never give up
典型的な中山間地域の古殿町。
自然は豊かですが、農業をする環境としては
お世辞にも向いているとは言えません。
日照条件や圃場の広さ、形状にも難が多く、耕作放棄地の増加や農業従事者の高齢化なども加速しており課題は増える一方です。
そんな話をすると、
「それは古殿だけじゃなくて、
どこの町村も一緒だよ」
とよく言われます。
ですが、その言葉はどこか遠回しに
「諦めなよ」
と言われているようで非常に悔しいのです。
私は日々、
「現状維持ではなく一歩でも前へ」
という目標を掲げています。
『流れる時間の中で、現状維持とは、
すなわち衰退を意味する。
だからこそ動き続ける。一歩でも。
一歩前へ出ようと思ったら、むしろ
三歩くらい前まで進むような感覚で丁度』
と思っています。
そんな中、
常識にとらわれない新しい 【古殿農業】の
形を見せて地域を盛り上げたいと、
ハウスブドウ栽培を始めました。
きっかけは隣接する平田村の農家さんからの勧めでした。
ブドウ栽培は水稲中心の農家を継ぐ私にとってメリットが多かったのです。
夏場、田植えから稲刈りの間は田んぼ周りの草刈りや水管理などがメイン。
これらも重要な作業ですが、直接収入には結び付きません。
ブドウは田んぼの作業とピーク時期が重ならず、夏場に収入を作れます。
さらに方法によっては、水稲用育苗ハウスを利用しての栽培が可能という相性の良さ。
フルーツ王国福島といえど、地元古殿町は
果樹農家が皆無に等しい状況でした。
町内に新しい農作物を生み出すことは
地域おこしにつながると信じて取り組んでいます。
当初は半信半疑に「古殿でブドウなんか作れるの?」と聞いてきた町民の方もいましたが
最近では気にかけていただくことが増え、「使わなくなったビニールハウスが空いてるから植え方を教えてほしい」と声を掛けてくれる方も現れました。
地域にほんの少しではありますが、風穴が開いた気がしています。
農業を語る上で今後外せないのが
ロボットの導入です。
現状、中山間地域で実用できるロボットは
少数に限られています。
試験圃場のほとんどは比較的条件が整った場所が多いため、不利な条件が多い私としてはロボット導入に関心が薄かったのです。
「AI任せの管理は信用できない」
「この辺の規模の圃場では使用できるレベルではない」
と勝手なイメージで評価していました。
しかし昨年、
ご縁がありドローンの免許取得と農薬散布のオペレーター業務に携わらせていただいたことで、機械化にも興味を持ちはじめ、
「今はまだ大型圃場での試験がメインだけど、これはいずれ悪条件の圃場でも作業できるよう進化させるための布石なのだろう」
と考え方が変わりました。
機会があれば、中山間地域仕様ロボットの
試験圃場を提供するなど、積極的に取り組みたいと考えています。
担い手不足の課題から逃げることなく解決に向け、農業そのものの魅力を伝えていくのはもちろん、機械化での身体的・精神的負担の軽減を視野に入れながら、農業分野で地元に新規雇用を生み出したいです。
そして、都会の真似をするのではなく
田舎の良さを発信し
古殿町の移住者の増加に繋げることが
今の私の夢でもあります。
福島民報新聞 民報サロン
2022年3月4日 掲載