダクトに携わる方が、考えづらい抽象的な概念に対しても意見をより強く持てるようになることを願って書きました。
目の前の業務で手一杯になっているプロダクトマネージャーや、プロダクトの成長方針にモヤモヤし始めたエンジニアやデザイナー、職種を問わずプロダクトづくりに関わる方に読んでほしいと思っています。
※ 長文になりすぎたので音声版もつくりました。同じ内容を話しているので音声のほうが聞きやすい方はご利用ください
📕 このnoteの使い方
▶ 週2時間x8回で、既存プロダクトの根幹を再検討する
プロダクトのCoreやWhyは重要度は高いにも関わらず緊急度が低いのでどうしてもまとまった検討時間を取れなくなりがちです。このnoteでは2時間 x 8回の16時間の検討でプロダクトの抽象的な概念と向き合うことができる考え方を紹介します。まずは毎週2時間からプロダクトのCoreとWhyに向き合う時間を取り、使ってみてください。
また、これまでプロダクトマネジメントに触れたことの無い方にもそのベースとなるマインドセットに触れる機会になるかと思います。誰かに見せなくても自分の中でプロダクトのCoreやWhyと向き合う時間を持つことはきっと今後のプロダクトづくりに役立ちます。
▶ 🙅絶対にやってはいけないこと
このドリルを一人で実施し、完成させ、プロダクトチームやステークホルダーにプレゼンすることは、絶対にやらないでください。こういった検討を一人でやればやるほど他の方との溝が深まってしまいます。一人で作っていいのはたたき台までです。きれいにする前にかならず周りを巻き込んでください。これは、私の今までの数々の失敗からの、一番のおねがいです。一人でこのドリルをやる場合には16時間以上は掛けてはいけません。
▶ [上級編🔥] チームで、プロダクトの根幹に向き合う
プロダクトのCoreやWhyはプロダクトマネージャーだけが考えるべきものではありません。本来はこういった検討をプロダクトチームと一緒にすることで、その背景などが伝達されてチームで同じ方向を向くことができます。
一人で実施するより難易度はあがりますが、以下noteも参考に、チームで検討していただくことでより強いチームになれるはずです。
🙏 開始前のおねがい
1. 書籍『プロダクトマネジメントのすべて』を併読してください
2021年に書籍『プロダクトマネジメントのすべて(翔泳社)』が発売になり、プロダクトをつくるために必要な知識は一定体系化できたと思います。このnoteでは用語や知識については触れませんので、書籍『プロダクトマネジメントのすべて(翔泳社)』をあわせてお読みください。
2. Slackコミュニティ「プロダクト筋トレ」にご参加ください
私はプロダクトマネジメントには正解がないと考えています。ここに書かれている内容も私が思う現時点での正解です。私が情報を発信するのは、議論を通じてより良い方法論を議論し、模索するためです。もしよろしければ、Slackコミュニティ「プロダクト筋トレ」に参加して、私や参加している他の方と議論をしてください。※ 現在、約4,000人が参加しています。
3. ぜひご意見ください。このnoteは随時更新します
このnoteは最新の私の考えをお届けできるように努め、随時更新するつもりです。皆さんからのフィードバックをお待ちしております。もっと良いアイデアや誤字、修正すべき点がありましたら、フィードバックをいただけると助かります。
⏰1週目: 現状をふりかえり、ゴールを設定する
📕 説明: プロダクトのつくり方に正解はありません
プロダクトづくりに正解はありません。A社で有効なプロセスがB社でそのまま有効であることは稀です。だからプロダクトづくりを学ぶことはむずかしく、その分、今の環境に応じて改善しつづけましょう。
もっと早くユーザーに価値を提案するためにはどうすればよいでしょう?今より10倍大きなプロダクトにするにはどうすればよいでしょうか?目の前の仕事で後回しになっている、より良くするためのふりかえりに1週目は時間をつかってみてください。
🎨 ワーク: プロダクトマネジメントクライテリアでふりかえりをしてください
書籍『プロダクトマネジメントのすべて』と同時に25個のチェックリストをリリースしました。このチェックリスト自体もあなたの環境に合うところと合わないところがあるはずですが、網羅的にプロダクトマネジメントをふりかえるたたき台にはなるはずです。このチェックリストをたたき台にして、いまのプロダクトづくりを振り返ってみてください。
このドリルは、クライテリアの「1. 明確なゴール設定」と「2. 豊かな仮説構築」に注力したものです。このドリルがあなたの課題解決に役立つか、確認して2週目以降も取り組むか検討してください。
💛 コラム: プロダクトのWhyを考える領域、ふりかえりしてますか?
