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「歌うように弾く」ってどう指導するの?

たまに生徒さんから聞かれる
「歌うように弾く」
ってどうやるんですか?


実は私も「歌うように弾いて!」
先生からよく言われてました。

でも
よく分からなかったんですよね。

そもそも頭の中なんて
考えたこともない…

おそらくできてなかったんでしょうね…
先生からは
強弱記号に印をつけられました。

そのとき
「あ…そうか…音の大きさを変えるんだ…」
と理解しました。

でも当時を、振り返ると
それとも少し違ってましたね。

そもそも「歌うように弾く」ってどういうことか?


振り返ると、
ソルフェージュ的に「ソソミ〜」などは歌ってる。

でも音楽を歌ってなかったな…
そもそも「音楽を感じる」
わかってなかった。
(そんなんでよく弾いてたもんだ…)

この場合の「歌う」は、
・音の高低・抑揚を自然に感じる
・フレーズの流れを意識する

ということ。

ソルフェージュ的な「正確な音程」は、
ここでは重要ではない。

どうやって指導するか?

そんな経験から、
表現が乏しい生徒さんに指導するときは、

『歌うように弾いて!』は通じないもの。
と思って指導する。

手順は

1、ハミングで一緒に歌う
2、感情の確認
3、テクニック指導

の順。


1、ハミングで歌う

まずは一緒に(または1人で)ハミングで歌う。

ハミングだから音名は言えなくていいし、音程も合ってなくていい。(上がり下がりくらいは歌えるようにはしておくのがおすすめ)

するとほぼ全員歌える。

2、感情の確認

つぎに
「どこに気持ちを入れたくなるか?」を確認。

するとだいたい、
もう一度歌ったりして自分の感情と向き合う。

分からなかったら、
いくつかの歌い方を歌って見せる。

3、テクニック指導
そして、歌い方が決まったら
その歌い方を表現する弾き方(テクニック)を指導する。
のながれ。

ブルグミュラー25 「3、牧歌」:冒頭2小節だったら


例えばブルグミュラー25 「3、牧歌」の場合、
最初の2小節は右手だけのメロディーです。

もうこれだけで、
のどかな風景を思い出しますね。

そんなイメージをしながら、
表現としてはこのメロディーの山場をどこにするか?
を考えます。

この場合の定番の山場は
[一番高いソ]です。

で、そのソを山場にしたとして、
[ソ]を中心にどのように抑揚(強弱)をつけるか?
を決める。

《アイデア:1》
最初の音から少しずつ[高いソ]に向かって盛り上げて、その後、収束する。

長く息を吐く感じになるので
・太陽がゆっくりと上がり、穏やかな朝を迎える
・ステージの幕が少しずつ開く
・風がサラッと吹き、牧草地帯の草花が揺れてる

そんなイメージでしょうか…

《アイデア:2》
クレシェンドの始まりを遅くする。

すると急な変化になるので、
・ちょっとワクワク感がする
・ステージ幕も少し早めに上がる
・風も少しうねりがある

そんな感じでしょうか。

《アイデア:3》
ディミヌエンドのスタートを遅くする

・風もぐるっと一周する感じ
・木々も揺れてる感じ

など少し強めのエネルギーがあるように感じます。

《アイデア:4》
いっそディミヌエンドをなくす

大きなエネルギーのまま進んでるようにも感じます。

《アイデア:5》
2段階でクレシェンドする

とさまざま。


着せ替え人形を楽しむように、
その時の気分によって弾き方を変えて
楽しんで欲しいです。

ちなみに原典版では、
スラーがこれとは違うので
また違ったアイデアが出るかもしれません。

そんなこんなで、
いろいろな歌い方を紹介すると
「これがいいかも…」とだいたい決まる。

《3、テクニック指導》

ここでの工程は

3-01、歌を頼りに自然に弾けるか?を確認
3-02、弾けない場合
  3-02-ⅰ、生徒さんの手や腕の上でお手本を弾く
  3-02-ⅱ、生徒さんの場合の身体の使い方を模索
  3-02-ⅲ、定着させるために練習してきてもらう

の順。

《3-01、歌を頼りに自然に弾けるか?を確認》
歌い方が決まったら
私がお手本を弾いて聴いてもらう。

そして、一旦ここで
生徒さんにも弾いてもらう。

・「歌」を頼りに弾けるか?
・テクニック指導なくても弾けるか?

をためすために。

弾けてれば、
いいテクニックを使ってる
ので、
あとは感情の思うように弾くだけ。


《3-02、弾けない場合》
  《3-02-ⅰ、生徒さんの手や腕の上でお手本を弾く》

でも
上手く音に表現できてない場合は、
何かのテクニックが使えてない。


そこは教える必要がある。

・どこの関節をメインにしならせるか?
・指先にどれくらいの圧をかけてるか?

などを、

鍵盤や生徒さんの手や腕の上で弾く。

特に「軽い圧」は
「え?!こんなに軽いの?」
と必ず驚かれる。

 《3-02-ⅱ、生徒さんの場合の身体の使い方を模索》

それを生徒さんの場合だったらどうなるか?
を一緒に探す。

・腕の振り方
・関節の使い方
・指への重さ確認
など。
ときには座り方まで

すると、
「コレ!」という弾き方が見つかる。


 《3-02-ⅲ、定着させるために練習してきてもらう》

ここまで来れば
あとは定着のための練習に入る。

その説明も難しいけど
大事なのは、
「脳内で音楽を歌ってるか」。

よくあるのが
・腕はこうして…
・手はあぁして…
と身体の使い方に意識が行きがち。

テクニック練習なので
もちろんそれは大事なんだけど、

そもそも音楽が歌えてないと
結局、「歌うように弾いて!」に戻る…

なので
「音楽を歌ってるか?」が大事。



このように
テクニックの定着には
練習が必要だけど、

頭の中で音楽があるか?ないか?は
楽しみ方が全然ちがう。

なので、
生徒さんの音楽性を引き出したり、
紹介する指導をする。

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