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見えない翼

翼はまだないのです
真っ白なその背中には

固く閉じた骨格に
飛べるほどの羽根はなく
大空を翔けるその時を
静かに待っているのです

滴る汗が土に浸みる刹那
熱い鼓動に胸打たれる瞬間
歯を食いしばり立ち向かう時

絶望の淵を見た何時か
人知れず涙する夜
激情に駆られ目覚める朝

そして 決意の時

繰り返される瞬間(とき)の中で
柔らかで小さな少年の羽根は
意志持つ一個の羽と成り

隙間なく満ちるその瞬間に
陽光に煌めく銀の翼は
歓喜の飛翔を遂げるでしょう

白い背中の戦士たち

胸に息づく見えない翼は
静かに時を待っています

聖地が見上げる大空へ
強く高く 舞い上がる

その時を待っているのです



高校野球の風景。翼のシリーズその2。まだ背番号のない選手たちのことです。

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