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和漢植物のPRから生まれたクラフトコーラ~統合コミュニケーション事例バスクリン「Ginger Ginger Cola」~
前回の統合コミュニケーション戦略部の紹介に続いて、我々が担当させていただいた具体的な事例をご紹介しながら、PR会社ならではの統合コミュニケーションをひも解いていきます。今回取り上げるのは、オズマピーアールが数年にわたりPRのご支援をしている、バスクリン様の「Ginger Ginger Cola」です。PR施策で商品開発に帰結するケースは多くはないですが、「PR視点の情報設計」における最適解として、今回はプロダクト開発に至りました。今回パッケージのデザインも担当させていただき「日本パッケージデザイン大賞2025」にて入選した統合コミュニケーション事例を深掘りします。
<スピーカープロフィール>
鳥居保人
統合コミュニケーション戦略2部 部長
日雑・食品メーカー、商業施設などの定常的な広報活動のコンサルティング、マーケティング~コーポレートPRまで、多種多様な企業の様々なPR活動を担当。現在は、BtoB企業様の統合コミュニケーションや、PR視点でのファクト開発をベースとしたクリエイティブ・PRアクションの企画/制作に取り組む。約4年に渡りバスクリンの広報コンサルティングを担当。
朝嵐友香
統合コミュニケーション戦略2部 コミュニケーションディレクター
デザイン事務所、制作会社を経て2023年オズマに入社。企業の広報活動の中で生じるコンテンツ制作のディレクション、プロデュースを担う。ファクトをベースに構築したコアメッセージやPRストーリーをクリエイティブとしてより良い形で昇華させることをミッションに、クリエイティブの側面から統合コミュニケーションの強化に取り組む。
「和漢植物の研究」という強みをどう感じてもらうか
――まず、「Ginger Ginger Cola」について教えてください。
朝嵐:「Ginger Ginger Cola」はバスクリン様が独自で栽培している、ショウガを中心として開発したクラフトコーラです。クラフトコーラ業界の先駆者であるUMAMI COLAさんの協力の下でレシピ開発、製造、特設サイトにて限定販売しました。
レシピの決定をバスクリン様に担当いただきましたが、社内の皆さんや取締役にも試飲していただき、好評でした。お取引先様などにも提供され、その際に商品の背景や和漢植物研究の強みなどが話題に上がるそうです。そんなふうに使っていただけているのは、非常に手応えがあります。
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――バスクリン様とは、すでに数年のお付き合いがあったそうですね。本企画の発端は?
鳥居:4年ほど、商品リリースを中心とする広報業務のお手伝いをさせていただいています。同社は歴史とブランド認知がある一方、入浴剤だけでも商品数がとても多く、すべてに等しく予算をかけるのは難しい点があります。そこで、企業PRを通して商品全体へとPR効果を波及させるのはどうか、とご提案しました。
では企業として何を打ち出すかというと、同社の入浴剤のコアになっているのは、同社の前身である津村順天堂(現 株式会社ツムラ)時代から100年以上続く「和漢植物の研究」だとお聞きしました。その認知を改めて促進し、和漢植物研究がバスクリンの優位性であり独自性だと伝わるようなコミュニケーションの方向性が見えてきました。
――和漢植物研究の強みを印象づけるPR、というのがスタート地点だったんですね。
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鳥居:はい。改めて市場環境や生活者の状況を探ると、①コロナ禍で在宅時間が増して新興の入浴剤が増え競争が激化しつつ、②片や若年層は入浴から離れがち、という課題が浮かび上がりました。また、和漢植物が世の中でどう語られているかをテキストマイニングで調べると、「食」が目立ち、薬膳料理などの食と相性がよいこともわかりました。そこから、「食品や飲料=プロダクトに落とし込む」というアイデアが生まれました。
「バスクリン×コーラ」の意外性と、企業の信頼性のバランスを図る
――具体的に「クラフトコーラ」にする発想は、どういうところから?
鳥居:食を切り口に、薬膳料理や食品、あるいは食堂の運営なども考えましたが、あまりにストレートすぎるし、若年層のアピールとしても少しズレがあって。別の視点で、「若年層と入浴」を考えると、昨今のサウナブームや銭湯ブームが浮かぶと共に、入浴とドリンクをセットで楽しむ日本の入浴文化に行き着きました。その文脈で、バスクリンのオリジナルのショウガを使った飲料ができれば、すでにあるお風呂好きやサウナ―といったコミュニティから話題化を望めるのでは、と。さらに議論する中で、ショウガを軸に他の和漢植物などを掛け合わせれば、これも近年ファンが増えている「クラフトコーラ」ができそうだ、と。
――入浴剤と飲料は、すぐには結びつかないようにも思えますが、提案はスムーズでしたか?
朝嵐:そうですね、実は「健康」という軸で、入浴と食は密接です。バスクリン様の考えとして、そもそも「温浴効果で健康を増進する」ことがベースにあり、公式サイトの社長メッセージにも「自然のチカラで、人間本来のチカラを取り戻す。」と謳われているんですね。実際、入浴前後の飲食を工夫することで、健康増進の相乗効果も見込めます。
一方、PRの受け手である生活者の方々には、ご指摘のように「バスクリン×コーラ」の意外性を狙いました。同社の信頼感や真面目なイメージと齟齬がないよう、さじ加減は重要でしたが、展開の仕方でプラスに働くと考えました。
――とはいえ、PRのために具体的な製品をつくるのは難しそうです。製造や在庫管理はどうされたのですか?