私の観測範囲では、チームでWhyを考える領域のふりかえりがうまくできているところはあまりありません。プロダクトのWhatやHowの領域については開発チームは実施していますが、良くてそこにプロダクトマネージャーが顔を出して自分ひとりの内省を口にして帰っていくだけです。
そもそも、その機能はいまつくるべきだったでしょうか?ビジョンに貢献する優先度がついていますか?目標設計はそれでよかったでしょうか?ユーザーインタビューは充分でしたか?
特にプロダクトマネージャーがこれらの仕事を一人で抱えてしまっているときこそ、このプロセスに改善がすすまない印象があります。(そのためにこのnoteも書きました)
プロダクトマネージャーは孤独ですが、一方で仕事で関わるフィードバックをもらえる相手はたくさんいます。Whyの領域についてふりかえりの機会を定期的に設定することはチーム全員の成長機会となるはずです。
👀 1週目の参考記事
なし💪
⏰2週目: ビジョンを紐解く
2週目からはプロダクトの具体的な検討をはじめていきましょう。
まずは、プロダクトビジョンについて。ビジョンという言葉には諸説ありますが、ここでは「プロダクトが作りたい世界観」という意味でプロダクトビジョンという言葉を使っています。
📕 説明: プロダクトビジョンを意思決定に使う
プロダクトの成功は、ビジョンが達成されることにあります。
しかし、プロダクトづくりの現場では、ビジョンが単なる素敵な言葉や標語のように扱われ、ビジョンを基にした意思決定が充分に行われていないことがあります。
もちろん、ビジョンをそのまま使用して、ボタンの色を決めることはできません。そこで、書籍『プロダクトマネジメントのすべて』でも取り上げている「仮説のミルフィーユ」を使って、ビジョンからボタンの色までの仮説の連鎖を考えてみましょう。
仮説のミルフィーユとは、プロダクトをつくる上で検討しなければいけない事項を4つの階層に分解したものです。上からCore、Why、What、Howの4層で上にある層ほど抽象的、下にある層ほど具体的になっています。
そして、プロダクトをつくることは仮説に仮説を重ねることです。
先程のビジョンとボタンの色の間にも以下のような仮説の連鎖があります。
Core: どんなビジョンを設定するか
Why: そのビジョンが達成できている状態では誰がどんな状態になっているのか
What: その状態をつくるためにどんなユーザー体験を提案するのか
How: その体験を提案するためにボタンの色はどうあるべきか
このように、4つの階層で仮説を可視化しておけば、チームの全員がビジョンから連なる最新の仮説に即した意思決定をできるようになります。
🎨 ワーク: プロダクトビジョンを解きほぐす - Lv.10やLv.30はどんな状態ですか?
2週目は仮説のミルフィーユの最も上のCoreから検討していきましょう。
(※ ちなみに、新しいプロダクトを考えるときにはCore→Why→What→Howとウォーターフォールのように上から検討することは一切しません。各階層を行ったり来たりして徐々に強くしていきます)
今日は、「プロダクトビジョンが達成している状態がLv.100だとしたら、Lv.10やLv.30はどんな状態ですか?」という問いに以下のようなフロー図を書いて答えていただこうと思います。
ここには「決済機能がある」だとか「レポートが見れる」といった"機能"を書かないでください。良い例としては、ビジョンが「食の面倒くささを取り除く」としてフードデリバリープロダクトをするなら、「配達できる」という機能があるのではなく「食べたいものがすぐ届く世界」がLv.1の例です。
もちろん、Lv.0からLv.100までギッシリとレベルを定義しなくて構いません。低いレベルの解像度は高く描けていると思いますが、レベルが高くなるにつれてまだわからないことばかりのはずです。それが正しい状態です。
🤔 どんなときにこのワークをするといいですか?
