今の社会で一番トクな生き方
今の社会で一番トクな生き方はなにか?
それは、「子どもをあえて持たず、子育てにかかるであろう膨大な時間とお金を自分自身の楽しみだけのために使い、年老いてからは、他人が生み・育てた子どもに自分の面倒を見させること。」です。
そんなことが可能か?
そう、現在の社会保険制度のもとではこれが可能なのです。
年金、高齢者医療、介護といった社会保険制度は、自分が支払った社会保険料が高齢者になってから返ってくるのではありません。
自分が支払った社会保険料は、今の高齢者の給付に使われてしまいます。
そして、自分が高齢者になったときは、大きくなった今の子どもたちが納める社会保険料から給付を受けることになります。
このように、今の社会保険制度は世代間扶養を前提とするもの。
世代間扶養がが維持されるためには、現役世代が
親世代の面倒をみること。
(自分が高齢者になったときに面倒を見てくれる)子ども世代を生み・育てること。
の両方を行うことが必須です。
昔は、これを世帯ごとに行っていました。
そのため、親世代の面倒を見たとしても、子ども世代を生み・育てることに失敗すると、自分が高齢者になったときに誰からも面倒を見てもらえなくなるため、結婚して、たくさん子どもを産み・育て、自分の老後を確かなものとすることが重視されたのです。
しかし現代社会では違います。
親世代の面倒をみるということを世帯ごとに行うのではなく、社会保険制度を通じて社会全体で行うことになっています。
とすれば、自分自身で子ども世代を生み・育てなくても、親世代の面倒を社会全体でみるという現代の社会保険制度を通じて、他人が生み・育てた子どもに年老いた自分の面倒を見させることができるようになるのです。
子ども世代を生み・育てるためには、膨大な時間とお金を費やさなければなりません。
他人が生み・育てた子どもに自分の面倒を見させることができるのなら、自分自身はあえて子ども世代を生み・育てず、それにかかったはずの膨大な時間とお金を自分自身の楽しみのために使った方が賢いというものです。
以上から、現在の社会保険制度のもとでは、あえて子どもを持たない方がトクということになります。
現在の社会保険制度は共産主義と同じ
このような状況は、共産主義に似ています。
共産主義では、努力をして成果を挙げた者も、怠け者も給料は一緒という、結果の平等が重視されます(「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」(カール・マルクス))。
そこでは、努力したもののあげた成果に怠け者がただ乗りすることが可能であるため、努力して馬鹿をみるよりはただ乗りする側に回ろうと、皆が怠けはじめ、社会全体が貧しくなり、ご存じのとおり最終的には破綻してしました。
今の社会保険制度も同じです。
あえて子どもを生み・育てることを避け、時間やお金を自分の楽しみだけに使った者が、子どもを生み・育てるという努力をしたものの成果(成長し親世代の面倒を見てくれるようになった子ども世代)にただ乗りすることが可能となっています。
これでは、努力して馬鹿をみるよりはただ乗りする側に回り、トクをしてやろうと、皆が子どもを生み・育てることを避けはじめ、社会全体で少子化が進むことになります。
このままいけば、最終的には、少子化により社会保険制度のみならず、社会全体が破綻することになるでしょう。
もう破綻は防げない
このような事態を避けるのであれば、子どもを生み・育てるという努力をすべての人に強制すべきということになりそうです。
しかし、子どもを生み・育てるという営みは、男女が家庭を築き・・・といった、きわめてプライベートな側面を有し、国家が国民に強制するのにはふさわしくありません。
強制とまではいかなくても、子育てをしていない人から、子育てをする人に大規模な所得移転をすれは、子どもを生み・育てる人が馬鹿を見ないですむのかもしれませんが、少子化のスピードを考えれば、もう、間に合わないでしょう。
破綻の後の社会
社会保険制度が破綻したらどうなるのでしょうか。
今後。高齢者になる人が給付を受けようとおもっても、社会保険料を負担する子ども世代がいなければ給付は受けられません。
したがって、事実上、年金、高齢者医療、介護といった社会保険制度はなくなることになります(「もう制度を維持できません」と政府が認めるのは政治的に困難でしょうから、わずかな給付をするだけの、名目的なスカスカの制度としては残るかもしれませんが)。
そうすれば、一部の高所得者や資産家の高齢者は別としても、多くは野垂れ死にすることになります。そう、困っていても誰も助けてくれません。経済的に困窮しても耐えるほかなく、病気になっても十分な医療は受けられず、寝たきりになっても糞尿垂れ流しで放置されます。
ただ、子どもを生み・育て、子どもと良好な人間関係を維持できている一部の高齢者は別かもしれません。
子どもとしても、親が年老いて、困窮しているのを放っておけないでしょうから。
結局、最後には子どもを生み・育てる方がトクになる日が来るのでしょう。
社会保険制度ができる前の時代のように。