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【祝!PR Awards Asia2023シルバー受賞】オズマピーアールはどうやって肩コリとファッションを結びつけたのか?肩コリケアのPRで“服づくり”を提案するまで。

はじめまして。オズマピーアールでPRプランナーをしている角田です。“つのだ”でも“すみだ”でもなく、『かくた』と読みます。

さて、少し話は遡りますが、2023年6月に、「PR Awards Asia 2023」のBest Use of Content部門においてオズマピーアールが企画・実施した、ピップ株式会社が製造販売する磁気治療器「ピップエレキバン」シリーズの発売50周年特別企画である、ファッションコレクション『コリナイ・コレクション』がシルバーを受賞しました。プランナーとして、こういった賞をもらえることはとても誇らしいものです。

そこで今回、企画~運営を担当した角田が、この企画のプランニング過程を振り返ってみようと思います。


1.そもそも『コリナイ・コレクション』って?

解説に入る前に、『そもそもコリナイ・コレクションって何なの?』についてお話ししたいと思います。 

コリナイ・コレクションは、2022年に発売50周年を迎えた磁気治療器「ピップエレキバン」シリーズの周年記念における特別プロジェクト『コリナイ・プロジェクト』の目玉企画として誕生した、「未来の“肩がこらない服”」を制作する企画です。

「未来の“肩がこらない服”」を制作するため、ピップは、日本を代表するファッションデザイナーを数多く輩出してきた日本の服飾教育の名門・文化服装学院の学生と、人間工学領域において様々な企業等で学術的な監修を行う千葉大学の人間工学博士・下村義弘先生とタッグを組み、約5カ月に及ぶ座学~デザイン立案、そして制作に挑みました。最終的に、70種のデザイン案の中から選抜された5点のユニークな衣装を制作し、その衣装はメディア発表会でお披露目され、原宿の商業施設では期間限定で一般展示も行われました。

・・・と、ここまでがコリナイ・コレクションの全容です。ここまで読まれた皆さんはきっと、「なんでピップエレキバンがファッションデザインしたんだ!」、「50周年記念の企画とは思えないくらい振り切った企画なのにどうやって提案したんだ!」とお怒りのことと存じます。お怒りでなければスミマセン。次章以降で企画の作り方について解説していきます。

2.提案の方向性を決め、“アイデア”に。-オリエンを受けてから企画提案まで

では、ファッション企画を提案するに至るまでを、時系列に沿ってお話していきます。まず、ピップさんからのオリエンテーションは、ざっくり言うと以下のような内容でした。

  1. “年配向け商品”というイメージを脱し、20~30代への訴求を強めて購買に促したい。

  2. コリをケアすることの価値訴求をしたい。

  3. 節目となる50周年を盛り上げたい。

これらのオリエンテーションを受けて、社内の企画会議で特に注目したのが2.の「コリのケア」でした。読者の皆さんにも肩コリに悩まされている方が多いのではないでしょうか?

我々はまず、「コリの解消方法として慢性的に悩まれている方は整体に行ったりするが、ほとんど多くの方は肩こりを放置し、解消を諦めているのではないか?」という“問い”を立て、僕たちのコミュニケーションのゴールを「日本人の国民病である肩コリについて、あらためて考えるきっかけを作ろう!」に決めました。

社会に対する問いとゴールが決まり、そこに向けてのアプローチを考えていきます。社内で決められた方向性は以下の3つでした。

①これまでのピップ社の発信のトンマナを活かすコト。
これまで、ピップでは発売当時からのユニークなテレビCMや、北海道の比布町とのコラボ企画など、大阪の企業ならでは?なユニークなコミュニケーション発信を続けていました。我々は50周年という大きな節目だからこそ、このトーン&マナー(トンマナ)でのPRプランを練ろうと考え、一つの方向性として『ツッコミ』を誘うコミュニケーションに着地しました。

視覚的なインパクトをつくるコト。
肩コリのケアについては、これまで学術的なアプローチなどで語られてきましたが、今回はターゲットが若者ということもあり、より視覚的なインパクトを作り、誰にでも感覚的に理解しやすくすることで話題化に繋げていく必要があると考えました。肩コリという目に見えないお題だからこそ、可視化にこだわることになりました。

③SNS上の文脈を意識するコト。
視覚的なインパクトと並んで大事にしたのは、“SNS上の文脈を意識すること”です。肩コリのケアについて、老舗企業が正論を真正面から伝えるだけでは、ターゲットへのメッセージが伝搬しないと考えました。SNSで話題になるであろうトピックを爆発させる方向でプランニングしました。

これら3つの方向性を以て、社内会議用に各プランナーがアイデアを出していきます。このとき出すアイデアは、「大体こういうイメージで~」とかなりラフなものを持ち寄ることが多いのですが、その中でも『これがどのように話題化につながるのか?』の論拠とともに社内会議に案を提出できると、より良いディスカッションにつながり、優れた企画が生まれていきます。

ちなみに、オズマピーアールでは最大でも4名ほどのメンバーで社内会議を設定し、各自のアイデアを持ち寄ることが多いです。強い根拠があるわけではないのですが、3~4名くらいの人数だと多すぎず・少なすぎず、アイデア出し~ディスカッションができる気がしています。

さて、社内会議で出たアイデアを全てココで出すのは控えますが、「レトロ文脈に振り切った企画をしよう!」とか、「バズを狙うなら猫とモフモフしましょ!」などなど、かなり自由な発想が飛び出し、社内会議でのディスカッションが盛り上がりました。これは、先んじて決めた提案の方向性が、チームメンバー全員の視点をまとめてくれたおかげだと考えています。