私はこのワークをプロダクトビジョンをうまく使いこなせていない方にお勧めしています。プロダクトビジョンがせっかくあっても、それが具体的にどういう状態であるのかの認識があっていなかったり、日々の実装がどのようにプロダクトビジョンの達成につながるのかが分からなくなったりしている方におすすめです。
私はプロダクトビジョンはそのきれいな言葉そのものより、どうしてそのビジョンに決まったのか、どうしてその言葉を使ったのかという背景こそが重要だと考えています。しかしながら、それを伝達するのはとてもむずかしいです。生きたビジョンとしてチームで使うために、こういった分解があるとLv.100の状態をより理解しやすくなります。
もし、うまく書けなくても大丈夫です。仮説の4階層は上に下にと行ったり来たりしながら固めていくものですから、まずは一度、先に進んでみてくださいね。
🤔 ビジョンまでの道筋を定義するんですか?
いいえ。プロダクトビジョンとはどのような道筋で登るかわからないものです。しかし、それはビジョンに向かう1歩を定義しなくて良いという意味ではありません。今わかっている範囲で、次のレベルではどんな状態をめざすのか、もしくは今は目指さないのかは仮説を持ってください。順番をつけるのが難しければ、レベルの高いところは順不同でも構いません。
このレベル定義のとおりに成長するというコミットメントではなく、あくまでいまの頭の中を整理するために書き出してみましょう。
💛 コラム: 「嘘をつく」ことを怖がらないで
こういったワークをすると頭の中では多くのことを考えているにも関わらず、手が止まってしまう方が一定数います。お話をお伺いしてみると「自信がない」「正しいかわからない」とおっしゃいます。私はプロダクトをつくる上で、こういった謙虚な姿勢は成功に近いと思いますが、わからないからこそ検証しなければならないとも思っています。そして、何が分からなくて、わからない中で何を仮説と思っているかを共有することで議論が始まります。
プロダクトをつくるときには、仮説をミルフィーユ状にして、妄想に妄想を積み重ねなければいけません。チームで現時点の仮説を共有し、その仮説が間違っていたときには、嘘をついたと責めるのではなく、間違いに気づいたことを喜ぶ姿勢を持ちましょう。これを失敗ではなく、発見と呼んでいきたいですね。
こういったワークをするときに、自分の頭の中を吐き出すのは少し恥ずかしさもあるものです。しかし、こういった抽象的な話にハードルがある組織にこそ、誰かにプロダクトビジョンと向き合うトリガーになってほしいと願います。
また、「B2Bだからクライアント次第。ビジョンを考えても役に立たない」というお声も時々聞きますが、私はそれは受託開発に近いマインドセットだと思います。私は、プロダクトビジョンにどのように近づくのかの設計があった上で個社対応、クライアント獲得をするという考え方を持っています。もちろん仮説検証のマイルストーンはクライアント次第で、柔軟なアップデートも必要です。
👀 2週目の参考記事
⏰3週目: 価値提案を定める
📕 説明: 機能思考から価値思考へ
私の記事を読んでくださってる方にはおなじみ"蛇足のダソくん"の時間です。
あなたのプロダクトが向かって左の魚の絵だったとして、色んなユーザーの要望通りに機能をつけていくと出来上がるのが向かって右の生き物(蛇足のダソくん)です。
本当にお鼻がついたかわいいイラストが欲しい人はダソくんではなく「ちいかわ」を買うでしょうし、陸上走行したいひとはダソくんではなく「電動キックボード」を買うでしょう。
このプロダクトが何なのかという、プロダクトの良さの定義ができていないときに、このようなプロダクトができてしまいます。
イラストで書いているので誇張している部分もありますが、これは私が実際にやってしまった失敗をもとに描いた絵でもあります。
