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尾崎将也の<全部入り>脚本講座[4-2] 自然なセリフを書くためのエクササイズ
(重複度0)
※今回は無料です。
尾崎将也の<全部入り>脚本講座4「セリフについて」(前編)で、「セリフは話し言葉としての自然さが必要」と書きました。初心者の中にはそれが苦手な人がけっこういます。前回も書きましたが、文字で書くから書き言葉に近くなってしまうということだと思います。そこから抜け出すためには、自然な喋り言葉を書く練習が必要でしょう。そこでちゃんと人が喋っているように見えるセリフ、キャラクターが感じられるセリフを書けるようになるためのエクササイズを考えました。
<エクササイズ・その1>
まずキャラクターや人物設定を考慮せずに短いやりとりを何か書きます。内容は何でもいいです。練習なので気軽に考えてください。
[例1]
A「今度の休み、どこかに旅行に行きませんか」
B「いいですね。どこに行きましょうか」
A「箱根はどうですか」
B「はい、そうしましょう」
これだけではこの二人が男か女か、どんな関係性かもわかりません。(こういうセリフを書いてしまう初心者は多いです)
次にこれを、思いつくままに色々な人物、色々な設定に置き換えて書き直してみます。
例えば付き合っている若いカップルの場合。
若い女「ねえねえ、今度の休み、どっか旅行行かない?」
若い男「お、いいねえ。どこ行く?」
若い女「箱根とかどう?」
若い男「おう、そうしよう」
付き合いが長いカップルならデートするのはいつものことなので、同性の友達同士とほとんど同じような会話になると思います。
これが付き合ってまだ間がないカップルだとどうなるか。
若い男「あのさ……今度の休み、どっか……旅行行かない?」
若い女「えっ……う、うん……(ちょっと恥ずかしそうに)いいね……」
若い男「え、マジ?」
若い女「……どこ、行く?」
若い男「箱根、とか……」
若い女「う、うん……いいよ」
二人で初めて旅行に行くので、誘うのにドキドキしたりためらいがあったりするニュアンスが加わります。
これが結婚して長い夫婦だとどなるでしょうか。
妻「ねえ、今度の休み、どっか旅行行かない?」
夫「え、なんで」
妻「なんでって……いいよ、嫌なら」
夫「行かないとは言ってないよ。たまにいいか。どこ行く?」
妻「箱根とか」
夫「付き合ってた頃行ったなあ……久しぶりに行くか」
[例2]
A「明日の会議、中止になったから」
B「はい、わかりました」
これを同僚の会話にすると、
社員A「明日の会議、中止だってさ」
社員B「えー、早く言ってよ。せっかく資料作ったのに」
社員A「知るかよ。文句なら課長に言えよ」
これは気軽に話せる同僚の場合です。
上司と部下だとどうなるか。
上司「明日の会議、中止になったから」
部下「え……はあ、わかりました」
上司「じゃ、よろしく」
と行く。
部下「(近くの同僚にボソッと)早く言えよな」
上司に文句を言えないので、近くの同僚に愚痴を言うというパターンです。
別に正解があるわけではありません。色々なキャクター、関係性であれこれと考えてみることに意味があるのです。そしてできれば声に出して読んでみて、自然な喋り言葉になっているかどうかチェックしてみてください。
<エクササイズ・その2>
喫茶店などで、近くの人が話している会話をよく聞きます。(盗み聞きですが、自然に聞こえるのを聞くだけなら問題ないでしょう)
後でそれを思い出しながら文字にしてみます。
セリフは自然な喋り言葉であるべき、と言っても、現実に人が喋っている言葉は、繰り返しが多かったり、言いよどんだり、どもったり、「えーと」「あの」「何ていうか」など合いの手が多かったりします。それをあえて文字にすることで「ああ、人はこんなふうに喋ってるんだ」と意識するのが目的です。
当然、話すのがどんな人か、どんな関係性で話しているかということで喋り方は違って来ます。そのへんにも注目します。
<エクササイズ・その3>
映画やテレビドラマを見て、自分が面白いと思った会話を選んで、そのセリフを書き起こします。
書き起こすためには繰り返し見ることが必要なので、録画やDVDなど繰り返し見られるものでやります。ドラマ全体をやる必要はありません。自分が面白いと思った会話をピックアップしてやってみてください。まずざっとメモ書きして、後で清書するのがいいでしょう。パソコン入力よりは紙に手書きする方が練習になる気がします。
これらのエクササイズを繰り返すと、書き言葉から離れて、自然な喋り言葉とかキャラクターのあるセリフに近づいて行けると思います。いいセリフ、面白いセリフを書くのはさらに次の段階になります。それは次の章でやります。