ポジティブ・ケイパビリティとネガティブ・ケイパビリティ|@GVチームランチ
ジェネシア・ベンチャーズの吉田です!
本稿は、私たちのチームビルディングの取り組みについて(まだまだ発展途上ではあるものの、そのトライ&エラーの経過も含めて)ご紹介する連載の一部です。
連載の序文・前提としてこちらにも書いたとおり、私たちは、
・明確な答えがない”問い”に対して私たちらしく考え続けること
・そして実際に、私たちらしくアクションし続けること
・その中にまた、私たちらしさを見出していくこと
という姿勢を持ち続けていきたいと考えており、その機会として、月に一度1.5時間ほどランチの時間を利用して、相互認識を深めるようなテーマでコミュニケーションをしています。
”各メンバーの「自己認識」と「自己開示」をベースに、ディスカッションではなく、「相互認識」(違いやありのままをそのまま受け止め合う)時間“という設定です。
「多様性」という言葉がフォーカスされるようになっている中で、初期的にはその“多様さ”は、性別・国籍・世代・バックグラウンドなど、目に見えやすいもので表現されやすかったりします。一方で、本当の“多様さ”はその人の内側の目に見えにくいところにもあるものだとも思っており、毎回それらを共有できるようなテーマを設定しています。
今回のテーマは、「ポジティブ・ケイパビリティとネガティブ・ケイパビリティ」です。
※引用元や参考文献は末尾にまとめて記載
ポジティブ・ケイパビリティとネガティブ・ケイパビリティ
まずはそれぞれの定義から。
▼ポジティブ・ケイパビリティ
目標を明確に掲げて、それを阻害する要因に対応することで、問題解決を推進する志向性。スピードが求められる膨大な情報処理的な業務に向いている。
▼ネガティブ・ケイパビリティ
事実や理由を性急に求めず、不確実さ、不思議さ、懐疑の中にいられる志向性。時間のかかる創造的な業務に向いている。
ポジティブ=明るい、良い
ネガティブ=暗い、良くない
のようなイメージを持ってしまうかもしれませんが、これらはそういう意味ではなく、それぞれが「ケイパビリティ(能力)」です。良い<>悪いというものでは当然なく、また、本来のものに加えて、環境によって左右されたり、偏りが出たり変化したりするもののようです。(以前にテーマにした「優位感覚」に近いものかもしれません)
また、白か黒かというものでもなく、スペクトラム/グラデーション状の特性になるそうです。
もちろん、この特性だけでその人のすべてを判断できるものではありませんが、「この人は〇〇側の傾向が強そうだから、△△の場ではその傾向を活かしてもらおう。一方で、◇◇の場ではもう一方の特性も発揮してもらえるようにコミュニケーション/ファシリテーションしよう」など、
チーム(社内全体)や一緒にプロジェクトを進めるメンバー同士、また、私たちで言えば投資先スタ-トアップの起業家・経営メンバーなどと、こうした特性をイメージしたり共有し合ったりすることで、コミュニケーションがより円滑になることがあるかもしれないと考えました。
つまり、ありのままの特性を認識し合い、それを最大限活かし合うのと同時に、場に応じて両者を行き来できるようなコミュニケーションやアクションを促すことが可能なのではないか、また、こうした特性を認識し合うことで、採用や組織作りの参考にもなるのではないかと考えました。(もちろん、プライベートにも応用可能かと思います)
それぞれの特性を表すキーワードってどんなものがありそう?
上記のような定義を認識した上で、さらにそれぞれのケイパビリティの理解を深めるために、連想されるキーワードを挙げて(集めて)みました。
▼ポジティブ・ケイパビリティ
・効率性
・成果目標
・「これは何の意味があるのか?」「何のためにやるのかわからない」「もっと効率的にできないのか?」
・速い
・遂行力、プロジェクト型?
・「わかる」に向き合う
・直線的
・同期コミュニケーション(オフライン)でパフォーマンスを発揮しやすい?
・深化(例:就職を目指して簿記資格の勉強をしている大学生)
▼ネガティブ・ケイパビリティ
・偶発性
・「これもいい」「あれも気になる」と脱線しがち、あいまい、目標やタイムスケジュールを見失いがち
・時間をかける、ひらめきを待つ
・柔軟なアイデア、新規事業創出型?
・「わからない」に向き合う
・曲線的
・非同期コミュニケーション(オンライン)でパフォーマンスを発揮しやすい?
・探索(例:アーティストを目指してインスピレーションを得るために旅に出る大学生)
自分はどういう傾向があるだろう?それを感じるエピソードは?
次に、各メンバーに、自分の特性について感じることを自由に話してみました。
周りの人にはどういう傾向があるだろう?それを感じるエピソードは?