🎨 ワーク: ”プロダクトの価値”を分解して考える
ダソくんであれば「さかな」「イラスト」のようにすでにある名前で定義することができますがプロダクトはそうではありません。「ググる」「Uberする」「LINEする」のようにプロダクトの名前こそが概念を表す動詞になります。(※1) このプロダクトにとって何が"良さ"であるかを示すためにユーザーにどんな価値を提案するのかを定めましょう。
さて、前週にプロダクトビジョンをLv.100として、Lv.10やLv.30を検討していただきました。現状から次のレベルに持っていくためにするのが価値提案です。誰も何もしなければ勝手に次のレベルに上がることはなく、プロダクトが価値を提案することでレベルアップできます。
それでは、レベルを上げるためにプロダクトがどんな価値を提案するか書き出してみましょう。ここでも「レコメンドができる」のような機能を書かないように注意してください。ヒレが生えているのは当然で、それがどんなヒレであるのかを書きましょう。速く泳げるヒレなのか、美しい鰭なのか。つまり、機能ではなく”どんな”レコメンドができるのかを良さの定義として書いてください。
🤔 大価値と肉付け価値
ソフトウェアプロダクトはアップデートができるので一度提案した価値をより強めていくことができます。ユーザーに期待されている価値には、どんどん肉付けていくことでユーザーの喜びも増えるでしょう。
一方、ビジョンをLv.100までのフローに分解した方には同意いただけると思いますが、1つの価値だけを肉付けているだけではLv.100のビジョンには到達することができません。Lv.1→Lv.10のために必要な価値提案と、Lv.50→Lv.70に必要な価値提案は異なります。このレベルを上げるために必要な価値を肉付け価値に対して、私は大価値と呼んでいます。大価値でレベルをあげて、その大価値に肉付け価値を追加していくことでより確実にレベルをあげるという関係です。
日々の業務で手一杯になっていると肉付ける価値だけを追い求めてしまいます。優先順位をつけるときには、レベルをあげるために必要な大きな価値(大価値)と、継続的に肉付けていく価値(肉付け価値)をそれぞれ考えるようにしましょう。
3週目は2週目に作ったビジョンフローに価値提案を追加して、価値の分解図にまとめてみてください。L.1からLv.100まですべてを書く必要はありません。おそらくLv.50を超えたあたりからはどんな価値を提案すればよいのかは根拠の薄い妄想になるでしょう。それでも今時点の認識があれば、今ではなく未来にやることとして書き出しておくことには意味があるはずです。
💛 コラム: 思考停止ワードに注意して
価値の分解図を作っていただくと本当によく見るワードがあります。それは「最適な」です。他にも「ユーザーがほしい」「競合とは違う」「デジタルを活用した」etc。私はこれらのワードを思考停止ワードと呼んでいます。
“どう”最適であるのか、”どんな”ユーザーが”どうして”ほしいのかといった、ワードこそが価値に繋がります。もし、ここでどう最適であるのかの答えに窮するようであれば、いま目の前にあるのがダソくん化しつつある可能性が高いです。今日それに気づいたことを喜びましょう。書籍『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』を手にとって、ユーザーを観察してみてください。
👀 3週目の参考記事
※1: "名前こそが概念を表す動詞になります"は、書籍『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』第6章 - ウーバーの体験 に影響を受けた表現です
⏰4週目: 価値までの体験を整える
4週目はカスタマージャーニーを描いてもらいます。
