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貴方が笑顔の理由(わけ)

 唐突だが【微笑の国タイ】というキャッチフレーズは好みではない。何故なら町中に笑顔が溢れて…と言うイメージはタイ駐在生活数年間でもろくも崩れ去ったからだ。確かに日本と較べると笑顔は見かけるが…何かが違う。
 少なくともうちの職場は笑顔で溢れてはいない。まあ理由も無いのにニコニコしている方が変だが、逆にしかめっ面で眉間にしわを寄せて【話しかけるなオーラ】を出している人も多い。でも上司を見かけると【しっぽふりふりワンワン状態】にモードが切り替わる。見事である。
 会議中など顔は笑顔だが…目が笑っていない。上司に無理難題を言われて「多分ハラワタ煮えくり返っているだろうなあ」と傍から見ていると思うのだが、そこはタイ人、終始口端はキリリと挙げ、笑顔の構成要素を辛うじて保っている。
 バンコク近郊で友人が交通事故を起したときの事である。車をぶつけたタイ人加害者、普通は「あ~すみません」と神妙そうな顔つきで出てくるか、「このやろ~」と逆切れしてこちらに来るか…と思っていると彼が顔一面に笑みを浮かべてこちらにやって来たそうだ。そして一言「マイペンライ」と言ったそうである。
確かにその態度は日本人の感覚からすると【悪いことをした意識が無い】とムカッと来るであろう。しかしタイ人の感覚からは【貴方の心を乱さないで、どうか落ち着いて下さい】となるらしい。文化が違えば行動も変わるのである。
 笑顔と言えば、どうもタイ人同僚に寄れば、その段階は12段階あると言う。全部は忘れたが、雰囲気を作るための笑顔、照れ隠しの笑顔、敵意が無いことを表す笑顔、警戒する笑顔、話しかけないでとの拒絶の笑顔など様々、タイ人はこれを使い分けると言うのだ。
「人間笑顔の裏には何かがあるんだ」人生の師匠が良く口にしていた言葉だが、最近タイに来て妙に説得力を持っている。そういうオヤジも最近笑ってごまかす事が増えたが。いつもむっつり顔の同僚が笑顔だと「何か失敗したのかな?」といろいろ勘ぐってしまう。
「いやいやこんなこと考えちゃいかん、彼を信用しよう」とは思ったが、結局同僚は取引先とのトラブルを隠していた。「これどうするの?」と追求すると同僚は一言「マイペンライ」、笑顔で言うなっつーの!!
 

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