鳥居:そこは、座組でカバーしました。今回、バスクリン様は材料の提供や入浴前後に好ましい要素など、レシピの検討にかかわる形で、実際の製造と販売はUMAMI COLAさんに打診し、「umami COLA×BATHCLIN」のコラボ商品として協力いただけることになりました。
バスクリン様には、最初の提案時からこの座組の部分も含めてご説明しました。それでも社内では議論もあったようです。最終的には4年間ご一緒させて頂いているご担当者様が、我々の企画に強く賛同いただき、うまく社内合意を取っていただいたのが大きかったです。
銭湯イベントが好評、バスクリン製品の使用意向も向上
――今回のネーミングやデザインは、どのように具現化したのですか?
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朝嵐:背景を踏まえて、何がフックになるかを鳥居とすり合わせた上で、今回はDODO DESIGNさんにデザインを依頼して絞り込んでいきました。私自身、前職の広告系の制作会社からPRの世界に入り、ファクトを伝えるにはどうしても文字が多くなると実感しています。ただし情報を“全部乗せ”にすると、視覚的に印象に残りません。PRにおけるクリエイティブは、その塩梅を探るのが重要だと感じています。
今回の大きなポイントは、部屋においてもインテリアとして成り立つ、若い人に好まれる見た目でした。もうひとつは、バスクリンの皆様から「バスクリン“らしさ”を外したい」というご希望があったので、同社や入浴剤自体を連想させる案は除きました。また「ショウガ感を出す」ため、ネーミングはシンプルに「Ginger」を重ねて強調し、パッケージもショウガをより際立たせながら、フォントなどで洒落た感を出しました。
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――2023年、11月26日(いいふろ)の日に発売になりました。どんなプロモーションをしましたか?
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鳥居:11月26日の発売は当初から決めていました。また通常のメディアコミュニケーションに加え、同社は入浴文化を支えてきた企業なので、親和性のある情報設計を考えて、銭湯イベントを企画しました。
同じく長い歴史のある、墨田区の黄金湯(こがねゆ)さんの協力で、前日の25日(土)に試飲会を開催しました。サウナや銭湯系のインフルエンサーさんも招待し、施設内にポスター掲示、試飲用カップにはパッケージのシールを貼って印象を深めました。同じデザインのコースターには、裏面に開発意図とQRコードを入れることで、持ち帰ってもらった後にバスクリン様のメッセージを伝える役目としました。
――メディア露出やSNSの広がり、イベント開催の結果などは?
鳥居:リリースを配信した11月20日から年明け1月上旬までで、Web記事を中心に250件以上のメディア露出があり、Xではリポストを含めて100万件以上がこの話題に触れられました。
黄金湯での試飲会はXでも多く投稿され、バスクリンの社員さんもプライベートで来てくれたりと、とても好評でした。予定になかった翌日の日曜も試飲会を実施し、2日で約1,000名が訪れ、アンケートではGinger Ginger Colaへの満足度だけでなく、バスクリン製品の使用意向も向上しました。
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朝嵐:来場者からは、特に若い方々に「デザインがかわいい」と多く言ってもらっていましたね。スタッフ向けにパッケージデザインをTシャツにしたら、バスクリンの皆様から「ほしい」と反響があり、高評価と受け取っています。
情報の“全部乗せ”では伝わらない。PRにおけるクリエイティブ
――改めて今回のポイントと、手応えを教えてください。
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鳥居:PR効果の点では、ある程度の狙った結果は得られました。もちろん、そうなるように緻密に戦略を立てますが、PRは想定通りにいくわけではありません。その点、今回は感触や使用意向などがきれいに出たと思います。
通常、メディア露出を実現しても、それに接触した方々がどう態度変容や行動変容をしたかまではわかりません。今回は、実際に試飲いただいた上でバスクリン製品への態度変容が取れたので、よりPRの効果が具体的につかめました。
――こうしたプロダクト開発への落とし込みは、ほかにどういう業種や業態の企業で生かせそうですか?
鳥居:ひとつ、ロングセラー商品での実施は有効だと思います。広い支持の上で改めて注目を集め、売上につなげる課題に際し、PRの情報設計で、今までの資産を生かした「新たな訴求ポイント」を作り出すことができます。その際に具現化された“モノ”があると、SNSで広がりやすいですね。ただ、朝嵐のような、PR会社とデザイン会社の間をうまく橋渡ししてディレクションできる人が必要だと今回の取り組みを通して実感しました。
朝嵐:今回の事例はプロダクト開発が目的ではなく、あくまで「情報設計におけるプロダクトの活用」です。PRの考え方は「視点をどうつくるか」ということだと改めて学びました。メーカー様だけでなくサービス系のクライアントでも、情報の出し方と具現化の仕方によって、存在感を高めることができると考えています。
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