読書のススメ「芸術立国論」
こんばんは。オズです。ここでは、わたしの「好きなもの」について勝手に書いて、勝手におススメしていきます。
今回は平田オリザさんの著作「芸術立国論(2001年)」をご紹介します。
平田オリザさんについて
平田オリザさんは、現代演劇の劇作家・演出家です。今回ご紹介する「芸術立国論」以外にも、2012年に出版された「わかりあえないことから-コミュニケーション能力とは何か」という本が反響を呼んでいました。また、ももクロが主演した映画「幕が上がる」の原作者でもあります。劇中ご本人がカメオ出演(?)もしています。
内容について
平田オリザさんは様々な著書を出版されていますが、この本は特に「芸術の公共性」とその必要性について語られています。また、内容も2001年に出版されたとは思えないほど、現代社会への提言的な内容が書かれています。
芸術の公共性とは
本書の中で平田オリザさんは、「公共性とは何か」について以下のように述べています。
公共性とはすなわち、それが人々にとってなくてはならないものであると同時に、社会全体にとってもなくてはならないものということだ。
突き詰めて言えば、およそ現代社会において公共性のない事象などない。
だから、あらゆる公共性の問題は「ある」「ない」の文脈ではなく、「強い/弱い」「高い/低い」の文脈で語られるべき事柄だということになる。
そこで逆に、まず第一に問題なのは、いまだに「芸術の公共性」の問題が、芸術の世界の中で「ある」「ない」の文脈で語り続けられているという点だ。
要は
『突き詰めれば、すべての事柄には公共性があるのに、なんで芸術だけ「ある/なし」で語るんだよ。「強い/弱い」「高い/低い」で語ろうよ』
ということですね。たしかにおっしゃる通り。。
また、時代と共に、教育も医療も劇場も、それぞれの公共性の高低は変化する、とも書かれています。
なので、いずれは芸術の公共性が認められるようになっていくだろうと。確かに現在、東京都のバンクシーの例など(是非はあれど)、徐々に以前より芸術の公共性が認められてきているのかなとは感じます。
しかし、この本ではより具体的に、その「芸術の公共性」を実社会に取り込んでいくべきだ、と提言されています。
具体的には「芸術保険制度の導入」「省庁の再編」「芸術文化基本法の制定」などです。非常に興味深いので、ぜひ詳細は本書で確認していただきたいと思います。
またこの本の中で、彼が講演会をしたとき「芸術はなくても死なないじゃないか」と言われる事があるそうなのですが、こう述べています。
しかし本当にそうだろうか。自殺者が年間三万人を超えるこの時代に、果たして行政は、それに対して有効な施策を行ってきただろうか。
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日本の行政は、身体(健康)や頭(教育)には、ずいぶんお金をかけてきたが、こと精神については、まったく予算を使ってこなかったのではないか。
いやもう本当、そうですよね。。少なくとも一市民としては、精神的な健康に行政からの予算が使われてる実感は、あまりないですね。。
後半には、なぜ平田オリザさんがこのように芸術の公共性にこだわるのか、などの理由も書かれているので、彼の活動に興味を持たれた方は是非ご一読いただくと良いのではないかと思います。
現在の活動
現在平田オリザさんは、実際にこの本に書かれている内容を実現されようとしています。例えば今年は、兵庫県豊岡市に「江原河畔劇場」を建設し、ご自身の活動拠点も移されるようです。また、すでに豊岡市では、市内38のすべての小中学校で演劇教育が実施されています。芸術の公共性が体現されている場所とも言えますね(羨ましい…)。
おわりに
自分が学生時代に演劇をやっていたこともあって、平田オリザさんを非常に尊敬しているので、彼贔屓な内容になってしまいましたが…この本に書かれているような施策が実現していけば、日本にも希望が持てるのではないか…と期待してしまします。特に教育に関しては、知識とご経験が豊富なので、豊岡市の演劇教育の取り組みは非常に羨ましい所です…。今はコロナの影響により難しいですが、落ち着いたら「江原河畔劇場」にも訪れてみたいと思います。
自分も、希望溢れる未来を描いて実現していきたいなと、この本を読んで改めて思いました。コロナに負けてられないですね。。
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