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CPIB ー コミュニケーション参加の患者報告アウトカム尺度(1)

CPIB コミュニケーションへの参加に関する質問項目バンク」(米国のベイラー博士らが開発)は,コミュニケーション障害のある人に直接,ふだんのコミュニケーションへの参加状況について聞くための質問紙です.


CPIBと患者報告アウトカム(PRO)

CPIB は医療分野で普及してきたPRO(Patient-Reported Outcome:医療の利用者自身が,治療の効果=アウトカムを判定する)尺度の1つ です.

PROは,医療・支援が効果的であったかどうかは,最終的に患者さん自身が決めることという考え方に基づくものです.
痛みの程度がその人にしか分からないように,コミュニケーション障害についても,それを経験している当事者にしか分からないことが多いと思います.

そのため,言語聴覚/コミュニケーション障害,嚥下障害の分野では,当事者や家族に直接,現状を聞く質問票等は目新しいものではなく,米国の調査では(Yorkston, 2015),2015年の時点で,86の測定法が公表されているといいます.

たとえば, Voice Handicap Index(VHI)などは日本語にも翻訳され,よく知られています.VHIは,声の出しにくさ,声のかすれのある人を対象としたもので,このようにPROの質問紙は特定の言語症状ごとに開発されたものが多いのですが,CPIBはICF国際生活機能分類でいう「参加」に特化した質問項目集です.地域で暮らす(community-dwelling)コミュニケーション障害のある成人全般を対象としています.

CPIB短縮フォーム日本語版(レビュー作業版)

CPIBは,NIH 米国国立衛生研究所が PROの科学的な発展を目的に推進するPROMISプロジェクト(Patient-Reported Outcome Measurement Information Systems)のガイドラインに準拠して開発されました.
ベイラーらは,まず94の質問項目候補を用意し,701名のコミュニケーション障害のある人から収集したデータから,統計学的手法(項目反応理論)を用いて,46の質問項目を選定しました.さらに臨床用に,次の10項目から成る短縮フォームを発表しています.

1.今のあなたの状態は,知っている人と話すことの妨げになりますか.
2.今のあなたの状態は,急いで何かを言う必要があるときに妨げになりますか.
3.今のあなたの状態は,知らない人と話すことの妨げになりますか.
4.今のあなたの状態は,用事や病院の予約などで近所に出かけて,そこで話すことの妨げになりますか. 
5.今のあなたの状態は,会話中に質問をするときに妨げになりますか.
6.今のあなたの状態は,少人数の集まりで話すことの妨げになりますか.
7.今のあなたの状態は,知っている人と,本,映画,テレビ番組,スポーツイベントなどについて長い時間,会話することの妨げになりますか.
8.今のあなたの状態は,誰かに何かを詳しく説明することの妨げになりますか.
9.今のあなたの状態は,ペースの速い会話に入って発言する機会を得ることの妨げになりますか.
10.今のあなたの状態は,別の視点で物事をみるように,友達や家族を説得しようとすることの妨げになりますか.

以上の10項目について,対象者に,4段階で自己評定してもらい,30点満点で高い点ほど,コミュニケーション参加の妨げが少ないと解釈されます.

全く妨げにならない(3点)
少し妨げになる  (2点)
かなり妨げになる (1点)
非常に妨げになる (0点)

興味のある方は,最終版ではありませんが,原著者の了承が得られた短縮フォーム日本語版の質問用紙をご利用ください.      (つづく)

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CPIBの著者の一人であるヨークストン博士による解説動画(ASHA)を下記から視聴できます. 
https://www.youtube.com/watch?v=BrBoB22HLXs


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