『明日の食卓』を観て思い出したあの頃のこと。
5月28日(金)公開の映画『明日の食卓』を一足先に拝見させて頂きました。
椰月美智子さんの同名小説を映画化したもので、大好きな瀬々敬久監督作品の最新作です。
映画『明日の食卓』公式サイトはこちら👇
ストーリー
同じ”石橋ユウ”という名前で、年齢も同じ小学5年生の男の子を育てる3人の母親たち。
神奈川在住・仕事復帰をしたばかりのフリーライター石橋留美子(菅野美穂)43歳、
大阪在住・シングルマザーでアルバイトを掛け持ちする石橋加奈(高畑充希)30歳、
静岡在住・専業主婦で夫の実家の隣に住む石橋あすみ(尾野真千子)36歳。
それぞれが忙しくも幸せな日々を送っている。しかし、些細なことがきっかけで徐々にその生活が崩れていく。どこで歯車が狂ってしまったのか。
三つの石橋家がたどり着く運命とは…。
まず思ったのは、
これは他人事じゃない、わたし自身の物語
ということ。
私も仕事をしながら2人の子供を育てる母親です。
今でこそ子供たちもだいぶ大きくなり、育児でヘトヘトに疲れ果てるような生活からは解放されましたが、子供が小さいうちはそれはもう、本当に本当に大変でした。
なので、スーパーで子供が騒いでしまい周りからジロリとした目で見られること、
子供の話をろくに聞きもせず感情のままに叱り付けてしまうこと、
何度ダメだと言ってもまたやるから輪をかけて叱ること、
そして叱り散らした後は、決まって自己嫌悪に陥り自分を責める。
その繰り返し。
疲れ果てて感情がぷつんと切れてしまい、ボロボロ泣いてしまうあの感じ、、、
分かる分かる…、こんなことあったなあ…。
なんて思い出し、胸がチクチク、ズキズキしました。
さて、上の子が幼稚園に入るにあたり、どの幼稚園が良いかと探していた頃のことです。
ある幼稚園の説明会に当時3歳の娘と1歳の息子を連れて行きました。
好奇心旺盛でじっとしていられないタイプの二人は、私のそばから離れてすぐに何処かへ行ってしまうので、私は娘を連れ戻し、今度は息子を追いかける。
「すみませんすみません」と頭を下げながら一人バタバタと走り回っていました。
ママの横にじっと座っているあの子、
ママと手を繋いでその場にいられるあの子、
「他の子はこんなにちゃんとしてるのに、なんでうちの子たちだけじっとできないんだろう。」
と、切なくなったことをよく覚えています。
こんなことはこの日だけではなく、私はどこに行っても
「お母さん、大変ですね」という目で見られることが多かったし、
年に一度しか会わない田舎の母にも「躾がなってない」と言われていました。
息子の1歳半検診の時になぜかテンションマックスで走り回る娘を見た保健師さんに
「娘さんは多動症ですか?心配でしたら一度相談にいらして下さいね。」
と言われたこともありました。
出産して上の子が幼稚園に入るまでは私も仕事から離れていて、一日中子供たちと向き合う毎日。
実家が地方なので親きょうだいに「ちょっとごめん!」と子守をお願いすることもできない、まさにワンオペ育児でした。
「せっかく説明会に来たのに話なんて全く聞けなかった。一体なんのために来たんだか…」
と肩を落としながら幼稚園を出ようとしたその時、園長先生が声をかけてくれました。
「お子さんたち、元気がいいですね。目がキラキラしていて子供らしくて、本当に素晴らしいお子さんです。お母さんが愛情を持って育てていらっしゃるからですね。」と。
帰り道、涙がポロポロと溢れてきました。
あの時の園長先生の言葉にどれほど救われたことか。
一昔前までは、おじいちゃんおばあちゃん、ご近所さんに見守られ、頼りながら子育てをするのが一般的でした。
今は核家族で共働き夫婦がほとんどなので、とても狭い視野で育児をしている人が多いと思います。
私もそうでした。
精神的にも体力的にも余裕がなくなり、知らず知らずのうちに追い込まれてしまう。
児童虐待のニュースを見聞きする度に、そのお子さんを不憫に思うと同時に、虐待をしてしまった親のことを考えてしまうのです。
子育てをしてきて思うのは、虐待かその手前かなんて本当に紙一重。
グラスを落としそうになって「おっと!」と持ち直すか、ガシャンと割れてしまうか。
私だってこの映画の母親のように、つま先に引かれたラインを一歩踏み越えてしまっていたかもしれない。
そんな一瞬はこれまでいくらでもあったのですから。
子育て真っ只中のママさんたちは映画を観に行く余裕なんてないかもしれない。
でももし、お子さんたちが幼稚園や学校に行っている間とか、
たまにはおじいちゃんおばあちゃんに預けてとか、
それが可能ならば、是非この映画を観に行って頂きたいなと思います。
一人で抱え込んでいたり、追い詰められていたり、いっぱいいっぱいになっているのなら、
少しでも息を吐き、誰かに頼る方法を考えてほしい。
そして何より、世の男性たちにも観てほしい映画です。
この映画で象徴的なのは、育児における男性の不在。
もちろん、シングルファザーの方、育児に積極的な男性が沢山いらっしゃることも重々承知しています。
でも、一般的に女性のほうが家事育児の負担が大きいのも事実。
取り返しのつかないことにならないように、
誰もが健やかに暮らしていくために、
きっとできることがあると思うのです。
私もこの映画のように、
かつての園長先生のように、
誰かの心をふっと軽くしてあげられるような、
そんな人になりたいと思います。
とは言え私もまだまだ子育ての最中。
ドタバタ、ギャーギャーした時期は過ぎたとしても、
子どもの年齢によってこれからも色んな悩みが出てくるのでしょう。
見るべきもの、向き合うべきことから逃げずに、
どんな時も精一杯の愛情でしっかりと彼らを抱きしめながら、
日々を大切に過ごしていきたい。
改めて、そう思わせてくれる作品でした。
子育ては辛いことも大変なことも沢山あるけど、
その何百倍もの幸せがあります。
この映画に出てくる母親たちは、この3人だけでなくみんな一生懸命。
それがまた胸に迫りました。
この映画を必要としている人のところに
ちゃんと届きますように。
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よろしければ覗いてみて下さい。