イラスト10

としのはなれた友だち 4

友だちとはたまにしか会えない。友だちは隣の隣の県に住んでいるためだ。でも、会うたびにいろんな言葉を覚えてくるので感心している。

よく言われる言葉で印象に残っているのは「あーちゃん大好き」だ(私はあーちゃんと呼ばれている)。

ド直球愛情表現すぎて完全に照れる。毎回「ありがとう」としか返せない。純度100%の言葉だ。

彼くらいの年齢だとその言葉に対して「恥ずかしい」という気持ちは発生しないのだろう。そしておそらく、打算で言っているわけでもない。ただ、言葉の意味を完全に理解しているかといえば、それはわからない。口から出る言葉ほど不確定なものもないからだ。

とはいっても、同じくらい大嫌いとも言われる。ケンカになることもしばしば。しかして、23歳差の感情のぶつけ合いは徐々に失速していく。私たち各々が確かに抱いていた感情は、なにかで遊んだりものを食べたり歩いたりして時間が過ぎていくうち、晴れかけの霧のように薄れてどうでもよくなり、おおよそは友だちがふいにぶっ込んでくる変顔で再び平和が訪れる。

世界の大人たちは理性と書面で平和を約束するが、変顔ひとつで平和になれればこれほどエコなことはない。

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