次に、自分の周囲にいる人たちを眺めてみてもらい、その特性について感じることを自由に話してみました。
振り返り
以上のように、今回はポジティブ・ケイパビリティとネガティブ・ケイパビリティという特性の共通認識を持つところから、自分や周囲の人の傾向について共有する機会にしてみました。
以下にその中での気づきや今後意識・実践していけそうなポイントをまとめました。また、中には「××のような場合はどちらの傾向と判断できるんだろう?」「そもそも××というポイントは、今回のテーマに照会して考えていいものだろうか?(まったく別の特性からくるものだろうか?)」と、私たちでは判断が難しいようなケースもあったので、メモとして残しておきたいと思います。
時間軸との関係
時間軸が長い=ネガティブ・ケイパビリティとシンプルに考えることもできるが、そもそも時間軸が長い目標設定がされている中でポジティブ・ケイパビリティを発揮していることもある。その場合は、ネガティブ・ケイパビリティを発揮しているように見える?一方で、探索や思索のスピードが速いネガティブ・ケイパビリティの持ち主は、ポジティブ・ケイパビリティを発揮しているように見える?
└ポジティブ・ケイパビリティの人は、プロジェクトの期間が極端に長いとアクションを維持できないのでは?短中期的なチェックポイントを設けることで解消できるのでは?寄り添いの難易度
ポジティブ・ケイパビリティ傾向の人がネガティブ・ケイパビリティ傾向の人へ寄り添う方が難しい?ネガティブ・ケイパビリティ傾向の人の方が、「のんびりしている」「目標達成思考が弱い」「数字へのコミットが弱い」「曖昧」「無鉄砲」「気が散っている」というように見られてしまいがちかもしれない。特に仕事の場においては、これらの特性や傾向が=仕事のできなさや無目的さのように見られてしまうこともあるのかも? └アクションやスピード感の背景を探るコミュニケーションができたら良さそう。もちろんこれらの特性に起因するものだけではないるが、一つのヒントにはなるのでは?重要なポイント① 対話・コミュニケーションでの確認
重要なポイント② 自己認識と、環境による使い分け
重要なポイント③ 他者認識と、相手によるマネジメント
繰り返しになりますが、もちろんこれらの特性だけで、人の多様な面を一概に判断することはできません。特性に関するいろいろなキーワードも挙げてきましたが、アウトプットやアクション(目に見えるもの)だけで外から判断することもできません。つまり、結局は自己認識と他者認識を深めるための「対話」が必要だということ。ここをおろそかにしては、それはただの短絡的な決めつけです。「対話」や「コミュニケーション」をしっかりと実施した上で、共通認識を持ち、関係性やアクションプランを検討していけると良いのではないかと思います。
おわりに
これは以前にも書いたことですが、
私たちのコミュニケーションは基本的に、「犬」や「魚」、「走る」や「食べる」という共通言語があるから成立しています。個人的には、この共通言語というものが、”人の内側のあり方や状態・動き”(目に見えない部分)については、まだまだ少ないと思っています。だから、「あの人とは合わない」「あの人はよくわからない」「わかり合えない」「なぜ同じようにできないのか」ということが生まれるんじゃないかと・・
でもそこに、“違いがある前提の共通言語”があれば、何がマジョリティで何がマイノリティだなんて思うことは限りなく少なくなるのではないでしょうか。
「普通こうするでしょ・・」「何でこんな当たり前のことがわからないの・・」「みんなできるのにできないなんておかしい・・」「あの人は私と違っているから聞く耳を持たなくていい・・」なんてことを思ってしまい、人を思いやるどころか虐げようとしてしまうことも、少なからずあるはず。これは、それらが表現しづらく認識しづらいものだからだと思います。(だからこそ自分自身やその周囲に基準が偏りがちにもなる)
つまり、そういったことが表現しやすく認識しやすいものになれば、「普通」や「当たり前」なんて幻想も、「おかしい」なんてフィルターも、外れてくるのではないでしょうか。
「当たり前」が固定化し、相手を変えるという発想に固執するばかりでは、思考も行動も前に進みません。(自戒)
だから、こうして、お互いの違いについて伝え合うことや認識し合うということ、そして、お互いの中に“違いがある前提の共通言語”を増やしていくことは、より強いチーム・組織づくりのためのコミュニケーションにもなるのではないかと思います。
違い=わかり合えないものとネガティブに考えるのではなくて、共通言語を増やして、自分の個性を認め、相手の個性も認め、その違いを認め、その上で自分たちに合ったやり方を検討していく、というポジティブな行動に変えられたらとても素敵だなと思います。
私たちもこの学びを、自分自身とチームの成長に活かしていけたらと思っています。
これからもこうしたテーマにいろいろな角度から向き合っていきたいと考えていますし、ぜひたくさんの方と情報交換していきたいと思っていますので、ご興味があればぜひお声がけくださるとうれしいです!
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最後に、お知らせです。
ジェネシア・ベンチャーズは、「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会を実現する」というビジョンを掲げ、次の大きな産業を生み出すための「共創」の場=プラットフォームをつくろうとしています。そして、そのためには、社会全体が一つのチームとしてそれに向かう必要があると考えています。TEAM by Genesia.は、そのためにつくったコミュニティです。ご興味をお持ちいただけるようでしたら、ぜひ以下のリンクからご登録ください!