ヨガは運動なのか問題

結論から申し上げますとヨガは確かに運動の側面もありますが、正解とは言い切れません。ヨガは「心の動きを収めること」であり、外面に比べて内面の充実をより重視しています。

何故なら、ヨガ哲学書である「ヨーガスートラ」の冒頭で上記の文章が簡潔に書かれているから、の一言に尽きます。さらに、心をケアしていかないと人生のあらゆる場面で苦悩するよと説いていることからも、ヨガが身体技法よりも精神統一に注目していることが分かります。

ところがテレビや本などで見かける「ヨガ」は、多くが身体を動かす方法について紹介されている印象を受けます。スポーツジムやヨガスタジオでも数多くのヨガプログラムが提案されていますが、いずれも身体を動かすことが主になっています。

このような流れはなぜ生まれたのでしょうか。

産業革命はヨガを合理的にした

19世紀ヨーロッパの動向にそのルーツを垣間見ることができます。当時のヨーロッパは産業革命をはじめ、近代科学、西洋医学などが発達した、まさに転換期でした。この流れはヨガの本場インドにおいても同様で、近代化が進められてきました。ヨガを学術的・科学的に研究する機関が誕生し、ヨガが健康維持の運動として合理的だと証明されたことがきっかけで、現在の継続的なヨガブームに繋がっているのです。

ヨガの効果的な実践方法は8つ

事実、哲学書にはアシュタンガヨーガと呼ばれる、ヨガをどのように実践すれば良いのかを8つの方法で書かれています。その内の1つが「アーサナ」、つまり、ヨガと聞いて多くの人が思い浮かべるポーズをしましょうねと言っているのです。

したがって冒頭に戻りますが、ヨガが運動であるというのは間違いではないのです。しかし身体を動かすのは、哲学書で勧めている8つの方法の1つに過ぎないということなのです。では、残りの7つは何だ?!ということで哲学書から引用します。

その①ヤマ(気を付けるべきこと)

その②ニヤマ(するべきこと)

その③アーサナ(姿勢)

その④プラーナーヤーマ(呼吸法)

その⑤プラッティヤハーラ(感覚を収める)

その⑥ダーラナー(集中)

その⑦ディヤーナ(瞑想)

その⑧サマーディ(瞑想状態)

この中でも注目したいのはその①、その②のヨガ実践法です。例えばその①の「気を付けるべきこと」には

暴力するな・嘘をつくな・盗むな・規律正しく生活しろ・抱え込むな

また、その②の「するべきこと」には

身体と心を清潔に保て・今に満足しろ・自分を律しろ・自分の本質を知れ・自然の摂理を理解しろ

と記載されています。

日常生活1つひとつの行動をあなどるな

このように、ヨガを実践するということはマットの上だけの運動に留まらず、日常生活の動作や心持ちにも細心の注意を払いなさいと説いているのです。8つのルールの一番はじめに、日常生活に対する望ましい姿勢が書かれているのは単なる偶然ではなく、この順番でヨガを実践しなさいと導いているのではないでしょうか。

だとすれば、身体を動かすヨガ・瞑想・マインドフルネスと言った流行りの方法はもちろんですが、気をつけるべきこと、するべきことに着目するのもまたヨガの実践となります。

身近にいたヨガの実践者

ヨガの目的は「心の動きを収めること」です。そのための手段の1つが身体を動かすことに過ぎず、日ごろの生活習慣を改めることも、ヨガを実践する上で有意義な手段となります。昨今、予防医療・予防介護といった言葉もよく耳にするようになりましたが、予防もヨガと同様、規則正しい生活・運動・思考が大切だと説いています。

私が幼いころから母親にずっと言われ続けている言葉があります。

「よく寝て・よく食べて・よく遊べ」

また彼女はこうも続けます。「大学を出た賢い人ほど、何故か身体や心を壊すね。自分の取り扱いは勉強してこなかったんだろうね、身体がすべての資本なのにね」

日常生活を怠るなと言い続け、行動で示す母の姿は、まさにヨガの実践者そのもの!こんなに身近にいたのねと感動しました。母よ、ありがとう!

ヨガを「運動以外」で発信していきたい

ヨガが市民権を得た今だからこそ、運動の側面以外でヨガを発信していく意味があると思っています。次回からは私個人が実践している「運動以外」のヨガについて発信していきます。ここまで読んで下さり本当にありがとうございました!