【風紋 18】振動を記録
起床15分で文章を書き始める。昨日は夜まで仕事、今日はこのあと7時から仕事、今日の夜は予定がある。自分の1日の隙間に言葉を流し込んでいく。水量は多くなくても、そこに水が流れたことで局所的な変化は生まれる。なんでもないことに言葉を付与し、ここに確かにあったという事実を世界に置いておくのだ。蝶の羽ばたきが竜巻起こすように、風が吹けば桶屋が儲かるように。半径1mm圏内の胎動が、世界のサプライズを作っている。
つらつらと書き連ねているが、まだ何もしていない。あることないことを言葉の組み合わせを変えながら書けるのが、文章の好きなところだ。小さい頃はレゴブロックが好きだったように回想できる。でもこれも、辻褄を合わせるためのつぎはぎでハリボテな記憶の可能性があるのも面白い。脳みそも記憶という媒体を使ったレゴブロックを楽しんでいやがる。最近読んだ『君が手にするはずだった黄金について』という小説にも同じような話が描かれていた。震災の日については覚えているけど、震災の前日って何をしていたんだっけ?という話。これから迎える今日と同じように、毎日平凡ながらも真新しい1日を過ごしてきているはずなのに、どこかを境にぼんやりとした"ある時期"に平らにされてしまう。震災のようなよっぽどショッキングなことがない限り、どんな1日でも平らになってしまうのにほとんど抗えないのはなんだか寂しい気がするなぁ。と、小説を読みながら感じた。この「寂しい気がするなぁ」という感覚も、まっ平になっていってしまう。ちゃんと凸凹で歪
で形があるんだということを未来でも声を上げ続けることができるように、人は何かに残し続ける。日記は心の振動の観察記録だ。
そろそろ家を出る時間だ。5月も終わりに差し掛かっているというのに、朝晩のほんのりとした冷えに体を震わせている。白湯がうまい。未来に5月末の信濃町は朝晩ちょっと冷え込むよ〜という実用的な情報を残せただけでも良しとしよう。いってきます。