立体的な演奏って、なに?
「立体的な演奏」。
他にも「奥行きのある演奏」「遠近感のある演奏」などを、たまに見聞きします。
移籍してきた生徒さんからも、「『立体的な演奏にして!』って言われるんですけどどうやるんですか?」と質問をいただくこともありました。
私自身は「立体的な演奏して!」と言われたことがなく、それを聞いた時、たしかに「何それ?」って感じでした。
なんとなく分かるような…分からないような…
長くピアノを弾いててもそんな感じなので、生徒さんにとっては分かりにくい言葉なのかな…と思います。
そこで「立体的な演奏」について考えてみました。
立体的な演奏って?
色々な方のお話をまとめると、音のバランスやニュアンスを工夫して表現しましょう!のようです。
主な意識ポイントは
・メロディーの抑揚
・左右の音量バランス
・柔らかい音と硬い音などのタッチの使い分け
でもこれは慣れてないと難しい・・・
だって、
・いろんな捉え方(解釈)がある。
・何を聴かせたいか?の感性も色々。
・どんな身体の使い方(テクニック)をするのか?も人それぞれ。
なので易しい曲で、知識とテクニック・聴く力を養うのがおすすめです。
ブルグミュラー25 「3、牧歌」①:3〜8小節目
例えば、ブルグミュラーの「3、牧歌」。
3小節目から左手の和音が入り、音の重なりを感じますね。
先ほどの冒頭メロディーと同じく、どんな抑揚をつけるか?を考えつつ、左右の音量バランスをどうするか?を考えます。
《アイデア:1》
左右の音量差を、極端にするのか?ほんの少しにするのか?
で印象は変わります。(色が濃いのが大きな音、薄くなるにつれて小さな音)
《アイデア:2》
左手は単に「弱く」ではなく、1拍目に気持ちを入れて弾くと
・拍子感のある演奏
・[右レ]とのハモリを感じた演奏
になる。
《アイデア:3》
左手は同じ音が続くので、少し盛り上がる感じで弾くと
左右でアンサンブルしてる感じになります。
なので、左手は単に「和音」「伴奏」ではなく、ちゃんと音楽に参加すると、1人アンサンブルが楽しめます。
ブルグミュラー25 「3、牧歌」②:11〜14小節目
ここは音程の差が大きいので、何かが開けた感じがします。
また左手重音を伸ばしたままなので全体を支える音となり、音の重なり・響きの厚みをより一層感じます。
個人的には、ぜひこの音の重なり・響きの厚みを感じながら弾いて欲しい!
感じるには、低音を聴きながら他のメロディーも聴いて欲しい!!!
なんだけど、ここを立体的に弾くには、いきなりは難しいかも・・・
《理論》
ここを立体的な演奏にするには、まずここの音の成り立ちを知る必要がある。
ここは3つの旋律が横に流れてる。(正確には4つ)
その存在を認識すること。
《音はどんな音?》
すると紫部分は4つの音が鳴ってるので、音の重なり・響き厚みがある。
なので、1拍目の[3音のハモリ]を聴いて、次の[音の重なり]を聴くと、音に包まれる感じになる。それがめちゃくちゃ気分がいい!!!
そして音量の優先順位は大きい方から
①高音
②低音
③中音
です。
《アイデア:1》
なので、定番の弾き方はこうなる。(色が濃いのが大きな音、薄くなるにつれて小さな音)
《アイデア:2》
でも、1拍目の左右のハモリを感じながら弾くと、左右の音量バランスはほぼ同じか、左が少し小さい感じになる。
《アイデア:3》
音量バランスではなく、左右でニュアンスを変えるのも面白い。
右は少し硬めでクリアな音を出すと、大きな音にしなくても音は通るようになる。
そして左手は柔らかい音にするといいバランスになる。
《アイデア:4》
4拍目[左レ]。
これは[右ド]にあえて少しだけぶつける感じで弾くと、ドミナントの緊張感が増し、次の小節で大きな安心感を得られる。
もちろんわざわざぶつけず
小さく弾いてさりげない緊張でもいいと思う。
《アイデア:5》
ちなみにここは同じメロディーが2回出てくる。
なので、1回目と2回目で弾き方を変えるのも面白い。
というように、ちょっと考えただけでもこんなにある。
立体的な演奏って自由!!
ってつらつら書いたけど、今まで「表現」とか、「表現のためのテクニック」を考えたことがない人にとっては難しいよな…とも思う。
だって「立体的な演奏」には、知識・テクニック・聴く力が必要になるから。
なので、易しい曲の時から手順を踏んで表現力を養う必要がある。
でも生徒さんの中に
・知識
・テクニック
・アイデア
がたまって使いこなせるとめちゃくちゃ楽しくなる!!
これは多くの生徒さんがおっしゃる。
だって「音楽してる!」って感じがするから。
「あの音を出そうかな?」
「もうちょっと出そうかな?」
「ん?出しすぎか?」
「やっぱり、こっちの音を出そうかな?」
料理→味付けの部分。
お化粧→チークをどう入れるか。
プラモデル→塗装や仕上げ?
土台ができてやっと自由に表現できる段階。
「練習」というより「遊び」。
とっても楽しい。
もちろん、生徒さんはプロではないので色々と限界はあるし、コンクールで本気で賞を獲るなら審査員の好みで弾く必要がある。
でも知識・テクニックがあると、色々遊べてピアノライフはとっても豊かな時間になる。
そしてあわよくば
・曲の難易度
・指が速く動く
・ミスタッチした / してない
・上手 / 下手
で聴くのではなく、
「その味付けいいね!」
「そのチークいいね!」みたいに、
「あ、そういう弾き方もあるのね」
「その弾き方いいね!私もやってみよう!」
など「表現についての会話」ができるといいなぁ。なんて思います。