目的は3週目に作った価値の分解図がユーザー目線で見て足りているかを確認することです。
📕 説明: プロダクトではなくプロセスを考える
いきなりですが、プロダクトマネジメントの真髄は、あなたはここからここまで私はここからそこまで、という分業制を取っ払うことかもしれません。3週目で検討した価値をユーザーに届けることがゴールであり、決められた分業の枠線を守ったかどうかはユーザーには関係ありません。
今週はカスタマージャーニーを書いていただきます。
おそらく多くの方はカスタマージャーニーを知っていたり、書いたことがあったりすると思いますが、もしかすると以前書いたときと今日では書く目的が違うかもしれません。今回の目的は「未来を見据えた価値の分解図が充分であるかを確認するために、プロダクトの足りていないところをしること」です。今日は、プロダクトがいま価値提案できていない部分も含めてカスタマージャーニーを書いてください。
フードデリバリープロダクトなら、一度注文するところまででジャーニーの記載を終えるのではなく、「その後、クレジットカードの使いすぎに気づいて少し節約を考える」といったところにも興味を持って、その結果が次の注文にどんな影響を及ぼすのかを考えましょう。
今回フォーカスするのは、プロダクトではなく、ユーザーが価値を感じるまでのプロセスです。(※ 本来はそのプロセス全体をプロダクトマネジメントの対象にしたいものです)
🎨 ワーク: カスタマージャーニーを描く
繰り返しになりますが、4週目のカスタマージャーニーでは3週目の価値の分解図が充分であるかを検討する目的で実施してください。
ビジョンや提案したい価値から考えていると、プロダクトの有りたい姿の力が大きくなりすぎてユーザーのことをおざなりにしてしまいがちです。一度ユーザー目線に立ち返ってみて、ユーザーがLV.10になるまでにはどのようなプロセスを踏むのかをユーザー目線で考えましょう。
手抜きで恐縮ですが、カスタマージャーニーについては多くの記事が既にあるので説明を省略します。もし描いたことが無い方は検索してください🙏ただ、検索して出てくるようなきれいな図を書く必要はありません。あなたの価値の分解図の検討のために書くのでぐちゃぐちゃでいいのです。
💛 コラム: どうしてユーザーは次の列に進めるのか?を抜かりなく知る
心からのお願いです。カスタマージャーニーは一度書いて終わらないでください。書き終わってからこそ、カスタマージャーニーはその効果を発揮します。
1.本当にそうですか?
頭の中のユーザーではなく、本当にユーザーはそのとおりに動いていますか?まったくカスタマージャーニーを書き始められないときはすぐに、もし書けるのであれば、カスタマージャーニーを書いて頭の中を整理してからユーザーインタビューをしてみましょう。ここではまず、提案しようとしている価値を一番求めていそうな人に話を聞くと良いですね。
2.どうしてユーザーは次の列に進めますか?
ユーザー目線のカスタマージャーニーを書いたあとは、今度はプロダクト目線で離脱させないことを考えましょう。列ごとに何かしらのハードルがありませんか?そのハードルを超えるための価値をプロダクトは提案できているでしょうか?
👀 4週目の参考記事
※ この記事の「価値を実現するジャーニー」が今回の内容を表しています
⏰5週目: 成功を指標に落とす - North Star と KPIs
おめでとうございます。折返し地点です🎉
ここまでの検討を終えたら「あなたのプロダクトの成功は?」と聞かれたときに「売上を上げることです!」だけでなく、「XXXの価値を提案することです」と答えることができるでしょう。(できていないときはこちらの記事をご覧ください💪 ※ と書いたのですが、その記事は4月中にはでるので少々お待ち下さい🙏🙏🙏)
では、その価値が提案できているかは、どうすれば測れるでしょうか?
