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「ダンテと桜の会2019」を開催しました。


「美術史から見るダンテ」のお話

4月2日、美術史家で文星芸術大学副学長の田中久美子さんをお招きして、「美術史から見るダンテ」のお話をしていただきました。
ちょうどアトリエの横の桜並木が美しかったのでこの時期にしました。田中久美子先生は、東京藝術大学美術学部美術学科卒業、オレゴン州立大学美術史学科修士課程修了、東京藝術大学大学院美術研究科芸術学専攻修士課程修了、同・博士課程後期を単位取得満期退学。跡見学園女子大学で非常勤講師も務める。専門はフランス中世美術史。著書に『フォンテーヌブローの饗宴』(ありな書房)、『レオナルド・ダ・ヴィンチの世界』(共著・東京堂出版)など。最近では、「#名画で学ぶ主婦業」(宝島社刊)が大評判。

たくさんの名画の画像をおみせくださり、細かくダンテ「神曲」の世界をご説明くださった。「神曲」をテーマに描いたボッティチェルリ、ドラクロワ、ミケリーノ、ロセッッティ、ドレ、ウィリアム・ブレイク、ダリの絵画の数々.....。ダンテが影響を受けたであろう中世の時祈書の綺麗な写本の素晴らしさ。
 西洋文化を理解するにはギリシャ・ローマ神話とキリスト教の伝統の二本柱が重要になるという意味がよくわかった。そして、以外にも地獄篇の絵やベアトリーチェはたくさんあるのに、煉獄篇、天国篇の絵が少ないこと。

地獄と違って煉獄の島では、星と海が美しく輝いている。
いま描いている煉獄篇は、地獄と天国のあいだにあり「現世に一番近いイメージの場所だ」。地獄を脱したダンテの額に、天使がその剣で7つのPの字を刻んだ。それは、7つの大罪の意味である。金色の鷹にさらわれる夢を見たり、大きな石を背をって歩いている傲慢の罪を背をった人たちや、やたら走り回る人たちに出会う。現世で怠けていた人はこの場所で走りつづけなければならないようだ。他にも貪欲や憤怒、淫欲の罪を背負った人々に出会う。ダンテは、切り立つ崖や山を登りながら苦しむことでその罪を一つ一つ浄化させていき、最後には天国前地に赴く。読めば読むほど面白いこの煉獄篇を青一色で描きつづけたい。岩絵の具の群青は、果てしなく美しいから。

あのエクスタシーはなんだ?
この一年半は、煉獄篇の超大作を完成させるために毎日心を清めるような煉獄に多いを馳せる日々だが、実はわたしがどうしても知りたいのは西洋人と日本人の天国感の違いだ。サンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会にあるベルニーニの彫刻作品「聖テレジアの法悦」や、カラバッッジョの「法悦のマグダラのマリア」の画像を見ていると、強烈なエクスタシーが彼女達を襲っている。どうやらキリストを信じている人間しか行き着くことができない場所があるのかもしれない。キリストを信じている人間しか行き着くことができないとダンテも言っている天国。
日本人のイメージをする天国は、もっとのたりのたりとした春の陽射し溢れるやわらかな至福だろう。このちがいはなんだろう?
わたしがはじめて個展をする時「何を描きたいの?」と尋ねられ思わす《愉悦》と答えてしまったことを思い出す。薔薇をモチーフに選んだのもそのゆえんである。煉獄篇を描き終わったつぎに辿り着く場所が、今から楽しみである。


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