見出し画像

食品保存袋で半割ダイコンを沢庵漬にしてみた

 秋に高温がつづいたためか、秋冬物野菜のできが悪い。わが菜園では、気温が高く推移しそうなのを見越して種播きや植付けを遅め遅めにしたが、芽が出なかったり、虫に食われたりで惨憺たるありさまだった。案の定、市場でも高値がつづいた。12月に入ってようやく落ち着いてはきたが、正月を控えてまた値上がりしている。とくにキャベツや白菜、ブロッコリー。

 わが菜園は狭いなかで多種類の野菜を回しているので、少しずつ時期をずらしたりしてリスク回避することがむずかしい。白菜は虫除けネットをかぶせたにもかかわらず、葉を無惨にもかじられて初期成長が悪く、まだしっかり巻いていないありさま。寒くなったので、このままで終わりそうだ。害虫が少ないホウレンソウも小型のカタツムリ(多分オナジマイマイ)に食われたらしく、あまり成長しないまま「寒締め」の季節に入ってしまった。なんとか例年並みに収穫できたのは水菜(千筋京菜)くらいだ。

 さて、ダイコンは栽培にけっこうスペースがいるし、近くの農協直売所や無人販売所に安く出るし、いただくこともよくあるため、つくっていない(今年もたくさんいただいた)。11月30日に書いたように、12月に入ると葉つきのものが出回るようになり、(今年はわからないけれど)正月を過ぎると葉はなくなるがけっこう太いのが1本100円くらいで買えるので、それをせっせと切干や漬物にする。切干にしておけば半年くらい使えて重宝する。漬けるときも干すひと手間をかけるようにしている。

 ダイコンは干すことで風味が増す。水分が飛んだ分だけ成分が凝縮されることもあるが、日光の作用でデンプンが糖化したり、うま味を感じさせるアミノ酸がつくられたりするからだ。それに味がしみ込みやすくなる。

 わが家のダイコンの「Qちゃん漬」は、干したダイコンを漬け汁に漬け込むだけ。ダイコンを鉛筆を削るような要領で荒く削ぎ切りにし(皮はむいてもむかなくても好みで)、ざるに広げ日に当てる。快晴の日なら朝から夕方まで干せば、かなりしんなりする。酢・砂糖・しょうゆ・みりんを1:1:1:1(つまりすべて等量)で鍋に入れて沸騰させたところに干し上がったダイコンを加え、ざっと混ぜて火を止める。冷めてから容器に移して一晩おけば食べられる。好みで輪切唐辛子や柚子の皮、生姜など加える。

 今年は沢庵漬に挑戦してみた。子どものころ沢庵を漬けるのは明治生まれの祖父の仕事だった。年末、ダイコンがとれると木桶に何十本も漬け込んでいたことを思い出す。沢庵とはいわず、たしか「おこうこ」といっていた。

 沢庵漬には、練馬尻細大根のような白首の細長い大根が使われる。丸ごと干したダイコンを米ぬかと塩・砂糖で漬け込み、着色にクチナシの実やウコン(ターメリック)を加える。ダイコンが干し上がるまで2週間、それから漬け上がるまでだいたい1月ぐらいかかる。つまり、食べられるまでひと月半。

 大量に漬けるわけではないし、もうちょっと簡便な方法はないか。「ジップロック、沢庵漬」と、ネット検索しても、出てくるのは干さないで調味液に漬ける即席の「沢庵もどき」ばかり。せいぜい塩で水分を抜くくらい。昨今、市販の沢庵漬もほとんど「もどき」なのだそうだ。

 塩漬でなくやっぱり干したい。

 漬け床には米ぬかを使いたい。

 そこで、思いついたのが、ダイコンを半割にすれば、干すのも漬けるのも時短になるのではないかということ。やってみた。

 直売所でできるだけ細長いダイコンを買ってくる。白首がいいのだが、なければ青首でも(ただし青首は少し辛い)。半割にするのがけっこう難しいが、多少いびつでもいいことにする。2本分をすずらんテープでくくり、ベランダに干す。今冬はカラカラ天気がつづいたので5日もしたらしんなりして、いわゆる「つの字」に曲がるようになった。こうなれば漬けられる。干し大根をレシピにある漬け床とともに食品保存袋に入れ、重しを置く。重しには本を使った(笑)。

 漬けて翌日には水が出てくる。そのまま待つこと2週間(10日目に最初の味見)、みごとに沢庵漬になった。ひと月半(45日)が20日に短縮。ダイコン丸ごとだと芯までなかなか漬からないのだが、半割だとこれが早い。乳酸発酵による酸味も少し出ている。この分量で、仕上がりの塩分は約2.5~2.4%(砂糖の量による)だが、ダイコンにはそこまで塩分はしみていない。なので、漬け終わったあとは冷蔵庫での保存をおすすめする。低塩なので早めに食べきる必要があるし、つくって食べてまたつくる、という感じになる。一度につくっておくのと手間は変わらないかもしれない(笑)。

 もちろん祖父の時代には、漬物を冷蔵庫で保存するなどという考えはなかった(そもそも冷蔵庫がなかった)。一度に漬けて長くもたせるには、塩辛くする必要があった。その点では本格沢庵漬とはいえないのかもしれないが、少なくとも「沢庵漬もどき」よりはずっと、祖父の沢庵漬の味に近いと思う。

 さらに、手製の段ボール燻製器でいぶし、秋田名物の「いぶりがっこもどき」にしてみた。これも美味くできた。

半割にしてベランダにつるす。この回は白首大根が手に入らず青首。
「つの字」に曲がれば漬けられる
重しをし数日漬けて水が出た状態
できあがった沢庵漬(こちらは白首大根)

●レシピ
 干しダイコン2本分 約1kg(干し上がりの重量)
<漬け床>
 ①米ぬか 150g(ダイコンの重量の15%)
 ②塩 30g(ダイコンの重量の3%)
 ③砂糖 30~60g(ダイコンの重量の3~6%)、甘めが好みの方はもう少し多めでも
 ④柿またはリンゴの皮 1個分
 ⑤ターメリック小さじ1(またはクチナシの実1個を砕いて)
 ⑥輪切り唐辛子 少々(好みで)
 ①~⑥を混ぜ、大きめの食品保存袋(ジップロックなど)に干しダイコンと交互に入れる。
 空気を抜いてしっかりと口を止める。
 念のためさらにビニール袋などに入れて上から重しをし、2週間ほど冷暗所におく。漬け床から取り出して、洗わずに別の保存袋か容器に入れて冷蔵庫保存。

いいなと思ったら応援しよう!