売上?いいえ、売上が上がっていれば上がっているほど価値が提案できているかもしれませんが、実は営業チームが頑張っているだけでプロダクトの価値は大きくなっていない可能性があります。
📕 説明: North Star Metricで定量的に計測する
KPIツリーは有名ですね。売上を根にしたツリー構造で、売上を上げるための方程式を分解したものです。しかし、先述の通り売上が上がっているだけでは価値が提供できているかはわかりません。
「価値が提供できているならば、売上があがる」と仮説をおいて、下図のように売上(KGI)には一つ左にずれてもらいましょう。売上とKPIツリーの間に「価値が提供できているか?」を測る指標を置いて根にします。この価値を測る指標をNorth Star Metric(北極星指標)と呼びます。チームの北極星として目指すということです。おしゃれですね。
🎨 ワーク: North Star Metricをつくりましょう
NSM(North Star Metric)の作り方についてはこちらの記事をご参考ください。
概念は理解できても、実際によいNSMを策定するのはむずかしいです。最終的にはチームがそのNSMをあげるために仕事をしていると胸を張って言えるようになれば良いNSMだと思いますが、より効果的にNSMの効果を受け取るためには以下の5つのポイントも気をつけてみてください。
ビジョン、顧客価値、事業収益のInput Metricになっている
AARRR(Pirate Metrics)のどの項目の改善にもつながっている
測定可能である(月に1度など、高頻度で計測できないものはNG)
総会員数などの積み上げた数字ではなく、計測期間だけの結果
ユーザーがプロダクトの価値を感じている瞬間である(そして、チームがその指標を伸ばすことにワクワクできる)
とくに、2つめは要注意です。悪い例としては「新規クライアント獲得数」をNSMにしてはいけません。これはもちろんユーザーは何らかの価値を感じて契約をしたはずですが、「何に価値を感じたのか」「プロダクトは獲得後に価値を提案できたのか」を測ることができない指標です。
マーケティングやセールスの指標としては良いと思いますが、プロダクト全体のNSMとしてはAARRRのどの項目の改善にもつながるものを探しましょう。良くないNSMのサンプルはこちらもご参考ください。
💛 コラム: ZoomのNSMはとても美しい
ZoomのNSMは「一週間に開催された会議の数」だと言われています。(※2)私はこのNSMが美しくてとても好きなので、よく紹介しています。私が素敵だと思うポイントは以下の3点です。
会議の長さではない
1日に開催された数ではない
会議の参加者ではない
Zoomのビジネスモデルはライセンス契約数です。そのため、売上を伸ばすのであれば、1つの会議に参加する人数は多ければ多い方がネットワーク効果によりライセンスが購買される可能性が高いのです。
しかし、良い会議とは何か?を考えると参加者が多すぎる会議は良い会議ではありません。Zoomはきっと良い会議を提案してビジョン達成をすることで収益をあげようとしているのでしょう。
こういったシンプルな指標ながら、プロダクトの考える良さがにじみ出ているNSMは美しいですね。
👀 5週目の参考記事
※2 ZoomのNSMがWeekly hosted meetingsだという記事は多く見かけるのですが、そのソースに私はまだたどり着けていません。ご存じの方いらっしゃればぜひ教えてください。["zoom" north star before:2020-01-31] で検索した最も古い検索結果はこちらです。
⏰6週目: 未来を見据える - プロダクトロードマップ
(2023年4月30日追記: 音声については、需要がありそうなら作成することにします。需要がある方がいらっしゃれば、コメントにスキをいただけるとやる気がでます。)
NSMができたら、次は着実にNSMを右肩上がりにする未来図を考えましょう。
📕 説明: 生きたロードマップをコミュニケーションで活用する
ロードマップ、生きていますか?3ヶ月前に作ったままスライドの片隅でカピカピになっていませんか?もし、そのカピカピのロードマップが、プロジェクトを進めるかどうかを判断する目的で一時的に作られたロードマップであれば、やるかやらないかが判断されたら役目を終えていいでしょう。
今回作成を推奨するロードマップの目的は「日々のコミュニケーションをスムーズにすること」です。
プロダクトを作っていると日々仮説が検証され、取り巻く環境が変わります。その変化にどう対応するのかを判断し、その結果どこに影響が有るのかを推測して関係者が共通認識を持ち続けなければいけません。そんなとき、ロードマップが常に新鮮な状態であれば、これから先に起こることの議論がしやすくなります。
私はロードマップを上図のような3本線で書くことを推奨しています。
・事業数字(5週目のNSMやKPIなどの目標数字)
・目指す状態(2、3週目で考えたLvと価値)
・機能
機能だけではなく、どんな状態を目指すのかを書いて線同士のつながりを検討しておきましょう。差し込み案件があったときに、機能がずれると目標達成にどのような影響があるかがわかりやすくなり、差し込み案件をするべきかどうかの議論が健全に実施できます。
🎨 ワーク: 3本線のロードマップをつくりましょう(3本目は任意)
それでは、ロードマップを引いてみましょう。期間は1年(〜3年)程度をお勧めします。このドリルではかなり抽象的な概念の話をしていただいているので四半期のロードマップでは少し短いと思います。もっと長期の話は、2週目に実施していただいたビジョンフローで表されているはずです。
ロードマップを引いたあとに、
本当にその時期にそのレベル(1週目の概念)にフォーカスするべきだろうか?
