県立広島大学コミュニケーション障害学コースの紹介
私が所属するこのコースではコミュニケーション障害のある“人”を支援する「言語聴覚士」(ST:スピーチセラピスト)を育成しています.
言語聴覚士養成校の中で,学科名にコミュニケーションがつくのは国内では本学だけだと思います.
そこには,ことばやきこえの「症状」のみならず,こうした症状のある「人」の生活,つまりコミュニケーションに視点をおくSTを育てたいというコースの理念が表れています.
対象児・者を共感的に理解して,その人にあった支援方法を考えることは容易ではありませんが,この理念を胸に学生たちは日々努力しています.
生活する上で欠くことができない,ことばときこえ,食べること(摂食嚥下)に障害のある人を理解し支える専門職をめざして,医学,心理学,言語学,音響・音声学,福祉学などの幅広い学修に加え,手話,要約筆記,ボランティアなどのサークル活動にも積極的に取り組んでいます.
創設以来29年がたち(2024年度),すでに700名以上の卒業生が臨床職,教育研究職として国内外で活躍しています.
この卒業生たちも学外実習,就職などさまざまな形で,在学生を支援してくれています.
コースの特色
○ 国公立のST養成課程は全国に2つあり,高校卒業後すぐに入学できるのが本コースです.学生の出身地は西日本が多いですが,全国から集まっています.(もう一つの養成課程は,国立障害者リハビリテーションセンター学院(埼玉県所沢市).4年制大学卒業後2年の課程)
○充実した教育内容
・教員数が多く,先生たちは相当熱心です.
意欲ある学生さんの期待は決して裏切らず,勉強が難しいと思っている学生もすぐ見つけ出します!
卒業研究が全学必修であるのも特色で,教員数が多いことからテーマも幅広い範囲から選ぶことができます(教員一人に2〜3名の学生).
教員数15名:そのうちST教員12名(本学卒業生3名を含む).
心理学,音声聴覚情報処理,耳鼻咽喉科学の教員各1名.
4年間では物足りない人や,働きながら専門分野を深めたい人には大学院(博士前期・後期課程)も用意されています.
大学院の授業は18時20分からで,仕事をしながら通学できます.
・附属診療センターがあり,ST教員は全員臨床活動も続けています.
学内に居ながらにして,授業(講義・演習)を担当した先生の実際の臨床場面を見学することができるので,基礎学修を実践に結びつけやすいです.
学内実習→→→学外実習と段階的な実習を行います.
最初の臨床実習も,この附属診療センターでグループを組んで行います.
教員一人が2名程度の学生を指導します.
その上で学外実習(3年で8週間,4年で4週間)に臨みます.
・模擬患者コミュニケーション演習
3年次の学内実習に先立ち,2年次の終わりに,岡山SP研究会のご協力で模擬患者さんとの医療コミュニケーションの演習を行います.
模擬患者さんは医学部,薬学部のOSCE(客観的臨床能力試験)の患者役を担うことが多いですが,本コースの場合,試験ではないので成績評価は一切せず,3年次からの臨床実習で実際の患者さんに会う前の準備として行います.
研修を積んだ模擬患者さん(SP: Simulated Patient)の迫真の演技と,丁寧なフィードバックにより,対人援助職としての自己の長所と今後の課題を考えるチャンスです.
・地域の言語障害当事者の会への参加
開学当初に,本学教員が地域の方々と協働して設立した失語症友の会との交流会(1年次)や,当事者の会の定期イベントの企画進行に学生が参画させていただいています(4年次).
・チーム医療教育
1学部1学科5コース制に改組し(コミュニケーション障害学,看護学,理学療法学,作業療法学,人間福祉学),専攻間の垣根がさらに低くなりました.同じキャンパスで,1年次からチーム医療の学修を始めます.
○高い就職率,国家試験合格率
卒業後は,ほぼ全員が言語聴覚士として就職します.
求人は成人の病院(リハビリテーション科,耳鼻咽喉科,歯科,形成外科),高齢者福祉施設からが多いですが,もちろん小児の専門機関に就職する人もいます.
国家資格を活かして補聴器会社に就職する人もいます.
修士・博士課程に進学する人もいます.
就職活動は低学年から学科教員が定期的面談をしますし,
キャリアセンターのアドバイザーさんが履歴書の書き方,
面接の受け方を指導してくださいます.
国家試験の過去6年の合格率は次のとおりです.
2017年度 100%
2018年度 100%
2019年度 100%
2020年度 88%
2021年度 97%
2022年度 100%
どこにある?
JR/新幹線 三原駅からバスで10分(2.7km)のところにあります.
学生の多くは自転車を利用しています.
古治山という山を削った瀬戸内の見晴らしのよいところに建っています.
三原市は人口約9万人の町で,落ち着いて学修できます.
入学試験
<定員29名>
学校推薦(県内7/全国2) 小論文,個別面接
社会人2 小論文,個別面接
一般選抜(前期15・後期3) 共通テスト,個別面接
授業料
年額 535,800円.
県立のため,入学料は県内/県外出身者で異なります.
このほかに,教科書代,学外実習時の交通費,滞在費(共済会積立)等が必要になります.
本コースはこれからも学生さんの意欲に応える学修プログラムと,安心して学べる環境を提供していきます.ぜひ進路選択のひとつにしてください.