そして、この社内会議で最も盛り上がったアイデアが、今回実施につながったファッション企画でした。ここで質問です。皆さんは、SNSのタイムラインで「ユニークすぎるファッションショー」の画像や動画を見たことありませんか?(※ピンとこない方は「ファッションショー おもしろ」で画像検索をしてみてください。)

デザイナーの個性が爆発したような奇想天外なファッションショーは、その視覚的なインパクトをもって、SNSのユーザーの“シェア欲”を掻き立てている様子をよく目にします。我々はこの文脈を『企画』に落とし込むことにしました。

COLUMN:プランナーを目指す学生の皆さんへ
企画のアイデアを練り上げることはプランナーにとって重要な仕事ですし、多くのプランナーにとって最も活き活きとする瞬間です。が、大変なのは実現可能な企画に落とし込むことです。「フィジビリティ」とかいうやつです。余談ですが、どんなに面白くてしっくりくるアイデアが思い浮かんでも、社内の企画会議の場では「ジャストアイデアなんですけど~」と前置きをして話してしまうのは“プランナーあるある”です。

3.話題化を興すための“真面目”と“不真面目”。 -『アイデア』を『企画』にするために

続いて、企画会議で話しあったコミュニケーション全体のイメージを企画書に落としていくにあたり、細かな点をかためていきます。

諸々の精査にあたり、あらためてピップさんからのオリエンの中から、あらためて「2.コリをケアすることの価値訴求をしたい。」に応えるべく、さらに深堀りして提案を考える必要がありました。ファッションブランドではないクライアント(ピップ社)に対し、「“コリケア”の価値をターゲットに対して、どのようにファッションの文脈で訴求していくか」を魅力的に提案できるか、が今回の提案において最も難しいポイントでした。

我々は今回、その突破口として、デザイナーの個性の中に“コリケア”を織り交ぜることで、「ユニークな見た目なのに、中身が真面目」という文脈づくりを軸に提案することを意識しました。また、“ファッション”という若者が注目しやすい文脈にすることで、普段「肩コリ」について考えない層へのアプローチにつなげ、掲載されるメディアの出目を増やすというメリットもあわせて提案することにしました。

「ユニークな見た目なのに、中身が真面目」という文脈づくりについて、もう少し解説したいと思います。

若者へのコミュニケーションにあたっては、「視覚的なインパクトが効果的に働きそう」ということはPRに従事していない方にもご納得いただけるポイントだと思いますが、メディアでのパブリシティにつなげ、ターゲットへの深い理解につなげるにはしっかりとしたエビデンス(根拠/裏付け)が必要です。その部分を補うために、企画書の時点で『人間工学』のプロフェッショナルによる監修を企画における最も重要なポイントとし、「アウトプットはユニークだけど、伝えたいことは至って真面目」になるようアレンジをしました。

「視覚的に面白いネタでバズる!」というSNSでの盛り上がりを考えただけに見える文脈に、企業が本気で取り組んでいる事例は他にもたくさんあり、それをピップでもトレースできないかと考えてみました。

4.さいごに

このプロジェクトを通して、20代~30代の6割が「肩コリを放置していたこと」に気づき、7割の人が「肩コリを解消したい」というリサーチ結果が出ており、強い意識変容を起こすことに成功しました。広報的な結果としては、コリナイ・コレクションに関するメディア露出の件数は655件、SNSでの言及数は3,100万件、特設サイトへの流入数は52万PV、そして動画の再生回数は約5万回を記録しました。

また、それまで最も購買者数の少なかった20代男性の商品購入が前年比125%に増加。店頭とのコミュニケーション連携は、当初1万店での連携から、1万2千店での連携へ発展することになるなど、売上への貢献も達成しました。

今回は周年企画の事例として、ピップエレキバンの50周年企画『コリナイ・コレクション』の企画の作り方について、ご紹介しました。
今回の企画提案にあたって意識したことをまとめると、

  1. アウトプットイメージをチーム全員で持つコト。

  2. 可視化のインパクトだけでなく、その背景までPRに活かすコト。

  3. メッセージを届ける先の話題化の文脈を意識するコト。

であったと振り返ります。

オズマピーアールでは創業から60年近く、総合PR代理店として様々なPR企画を提案・実施してきましたが、『コリナイ・コレクション』はその中でも特にチャレンジングな企画だったと思います。ですが、忠実にPR視点でのアイデアを練り上げることで、評価してもらえる企画を生み出すことができました。

また、企画の成功の背景には、千葉大学の下村先生や、文化服装学院さんの協力があったおかげです。この場を借りて御礼申し上げます。次回のnoteでは、そんな文化服装学院さんとの「産学連携」について、お話します。

「このnoteを読み終わったら、なんだか肩が凝ってきたヨ・・・。」
そんなあなたには、コチラ

執筆:角田柾貴

2018年に新卒で入社以来、ITサービス、通信、家電、デザインなど、幅広い業種のPRを担当。情報開発・設計から実施まで一貫して手掛ける。どちらかというと、ごちゃごちゃした部屋が好き。

プロジェクトメンバー
∙ リレーションズデザイン本部 統合コミュニケーション戦略部
シニアPRディレクター 登坂泰斗
∙ リレーションズデザイン本部 統合コミュニケーション戦略部
PRディレクター 早藤優樹
∙ リレーションズデザイン本部 リレーションズデザイン2部
PRプランナー 谷美貴子
∙ リレーションズデザイン本部 リレーションズデザイン2部
PRプランナー 角田征貴
∙ リレーションズデザイン本部 統合コミュニケーション戦略部
PRプランナー 秋月滉一朗
∙ リレーションズデザイン本部 統合コミュニケーション戦略部
アカウントエグゼクティブ 橋本功哉


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