NSMにつながらないものに時間を使おうとしていないだろうか?
このロードマップでワクワクできるだろうか?
という点についてチェックしてブラッシュアップしてみてください。
💛 コラム: その機能、全部実装が必要ですか?
ロードマップを3本に引くことで、プロダクトを俯瞰してみることができるようになります。不思議と、プロダクトを虫の目で見ていると必ず必要だと思っていた機能が、実は必要ないかもしれないと疑うことができるようになります。
機能を実装する前に、その機能を実装することでどんな効果が数字に現れるのかを考えてみましょう。数字に貢献しない機能は実は後回しにすることができるかもしれません。
👀 6週目の参考記事
⏰7週目: そのロードマップで勝てるのか?
できたロードマップに満足していますか?書き終わったあとのチームの反応は2つに分かれます。
・頭の中にあった輝かしい未来が整理されてワクワクしている
・プロダクトが成功する未来を描くことができずに自信をなくしている
前者の方はおめでとうございます🎉後者の方はそれに今日気づくことができてよかったと祝いましょう!
後者の方にいま必要なのはおそらく正しいプロダクトマネジメントをすることではありません。いまするべきは、仮説検証の100本ノックです。
前者の方も後者の方も、7週目は競合に目を向けてみましょう。
📕 説明: そのロードマップで勝てますか?
ワクワクされている方に水を差すのでいつも申し訳ない気持ちになるのですが、ロードマップを書いたあとには「そのロードマップで勝てますか?」と問いかけています。
もしかして、競合と同じようなロードマップになっていないでしょうか?そもそも、競合とみなさんが目指す姿は同じですか?自社独自の価値提案はありますか?競合の独自の価値提案は何でしょうか?
こういった質問をすると「実は競合について何も知らなかった」と明らかになることがあります。
🎨 ワーク: 競合の価値の分解図をつくる
競合について詳しくなりましょう。もちろん、今回も競合と自社の機能を比較するのではなく、プロダクトのCoreやWhyを比較してみましょう。この6週間でやってきたことを競合のプロダクトマネージャー目線ではどうなのかサクッと考えてみてください。あなたが競合のプロダクトマネージャーだったら、どんな戦略を描きますか?
成果物は3週目に作っていただいた価値の分解図にまとめてみてください。余力があればポジショニングマップもあるといいですね。競合が何を大切にしているかは、採用資料やプレスリリース、IR情報を見るとよくわかります。
💛 コラム: ユーザーに話をききましょう
ロードマップを作ったあと、プロダクトが目指す1年後の姿にユーザーもワクワクしてくれるか話を聞いてみましょう。もちろん、これは「1年間にこれだけの機能をリリースします!どうですか?」という聞き方ではありません。
以下のようなことを聞けば、プロダクトの目指す姿とユーザーの有りたい姿にどんなギャップがあるのかを確認することができます。
1年後がLv.10だとすると、Lv.10をユーザーは求めているのか
もし、いまLv.10相当の世界を別の手段で実現しているなら、代替品とそのペインは何なのか
今考えているロードマップの2本目でユーザーはLv.10になれるのか(≒ 想定しているカスタマージャーニーの通りなのか)
いまユーザーが求めていることと、検討しているロードマップにギャップはあるのか
機能を聞くのではなく目指す姿について、ユーザーと対話してみましょう。
👀 7週目の参考記事
勝てるアイデアを生むために押さえたい六つの視点【連載:小城久美子】
⏰8週目: 間違いを受け入れる - 魚の足を断つ勇気
📕 説明: 魚の足を断つ
最終回です。ここまで一緒に検討してくださった方、お疲れさまでした。
この2ヶ月でプロダクトの抽象的な部分は整理されましたか?ここまでの検討で明らかになったことは1つでもありますか?
1つも無かった方がいれば私の失敗です。申し訳ありません。ビールをおごるので連絡してください。
このドリルを「ただなんとなくやって良かった。」で終わらせないでください。プロダクトの抽象的な部分が頭の中で整理されたなら、具体的な施策の中でダソくんの切り取るべき足が見つかりませんか?
プロダクトマネジメントをすることはいつもトレードオフです。いま、不要なリソースを使ってしまっているなら、勇気を持って止める意思決定をしましょう。
🎨 ワーク: ふりかえりましょう
このドリルの初日にもふりかえりをしてもらいました。
その頃に感じていたモヤモヤは少しでも晴れたでしょうか。前よりもプロダクトに自信を持つことができるようになっていますか。
最後の2時間はこの2ヶ月をふりかえって、今のプロダクトづくりにこの2ヶ月の成果を落とし込む時間にしてください。
💛 コラム: 議論に参加しなかったひとにこそ、成果物を浸透させてください
この2ヶ月の検討をもしチームで取り組んで頂いているならば、できた成果物以上にみなさんの前提条件はかなり揃っているはずです。今後のコミュニケーションもスムーズになるでしょう。
一方でこの検討を一人で進めた場合、周囲のメンバーには、あなたの頭のなかに追いついてもらわなければいけません。こういった抽象度の高い検討は成果物をプレゼンするより一緒に頭を使って検討したほうが理解が進みます。プレゼンしても抽象度が高いので「そうだね」で終わってしまいます。そのため、一人で検討した方にはそれをたたき台として、もう2ヶ月チームで一緒にあなたの検討をブラッシュアップすることをお勧めします。
この2ヶ月で検討した内容を誰か一人ではなく、プロダクトに関わる全員が自分の言葉で語れるチームはかなり強いはずです。
👀 8週目の参考記事
なし💪
🥰 あとがき(ポエム)
💛 このドリルは誰が実施するのか?
最近、私はプロダクトマネージャーはスーパーマンのように多彩な知識をもってその上ソフトスキルとしてコミュニケーション能力がなければいけない!!のような情報に胃もたれしています。(2年ほど前に私もそういった情報を発信していた覚えがあります…反省…)
私は、プロダクトが成功すればいいと思います。そのジョブタイトルはプロダクトマネージャーではなくてもいい。デザイナーもエンジニアもプロダクトをつくるすべての人がプロダクトマネジメントをしたほうが絶対に良いし、みんなでプロダクトを良くしていきたい。そうじゃないと、誰も幸せにならないと思うのです。
ここに書いたことはプロダクトマネージャーの仕事ではなく、プロダクトマネジメントの仕事だと、私は思っています。
💛 どうして書いたのか?
この長文を書いたのは、私がたくさん失敗をして色んな方に迷惑をかけて、色んな方に支えてもらって、色んな方の知見によって学んできたからです。私の知見が還元され、巡り巡って私が迷惑を掛けた人の役に立てればと思っています。ごめんなさい。そして、ありがとうございます。
💛 やってみたけれど、自信が持てませんでした!
それは、ごめんなさい。また、場合によっては何もできていなかったと一時的に自信を失わせてしまうかも知れません。
サポートが必要なら、個別にご連絡ください。koshiroKumiko@gmail.com
💛 個別のフィードバック、ご意見、ご感想はこちら
このnoteへのコメントやメールでご連絡頂いても構いません。匿名でのフィードバックを希望していただくことも多いので、こちらにGoogle Formもおいておきます。
https://forms.gle/Jh8bzAjLVVJQaLgSA
💖 Special Thanks
このnoteは公開前にレビューをいただきました。レビューしてくださった方に感謝の気持ちを込めてお名前を掲載させていただきます。ありがとうございます!!!
ふなっしーさん(@Funako_sikao)
あつきさん(@atsuki_911)
sawa-it さん(@sawa__it)
海老原 直茂さん
📝体験してくださった方の発信
ペイトナーさま
※ このnote以外の内容も含む、個別に支援させていただいたものです